転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第91話一八三〇年、水軍を強化し海軍設立へ

「殿、本当に八隻全てを小笠原という所に派遣するのですか」

「本当だ、これは絶対に必要な事だ。
連絡用の快速丸と迅速丸を量産しつつ、水兵の鍛錬を強化しろ。
五十二門フリゲート艦の完成も急がせろ。
艦艇用の造船所を拡大強化して、南蛮船の来襲に備えるのだ」

「はい」

俺の叱咤激励を受けて、藩士一丸となって水軍、いや、海軍が増強された。
松前藩だけではなく、広く日本中から人材を募集した。
理由は簡単で、歴史が一気に日米開戦に動くかもしれないからだ。

小笠原諸島を確保するために米国開拓団を追い払えば、米国がそれを口実に宣戦布告する可能性があるのだ。
本当はまだ早いのだが、小笠原諸島を奪われたら、喉元に匕首を突き付けられているのと同じなのだ。
今やれるかどうかは別にして、小笠原諸島に米国の海軍基地や空軍基地があったら、時至れば何時でも東京大空襲をやれることになってしまう。
そんな事を許すわけにはいかないのだ。

今のアメリカ大統領は、民主共和党のジョン・クィンシー・アダムズだったはずで、彼はモンロー主義者で比較的ネイティブアメリカンに優しかった。
まあ、問答無用で襲い殺し土地を奪い故郷から追い出してから、対価を支払うべきと言いだしても、強盗殺人集団の偽善には違いなのだがな。

だが、問答無用で襲って殺して奪う事を繰り返す、次の大統領、アンドリュー・ジャクソンよりはましだ。
こいつは奴隷主、農園主、商人として財をなし、ネイティブアメリカンを虐殺して名を成し地位を得た下劣な奴だ。

女子供を含めた、八百余人ものネイティブアメリカンを殺し、殺した死体から鼻を削ぎとらせて戦利品とさせている。
ネイティブアメリカンの死体から肉を剥ぎ取り、その肉を細く切って天日で干し、軍馬の手綱として再利用するような下劣なおこないをした。
特に許せないのは「女を生き残らせるとまたネイティブアメリカンが増える」との考えから、乳幼児、女児を含む女性を徹底的に殺すよう全軍に命じた事だ。

日米開戦も覚悟はしているし、ネイティブアメリカンに偽装した藩士を米大陸に送り込み、アメリカ大陸で破壊活動をする準備もしているが、こんな奴が大統領の時に米国の移民団を攻撃するのは、あまりにも危険すぎるのだ。

少しでも対話の可能性がある、ジョン・クィンシー・アダムズが大統領の内に、まだ入植団が父島に上陸する前に、小笠原諸島の領有を宣言し、追い返さなければならないと、俺は考えたのだ。
だから、徳川家慶から伊豆諸島と小笠原諸島の領有を認められて直ぐに、出島から西欧列強に小笠原の領有を宣言していた。

そして、三十六門フリゲート艦八艦で編制された松前海軍を、品川砲台から小笠原諸島に巡視航海させた。
建造に一隻二万両も必要な、五十二門フリゲート艦の量産にも踏み切った。
アメリカ西海岸に偽装ネイティブアメリカン部隊を送り込むためには、大艦隊が必要不可欠なのだ。

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