呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第255話 ブーイング

「あーまじでなんもなかったな」

「前の世界で引き返した人たちはモンスターハウスが原因だもんねぇ。普通はあの量倒せないからね」

「あかねが来てからはあれがまとめられてドラゴンゾンビだもんなー。どうしろっちゅうねんって話だよ」

そのまま何事もなく九階層までやってきた。前の世界ではあかねがあほみたいに罠を仕掛けて侵入者を片っ端から片付けようとしていたが今回はそんな罠は存在しない。

本来定期的に配置が変わったりするダンジョンの中に自前の罠をしかけるという前代未聞な行為は今後行われることは無いだろう。最下層に行けば小屋があるだろうが、今回はそこを拠点にさせる気はないし。

「それなりに難易度高いダンジョンですよみなさん……」

「その難易度が跳ね上がってる原因はめぐだけどな」

強化スケルトンのせいで新米冒険者は通常ここにはこない。迷い込みでもしない限りはわからないような場所にあるし、入っても普通のスケルトンに対してかなりきつい戦いを強いられる。

「レイ」

クロエがちょいちょい魔法を撃って隠れている敵を焼き払っている。もはや聖なる魔法でも何でもなくただの魔力を打ち出すお手軽技を使っている。スケルトンやゾンビ、影で壁に溶け込んでいる魔物、物理の効かないゴーストっぽい魔物も全てクロエの魔法で一撃。

というかここにいる誰もが何も警戒していないというただのお散歩。俺もあかねもスキルの力で敵の位置を把握しているし、クロエも何かしらの探知魔法を使っているみたい。

めぐに至っては近づくだけで敵が溶ける。神聖すぎる存在なためはんぱなアンデット程度では触れることすら不可能。これルカたちの勇者パーティもこんな感じでダンジョン攻略してるんだろうか。

そしたらこの街のダンジョン全て攻略されるぞ。

「わー、ついたー! なつかしー!」

そんなこんなで最下層までやってきた。前回俺達が来た時はものすごく綺麗に整備されていて、草原や畑などがあり人が生活していてもなんら不思議はない場所だった。しかし今は小屋以外はかなりボロボロで、廃墟に迷い込んだかのような場所になっている。

「『解放』」

あかねは迷わず解放を使う。二度の転生によりあかねのスキルも大幅に強化されているようで、魔力に汚染されていた地面や植物が少しずつ息を吹き返していく。テレビとかで花が枯れるのを高速でたまに見るけど、あれの逆再生みたいな感じ。

気づけばあたりは普通に人が暮らせるような感じになっている。ここを耕して畑を作って家の花壇には花の種をまいて、そしてあとは魔物が沸かないように定期的に解放を行うだけ……。無駄に本気出しすぎだろ。

前の世界ではそこまでやっていた様だが……そこまでできて何故片付けが出来ない。

「何?」

「あかねって惜しいよな……」

「自分でもそう思う」

あかねは我に返ったようになっていたので見て見ぬふりをしてあげて地上に帰ることにする。小屋の中は特に何もしていないのに綺麗なままで、生活感が無くても何か特殊な空間だったんだろうという感じだ。

だけど前の世界と同様特にこれといった発見はなく、ダンジョンコアを使って地上に戻っていく。前回泊まったりあれだけ苦労したのに数時間で攻略しきってしまうのはなんかこう、強くなったなという気持ちと若干の物足りなさを感じる。

「キミヒト、早く帰らないとあの子達うるさいわよ」

「回復の準備を頼む」

「お兄ちゃんが今日一番の気合いを入れています……」

あずきと戦うよりも、強化スケルトンと戦うよりも俺にとってあの二人のほうが厄介だからな。なにせあの二人は俺の防御を貫通してくる強さを身に着けてしまった。いくら不屈を持っていてダメージに耐えられるからって、それは一人ずつで来られた場合だ。

そしてこっちの世界に来てから二人同時にボコられたことはいまだない。もしもフラフィーとイリスが意味もなく俺に連携技を繰り出して来たらリアルで死ぬかもしれん。やらないよね?

宿屋に戻って来るとティティが嬉しそうな顔をして俺達を出迎えてくれる。うむ、俺も嬉しいよ。例え目当てがあずきだとしてもその笑顔を見られるだけでこっちとしては幸せな気分に浸れる。

「ティティ、フラフィーとイリスは戻って来てないのか?」

「戻ってないですよ……というか止めてきて欲しいです」

ティティはそう言って視線を森の方に向ける。それと同時に轟音と閃光……。あいつら何やってんの? あれ、ガチの殺し合いしてない? 若干殺伐とした感じだったけどそこまで殺伐としてなかったよね?

「イリスったら結構派手にやってるわね」

「フラフィーちゃんも戦えるようになってるねぇ」

「他人事過ぎますよ……」

ティティが無言でずっとこっちを見てくるのであずきを預けて向かう事にする。あずきにはティティのご機嫌を取ってもらえるし、もし街中に飛び火するようなことがあれば守ってもらおう。

そして外に出ると野次馬たちが集まって賭け事が行われていた。

「突如現れた少女二人の戦い! 方や小さい魔法使いの少女、方や武闘派な猫獣人の少女! 一瞬で着くと思われて勝負はいまだ白熱の真っただ中! さあどっちが勝つか張った張った! 情報によるとなんとあの二人、ギルドで最高ランクの戦闘力を叩き出しているとかいないとか! 盛り上がってまいりました!」

なんか仕切ってる変な人もいるし。ルカたちの勇者パーティも見学に来ているという結構ガチ目に観戦していた。これ、下手に止めるとこっちからブーイング来るな?

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