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克全

第59話一八二七年、開拓進撃

「殿様、蝦夷から伝書鳩が届きました」

「うむ、読ませてもらおうか」

陸路を進んだ元野非人による開拓も、とても順調に進んでいる。
入植地に応じて、百家から千家万家まで、外国が攻め込んできた時には、集団越冬屋敷、早い話が城や陣地なのだが、そこに籠城するのだ。
開拓民を護る集団越冬屋敷を最初に築いてから、少しずつ北上東上させて行く。

松前に上陸した開拓団は、最初に大工仕事ができる者達が集められ、日本海側に集団越冬屋敷を築きつつ、前世の北海道支庁制度の檜山支庁、後志支庁、石狩支庁、留萌支庁、網走支庁と進撃していった。

函館に上陸した開拓団も、最初に大工仕事ができる者達が集められ、太平洋側に集団越冬屋敷を築きつつ、前世の北海道支庁制度の渡島支庁、胆振支庁、日高支庁、十勝支庁、釧路支庁、根室支庁、網走支庁と進撃していった。

残念だが、今の開拓団の人数では、内陸部までは開拓地を広げる事はできない。
各支庁の内陸部は勿論、海に面していない空知支庁や上川支庁の地域は手付かずになってしまうが、外国の上陸作戦に対処する事を考えれば、沿岸部の開拓を優先して城砦を兼ねた集団越冬屋敷を築かなければいけない。

城砦を兼ねた集団越冬屋敷とはいっても、本格的な城壁や濠があるわけではない。
融雪池、融雪川、流雪溝を濠の代わりとし、周囲に狼や熊除けを兼ねた逆茂木や馬防策を設けている程度だ。

だがそれでも、何の防衛策もない状態の時から比べれば、雲泥の差だ。
拠点として宿泊できる集団越冬屋敷が築かれれば、後を進む野非人開拓団の進行速度も速くなる。

先頭の大工集団に追いついた後進部隊は、集団越冬屋敷を繋ぐ道路網を築いた。
次の開拓地の集団越冬屋敷が建築される前に道路網が整備されたら、河川の堤防整備や用水路の整備が行われた。

蝦夷国はとても広大で、輸送すべき物資も資材も莫大で、今迄のような人基準の道では輸送が滞ってしまうので、将来の二車線四車線道路を基準とした道普請を行う。
だが今から四車線の道にするのは無駄が多いので、四車線用地だけを確保し、緊急に整備するのは馬車鉄道用の道幅だ。
大八車や牛車が基準ではなく、将来の蒸気機関車や電気機関車の導入に備えた、鉄道網にも対処できる道造りを行うのだ。

「蝦夷地に命令を伝える。
旗振り通信と伝令を送ってくれ」

「承りました」

残念な事だが、今はまだ伝書鳩による通信は片道しかない。
蝦夷地で優秀な伝書鳩を育成するのはまだ難しいのだ。
江戸なら十分に鳩を育成訓練できるのだが、蝦夷では交易開拓が優先で後回しだ。
だが伝令は俺が大老参与に就任した事で、幕府の早飛脚と早馬を使うことができる。
しかし、いつまでも幕府の体制に頼っているわけにもいかない。
松前藩独自の早飛脚と早馬を整備しなければいけない。

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