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克全

第99話一八三一年、国際交渉と離島環礁

蘭国を通じて、小笠原諸島をはじめとする日本近海の島々の領有権を、西欧列強に訴えていた。
その全てに松前藩若党隊を家族ともども駐屯させていた。
仮想戦記を書くために覚えた地理がとても役にたった。
同時に英国にはキプロス号(サイプラス号)の返還交渉をしていたが、これが予想以上に好意的にとらえてもらえた。

英国海軍にとって母国の権力から遠く離れ孤立した艦上での反乱は恐怖だった。
奴隷のような悪条件で、死と隣り合わせの戦いを強いられる水兵達に、叛乱を起こして艦艇を奪えば、金を得た上で自由になれるという前例は、絶対に作りたくなかったのだ。
それを防いでくれた国や組織にはどうしても好意的になる。
日本との交易では、利益は出ていないが赤字でもない。
だが鉱物を売って嗜好品を購入する取引総額ではかなりの量になっていた。

英国とすれば、あわよくば植民地として占領したい。
その為には、国内に現王家に叛乱を仕掛ける有力勢力と手を結びたい。
植民地化が無理なら不平等条約を締結して搾取したい。
それも無理なら交易量を増やして貿易黒字にしたい。
そんな身勝手な事を考え、まずは松前藩に有利な条件を示してきた。
それくらいの事は、歴史を知っていれば予測して騙されないようにできる。

だがらこそ、英国に松前藩は手先に使えると思わせなければいけない。
米国などの他国に利を奪われることなく、独占できると思わせる。
日本近海の諸島は、一時的には全て日本領としておいても、後に植民地にできると思わせる。
そういう前提で、俺は英国と、いや、英国海軍との交渉を続けた。
その結果キプロス号は、私掠船が拿捕したのと同じ条件で英国内で売却され、その利益が松前藩に支払われた。

だが、その利益を金銀で手に入れてしまうと、英国や英国海軍の好意は勝ち取れないので、その利益で鉱物や穀物を購入した。
いや、キプロス号の利益だけでなく、もっと多くの取引を行った。
松前藩が支配下に置いた領地、小笠原諸島、琉球諸島、沖大東島、南大東島、北大東島、対馬、竹島、尖閣諸島、南鳥島、ミッドウェー諸島、ウェーク島、ジョンストン島などで大々的に交易をおこなった。

中には全く英国との交易がおこなわれないような離島も多い。
いや、島というより環礁であり、水源の確保すら難しい場所もあるからだ。
だが、将来の二百海里領有権や海底資源の事を知っていれば、今西欧列強が領有権を主張していない離島環礁にも、兵士を送って確保しておくべきだった。
特に英国が日本を植民地化できるかもしれない、日本領を全てを手に入れられるかもしれない、そう思って味方している間に確保すべきだった。

例えそのために、派遣した兵士を見殺しにする事になってもだ。
地獄に落ちることになっても、やるべきだと考えた。
だが、俺だって多少は良心がある。
派遣する兵士達に現実の利益と将来の夢くらいは与える。
死の可能性が高い危険な遠方の離島に派遣する将兵には、現地確保を行えば百石の知行格と派遣地で商場を与える約束をした。

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