そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全

第74話:ルーパス一家と大魔王2

 ルーパスは家族四人と馬四頭で魔界にきていた。
 オードリーとグレアムは仲睦まじく馬を寄せて後方でイチャイチャしてる。
 ルーパスは頑として認めないが、もうオードリーの気持ちは決まっている。
 ミネルバも認めているから、ルーパスの意見など無視されるだけだった。
 そんな状況を大魔王の妻は微笑ましく思っていた。
 ただ大魔王だけがルーパスに同情的だった。

「可哀想だな、ルーパス。
 色々と頑張ってきたのにな」

「うるさいわ、そんな事を言われるためにここまで来たわけではない。
 さっさと約束を終わらせたいのだ。
 この魔力を受けとる前に約束しろ。
 絶対にミネルバとオードリーに危害を加えないとな。
 それとミネルバに何もしていないと断言しろ」

「クックックックッ、随分とぬるくなったのではないか、ルーパス。
 家族団欒を過ごすとそのような甘い事を口にするようになるのか。
 魔族との約束などあてにできないと公言していたではないか」

「ふっん、今でもその考えに変わりはない。
 だが大魔王にも弱点があることが分かったからな。
 大切な妻を護るためにら約束を遵守するだろう」

「クックックックッ、大切な妻を護るために平気で噓をつくとは思わぬのか」

「それはない、絶対にあり得ない。
 大魔王なら俺たちが多くの世界から魔力を集めている事を知っているだろう。
 妻の安全を一番に考えるのなら俺たちと神々の両方を敵に回す事はありえない」

「それは褒めているのか、それともけなしているのか」

「両方だ、で、どうするのだ、約束するのかしないのか。
 前回会った時なら、大魔王と大魔王妃を同時に敵に回すのは厳しかった。
 だが今なら互角以上に戦えるぞ。
 ここで我らと大魔王が戦えば、熾烈な消耗戦になるのは確実だ。
 その時神々が介入してきたら、また大魔王妃が殺されるのではないか」

「クックックックッ、そこまで考えているのなら、もう少し深く考えろ。
 それができなければ、また妻を失うことになるぞ」

「なんだと!」

「神々ほど身勝手な存在はいないのだぞ。
 魔族を滅ぼすためなら、一緒にいる人族など巻き込んでも構わないと考えるぞ。
 我らと全力で戦っている時に、神々の攻撃を受けたらミネルバはどうなるかな」

「それが分かっていて呼び出したのか」

「そうだ、そして次の呼び出しに応じなかったら、どうなるか分かるな。
 我らが人界にいって魔力を要求するぞ。
 渡さなければ人界で我らとお前達の戦いになる。
 その時に魔界の神々はどうでるだろうな。
 人界の神々はどう対処するだろうな。
 必ず魔界の神々が人界にまで襲いに来るとは限らない。
 だが、我らが人界を通じて多くの世界に移住すると思えば、人界を破壊するとは思わないか、ルーパス。
 分かったら今持っている魔力の半分を差し出してもらおうか」

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