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克全

第117話一八三三年、「涙の旅」は絶対にやらせない

白人と対等に戦うためには、いや、敵と戦うには、まず内部を固めて分裂させられないようにしなければいけない。
「涙の旅」の被害者となったネイティブアメリカンのチェロキー族も、内部分裂させられたことが大きいと思う。
二万五千人以上のチェロキー族が一致団結して、完全武装で抵抗していれば、そう簡単に強制移住させられなかったと思う。
そこでふと思いついた。

「直ぐに軍師役を集めてくれ、余の案を検討してもらいたい」

俺は軍師役を集めて、チェロキー族が種族協同で所有している土地を買い取るか、もしくは間借りして完全武装の若党隊を駐屯させる事を考えた。
正直に言えば、極貧の清国人を送り込むので、棄兵になるかもしれない。
武器も負けて鹵獲されることを考えて、ドライゼ銃ではなく火縄銃になるだろう。
現地でゲベール銃やベイカー銃が購入できれば御の字だ。

「確かにそれができれば、敵地に城を築くようなものでございます。
成功すれば松前松平家にとって大きな利になります。
問題があるとすれば、維持できるかどうかでございます」

多くの軍師役が賛同してくれたが、問題は現地での補給だった。
限られた土地で大人数を養うには補給が不可欠だが、松前領からアメリカ合衆国ジョージア州にまで、十分な武器弾薬や食糧を輸送するのは不可能だった。
現地で屯田するにしても限界があるから、現地で代価を支払って購入備蓄するしかないのだが、松前松平家といえども無尽蔵の軍資金があるわけではない。
まして今はシベリアでロシアと戦っているのだ。

「軍資金は乾燥大麻と大麻樹脂を売って稼ぐ。
特に大麻樹脂なら嵩張らないし軽い、若党隊と一緒に送るにしても、大麻樹脂だけを送るにしても、これ以上最適なモノはない」

麻薬を売って軍資金にするなど、最低最悪の所業だ。
だが、ネイティブアメリカンを強制移住させて土地も財産も、いや、命すら奪っている白人に手心を加える必要など断じてない。
そう既に多くのネイティブアメリカンがインディアン移住法の犠牲になっている。
一八三〇年九月二七日には、ダンシング・ラビット・クリーク条約によって、ミシシッピ州のチョクトー族が、ミシシッピ川の西部の土地と補償金と引き換えに、ミシシッピ川の東側の土地を割譲させられている。

だがそれは自ら望んで割譲したわけではなく、ネイティブアメリカンを虐殺して人気を得た、アンドリュー・ジャクソン大統領を恐れたからだ。
事ここに至ってはアンドリュー・ジャクソン大統領を暗殺するしかないだろうか。
だが今アンドリュー・ジャクソン大統領を暗殺したら、白人がネイティブアメリカンに対する大虐殺を開始するかもしれない。
もう少し戦力を拡充してから行うべきか、正直迷う。

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