転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第107話一八三二年、仕込み

ギリギリのか細い物だが、シベリアとアラスカと北米での連絡網を構築する事ができたので、それを利用することにした。
まずは敵、白人の悪辣非道なやりくちを事前にネイティブアメリカンに教えて、騙される人間を防ごうとした。
あいつらは必ず嘘偽りの自由平等を歌ってキリスト教を広めてから侵略する。
教会に寄進したはずの土地や家、自分までもがいつの間にか白人に売り払われていて、奴隷にされてしまっている。

そして何より許せないのが、侵略国で仲違いさせることだ。
スペインがインカ帝国を滅ぼした時も、敵対していた部族と協力体制を築いた。
イギリスやフランスが北米を侵略した時も、ネイティブアメリカンの部族同士を敵対させて侵略して行った。
時には同じ部族で内部対立させて滅ぼしている。
日本に不平等条約を押し付けた時も、徳川幕府を潰そうとして薩長を筆頭に外様に反乱させている。

だが俺が事前に情報を与えたとしても、彼らの長年に渡る根深い部族対立が解消されるとは思わない。
僅かでも少なくなればいいが、完全になくすことはできないだろう。
だから俺がやるべきなのは、敵に内部分裂をやり返すことだ。
まずはイギリスとフランスの国同士の争いを煽ってやる。
次にアイルランドやウェールズやスコットランドといった、歴史的な敵対関係を煽って、ネイティブアメリカンとの争い以上の戦いを引き起こさせる。

特にプロテスタントとカソリックを争わせて、アメリカとフランスで宗教戦争を勃発させて、日本と戦えないようにする。
俺が現地に派遣した者達にやってもらうのはその仕込みだ。
白人同士の争いで弱者になっているモノと手を組み、現在権力を持っているモノと敵対させて内部分裂から内部闘争にまで発展させるのだ。
今北米に派遣できている少数の工作員では、それくらいしかできないという現実的な問題もあるが、一番効果的な方法だとも思う。

だが今のままでは連絡網が細すぎるから、犬ぞりとトナカイそりを増やす。
その技術を持った現地民を雇用して、現地民の心をとらえる。
戦争になった時に武器と兵糧を輸送するために、小型の西洋帆船である快速丸と迅速丸の大量建造を行う。
シベリアやアラスカや北米との交易に使えなくても、東南アジアとの交易には十分使えるし、国内諸藩との戦いに使う場合は無敵だろう。

「巫覡様、マグロと猪が献上されましたがいかがいたしましょうか」

「マグロはいつもの漁師が届けたくれた物だな。
猪は弾左衛門のところで解体したものだな。
だったらいつも通りマグロの大トロ部分は塩焼きに致せ。
猪の舌は薄く切って胡麻油につけておけ、二刻後に塩焼きにする。
他の所は父上と御爺様に食べたい所を御聞きしろ」

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