転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第10話一八二三年、武芸大会興業と費用

「心形刀流、練武館、伊庭殿。
神道無念流、練兵館、斎藤殿。
北辰一刀流、玄武館、千葉殿。
鏡新明智流、士学館、桃井殿。
一刀流、小野殿。
直心影流、男谷殿。
天然理心流、近藤殿」

俺は江戸中の、いや、全国の道場から武芸者を集めた。
本当は砲術と弓術を重視した兵士を集めたかったが、今の日本には実戦に即した武芸は少なく、最低限剣術を一生懸命学んだ者を集める事に妥協した。
剣術を本気で学んだ者なら、主命で砲術と弓術を学べと言えば、一生懸命学んでくれるかもしれないと考えたのだ。

今回の採用人数は二千兵を考えている。
採用条件と待遇に加えて採用人数も公表したから、もう雲霞の如く希望者が集まったが、それも仕方のない事だった。

新規で立藩したからと言って、普通は新規採用も縁戚や友人知人の紹介が優先され、全くの無関係な者が武芸だけで採用される事はない。
あったとしても有名な武芸者が、藩の売名のために一人二人採用されるだけだ。
それが完全な実力主義で二千人も採用されるのだから、もう二度とこのような機会などないと、部屋住みや浪人が、全てを捨てて命懸けで試合の臨むのは当然だった。

「浅野家家臣、大石家陪臣、赤西直次郎殿。
上杉家家臣、千坂家陪臣、森稲次郎殿。
正々堂々戦われよ」

俺は庶民に人気の、いや、武家や婦女子にも人気の試合を組むようにした。
初戦の組み合わせは、赤穂事件の浅野家と上杉家の縁者を組み合わせた。
探し回って浅野家と吉良家の縁者の試合まで組んだ。
この時代は娯楽に飢えている。
江戸で一日千両の金が動く場所と言えば、娯楽演芸の芝居町、食欲の魚河岸、性欲の吉原の三カ所だ。

流石に仕官が掛かった武芸大会で遊女を斡旋するわけにはいかないが、人々の興味を掻き立てるような、遺恨重なる家同士の対決を組み、美味しい芝居弁当を注文できるようにする事はできる。

それに、性欲の抜け道がないわけではない。
出張で水茶屋や色茶屋の女に接待させるのだ。
試合会場で遊ばせる事はできないが、遊女や芸妓に湯茶の接待をさせ、気に入った女を連れて色茶屋に行けるようにする。

とにかく多くの観客に集まってもらわなければ、見物料も料理屋や茶屋からの運上金も入らないから、人気の組み合わせを作る。
江戸城内で刃傷事件を起こした藩同士や、隣接して仲の悪いのが有名な家を戦わせるのが一番人気があると思い、赤穂事件以外にも以下の組み合わせを考えた。

「刃傷事件を起こした大名家」
稲葉家と井上家は豊島明重事件
稲葉家と堀田家は稲葉正久事件
毛利家と水野家は水野忠恒事件
細川家と板倉家は板倉勝該事件
田沼家と松平家は佐野政言事件

「仲の悪いので有名な大名家」
津軽家と南部家
佐賀鍋島家と分家の小城鍋島家
毛利家と分家の徳山毛利家
伊達家と二本松家
島津家と伊東家
前田家と丹羽家
池田家と永井家

まあ、やはり一番人気は赤穂事件の組み合わせでしたが。

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