呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第237話 無傷
「っておいおいまじか……」
めぐが全ての封印を解いた時、その中から漏れてくる瘴気は今までの比ではなかった。それは目に見えるほど濃いもので、威圧感はめぐが女神様だった時のものに似ていた。
めぐの場合はお祈りしておきたい気持ちにさせられるが、この魔獣の場合はひざまずいて命乞いしたくなるようなそんなほの暗さを感じさせる。あかんだろこれは。え、これと同じ強さって事はあの魔人めちゃくちゃ手抜いてたんじゃない?
「キミヒト、大丈夫?」
「ああ、何とか」
圧倒的な力を前にしてもクロエは平然としている。この相手の強さがどのくらいか俺にはわからないが、クロエにはその強さが感じ取れるのかもしれない。戦闘における圧倒的に経験値の差だろうなこれは。
クロエは自分よりも強い生き物との戦闘も数限りなく行ってきたはずだ。クロエとイリス、二人で力を合わせてなんとか戦ったり、場合によっては逃げるなんて選択肢も取っていただろう。
そう言う時冷静じゃないとまともに動く事すら出来ない。クロエにはその経験があり、俺にはない。だから俺は今結構ビビってもいる。
「凄い、威圧感ですね」
フラフィーも俺と同じく相当ビビっている。しかしビビッてはいても怯んでいる様子はどこにもない。なんだかんだでフラフィーも死線をくぐっているし、一度死んでもいる。土壇場でのキモが座っているんだろうな。獣人の闘争本能もあるかもしれないが。
「開きますよ、お兄ちゃん」
「あぁ、任せておけ。みんなの出番はないよ」
めぐが最後に声をかけてくる。そこで俺の気持ちは固まり、さらに不屈の効力をやや下げておく。ここでこの恐怖に慣れておかなければ、本当の恐怖と立ち向かう時に悪影響が出るかもしれない。
限界値を引き上げておくことはこれからの行動にとってプラスになるだろう。これが魔王が作った生き物なら、魔王はこれよりも確実に何倍も強い。これくらい普通に倒せないと魔王との決戦なんて出来やしない。
ゆっくりと扉が開き、その中には人間よりも大きく、真っ黒い獣がいた。俺は一人で部屋の中に入ると、瞬間寒気がした。
「うぉ!?」
とっさに横に飛びのくと黒い獣が前足を地面に叩きつけ床を破壊していた。この破壊力は前の世界で見たミスリルゴーレム以上、そして爪痕を残していることから生身でガードしたところで切り裂かれてしまうだろう。
口元からたれるよだれは地面でじゅうじゅうと音を立てて煙を上げている。酸性の唾液とかやるやん。ものすごくやばい感じしかしないんだけど逆に冷静になって来た。
「お兄ちゃん、とりあえずその部屋の中から外には出られないようにしておいたからやばくなったらこっち戻ってきて」
「流石めぐ。至れり尽くせりだな」
だが俺はここから逃げるつもりはない。剣を構え敵の隙を伺う。
魔獣は俺が構えたことで若干の警戒を示す。どうやらただ単純に暴虐の限りを尽くすタイプじゃなくそれなりに戦況を見極められるタイプの様だ。こっちから視線は外さずゆっくりと円を描きながら俺との距離をつめてくる。
俺もその動きに合わせて位置を変えていく。カウンターを決められれば一番だが、そう簡単に行かなさそうだなこれは。
「グルルル……」
魔獣は唸り声を上げながらずっとぐるぐる回り続けている。一発目の不意打ち以降決してこちらに近づいてこない。距離をつめているのもかなり微妙で、お互いの間合いが決して交わらない微妙な距離をうろついている。
というかこっちの間合いを正確に把握しているなこれ。それにこの獣、よく見るとシャウトウルフに似てるような……?
「ガアアアアア!」
そう思った瞬間魔獣は大声を張り上げる。そして猛然とダッシュをして突撃してくる。きっと俺がその叫びで硬直すると思ったのだろうが、俺には麻痺や状態異常は効かない。存分にカウンターを……。
「あ?」
受けるために構えようとすると身体が動かなかった。よく見ると足元からめちゃくちゃ細い黒い線、髪の毛のような物が全身に上ってきて絡みついている。
ああ、これはあいつの体毛か? なるほど、よく見れば俺の向きは最初に入った時とは反対方向を向いているし立ち位置は最初に魔獣が立っていた場所にかなり近くなっている。誘導されたか。
封印が解かれた時点で捕縛用の罠を仕掛ける、そして相手が入って来たならその罠の位置に来るように誘導。誘導する前に避けられる大ぶりな攻撃を仕掛けて小細工が出来なさそうな印象を与える。そして攻撃する前には咆哮で麻痺を狙ってくる。
それなりどころかめっちゃ戦術組み立ててくるやん。
「ガァ!?」
だが、そういう小細工なら全身透過するだけで対処が出来る。俺のスキルは基本的に初見じゃ意味不明だからな。それに分かった所で対処の仕様がない。圧倒的な力で俺を倒す以外には方法が存在しない。
そして俺がもしも逃げることだけに徹するなら倒す方法すらなくなる。俺の周りの空気とか常に無くすような攻撃なら別だが。ドラゴンのブレス攻撃は結構厄介だったな今考えても。
「それじゃ次はこっちの番だな」
俺を通り抜けて行った魔獣に向けて思い切りダッシュする。ケットシーとの追いかけっこに使った超ダッシュ、そして剣に防御を付与して思い切り叩きつけ、さらには衝撃を通す。
「ギャッ!」
「まじかよ」
アダマンタイトに防御を付与し叩きつけたにも関わらずダメージはあんまりなさそうだった。効いてはいるものの、ちょっと足ぶつけた程度って感じ。衝撃通すって事は内部にダメージいってるはずなんだけどな。
「お兄ちゃん、魔獣は魔物と違ってほとんど魔力の塊だから物理攻撃は効果が薄いよ!」
「そう言う事は先に教えて!」
めちゃくちゃ相性悪いやんけ。これクロエの魔法が……いやもう一つも試してみるか。というか全力でぶっぱしてみるしかないな。
俺の反撃を受けて魔獣は更に距離を取る。そして地面からシャウトウルフたちを召喚しだした。
「グオオオオオ」
全員がものすごい雄たけびを上げるが、俺に麻痺は効かない。これが普通のパーティで、麻痺対策をしていなかったらこれだけでお陀仏だろう。だがその圧倒的質量で襲い掛かられると正直きついなんてもんじゃない。
シャウトウルフは延々と吠え続けているためめちゃくちゃ耳が痛い。そして死角にいるシャウトウルフがちまちまと襲い掛かってきて非常にうっとうしい。
「くっそ」
とびかかって来たシャウトウルフを斬った瞬間、魔獣から光線が放たれる。どうやらシャウトウルフで足止め、そして超火力の光線撃つための時間稼ぎ、咆哮で動きを止めて焼き払うのが攻撃パターンらしい。めんどくさすぎるこいつ。
「やったるわ」
俺は防御を全開、守護の光も全開、不屈も全開で発動させる。そしてあえてその光線を真正面から受け止める。俺と剣を包むスキルの輝きは光線を周りに弾き飛ばしていく。
「うおおおおお!」
圧倒的な熱量を持って俺の防御を貫いてこようとするが、それは決して叶わない。焼けるような熱さは感じるものの、それだけであり俺へのダメージはない。
やがて光線は止まり、周りに甚大な被害をもたらしていた。弾いた光線により周りにいたシャウトウルフは消滅。壁や柱もかなりボロボロになっていた。封印されていた場所というだけあって頑丈な作りではあるが、流石にあの威力を受けては耐えられなかったようだ。
しかし俺は無傷。女神様のスキル超強いわ。めちゃくちゃ疲れたけど。
めぐが全ての封印を解いた時、その中から漏れてくる瘴気は今までの比ではなかった。それは目に見えるほど濃いもので、威圧感はめぐが女神様だった時のものに似ていた。
めぐの場合はお祈りしておきたい気持ちにさせられるが、この魔獣の場合はひざまずいて命乞いしたくなるようなそんなほの暗さを感じさせる。あかんだろこれは。え、これと同じ強さって事はあの魔人めちゃくちゃ手抜いてたんじゃない?
「キミヒト、大丈夫?」
「ああ、何とか」
圧倒的な力を前にしてもクロエは平然としている。この相手の強さがどのくらいか俺にはわからないが、クロエにはその強さが感じ取れるのかもしれない。戦闘における圧倒的に経験値の差だろうなこれは。
クロエは自分よりも強い生き物との戦闘も数限りなく行ってきたはずだ。クロエとイリス、二人で力を合わせてなんとか戦ったり、場合によっては逃げるなんて選択肢も取っていただろう。
そう言う時冷静じゃないとまともに動く事すら出来ない。クロエにはその経験があり、俺にはない。だから俺は今結構ビビってもいる。
「凄い、威圧感ですね」
フラフィーも俺と同じく相当ビビっている。しかしビビッてはいても怯んでいる様子はどこにもない。なんだかんだでフラフィーも死線をくぐっているし、一度死んでもいる。土壇場でのキモが座っているんだろうな。獣人の闘争本能もあるかもしれないが。
「開きますよ、お兄ちゃん」
「あぁ、任せておけ。みんなの出番はないよ」
めぐが最後に声をかけてくる。そこで俺の気持ちは固まり、さらに不屈の効力をやや下げておく。ここでこの恐怖に慣れておかなければ、本当の恐怖と立ち向かう時に悪影響が出るかもしれない。
限界値を引き上げておくことはこれからの行動にとってプラスになるだろう。これが魔王が作った生き物なら、魔王はこれよりも確実に何倍も強い。これくらい普通に倒せないと魔王との決戦なんて出来やしない。
ゆっくりと扉が開き、その中には人間よりも大きく、真っ黒い獣がいた。俺は一人で部屋の中に入ると、瞬間寒気がした。
「うぉ!?」
とっさに横に飛びのくと黒い獣が前足を地面に叩きつけ床を破壊していた。この破壊力は前の世界で見たミスリルゴーレム以上、そして爪痕を残していることから生身でガードしたところで切り裂かれてしまうだろう。
口元からたれるよだれは地面でじゅうじゅうと音を立てて煙を上げている。酸性の唾液とかやるやん。ものすごくやばい感じしかしないんだけど逆に冷静になって来た。
「お兄ちゃん、とりあえずその部屋の中から外には出られないようにしておいたからやばくなったらこっち戻ってきて」
「流石めぐ。至れり尽くせりだな」
だが俺はここから逃げるつもりはない。剣を構え敵の隙を伺う。
魔獣は俺が構えたことで若干の警戒を示す。どうやらただ単純に暴虐の限りを尽くすタイプじゃなくそれなりに戦況を見極められるタイプの様だ。こっちから視線は外さずゆっくりと円を描きながら俺との距離をつめてくる。
俺もその動きに合わせて位置を変えていく。カウンターを決められれば一番だが、そう簡単に行かなさそうだなこれは。
「グルルル……」
魔獣は唸り声を上げながらずっとぐるぐる回り続けている。一発目の不意打ち以降決してこちらに近づいてこない。距離をつめているのもかなり微妙で、お互いの間合いが決して交わらない微妙な距離をうろついている。
というかこっちの間合いを正確に把握しているなこれ。それにこの獣、よく見るとシャウトウルフに似てるような……?
「ガアアアアア!」
そう思った瞬間魔獣は大声を張り上げる。そして猛然とダッシュをして突撃してくる。きっと俺がその叫びで硬直すると思ったのだろうが、俺には麻痺や状態異常は効かない。存分にカウンターを……。
「あ?」
受けるために構えようとすると身体が動かなかった。よく見ると足元からめちゃくちゃ細い黒い線、髪の毛のような物が全身に上ってきて絡みついている。
ああ、これはあいつの体毛か? なるほど、よく見れば俺の向きは最初に入った時とは反対方向を向いているし立ち位置は最初に魔獣が立っていた場所にかなり近くなっている。誘導されたか。
封印が解かれた時点で捕縛用の罠を仕掛ける、そして相手が入って来たならその罠の位置に来るように誘導。誘導する前に避けられる大ぶりな攻撃を仕掛けて小細工が出来なさそうな印象を与える。そして攻撃する前には咆哮で麻痺を狙ってくる。
それなりどころかめっちゃ戦術組み立ててくるやん。
「ガァ!?」
だが、そういう小細工なら全身透過するだけで対処が出来る。俺のスキルは基本的に初見じゃ意味不明だからな。それに分かった所で対処の仕様がない。圧倒的な力で俺を倒す以外には方法が存在しない。
そして俺がもしも逃げることだけに徹するなら倒す方法すらなくなる。俺の周りの空気とか常に無くすような攻撃なら別だが。ドラゴンのブレス攻撃は結構厄介だったな今考えても。
「それじゃ次はこっちの番だな」
俺を通り抜けて行った魔獣に向けて思い切りダッシュする。ケットシーとの追いかけっこに使った超ダッシュ、そして剣に防御を付与して思い切り叩きつけ、さらには衝撃を通す。
「ギャッ!」
「まじかよ」
アダマンタイトに防御を付与し叩きつけたにも関わらずダメージはあんまりなさそうだった。効いてはいるものの、ちょっと足ぶつけた程度って感じ。衝撃通すって事は内部にダメージいってるはずなんだけどな。
「お兄ちゃん、魔獣は魔物と違ってほとんど魔力の塊だから物理攻撃は効果が薄いよ!」
「そう言う事は先に教えて!」
めちゃくちゃ相性悪いやんけ。これクロエの魔法が……いやもう一つも試してみるか。というか全力でぶっぱしてみるしかないな。
俺の反撃を受けて魔獣は更に距離を取る。そして地面からシャウトウルフたちを召喚しだした。
「グオオオオオ」
全員がものすごい雄たけびを上げるが、俺に麻痺は効かない。これが普通のパーティで、麻痺対策をしていなかったらこれだけでお陀仏だろう。だがその圧倒的質量で襲い掛かられると正直きついなんてもんじゃない。
シャウトウルフは延々と吠え続けているためめちゃくちゃ耳が痛い。そして死角にいるシャウトウルフがちまちまと襲い掛かってきて非常にうっとうしい。
「くっそ」
とびかかって来たシャウトウルフを斬った瞬間、魔獣から光線が放たれる。どうやらシャウトウルフで足止め、そして超火力の光線撃つための時間稼ぎ、咆哮で動きを止めて焼き払うのが攻撃パターンらしい。めんどくさすぎるこいつ。
「やったるわ」
俺は防御を全開、守護の光も全開、不屈も全開で発動させる。そしてあえてその光線を真正面から受け止める。俺と剣を包むスキルの輝きは光線を周りに弾き飛ばしていく。
「うおおおおお!」
圧倒的な熱量を持って俺の防御を貫いてこようとするが、それは決して叶わない。焼けるような熱さは感じるものの、それだけであり俺へのダメージはない。
やがて光線は止まり、周りに甚大な被害をもたらしていた。弾いた光線により周りにいたシャウトウルフは消滅。壁や柱もかなりボロボロになっていた。封印されていた場所というだけあって頑丈な作りではあるが、流石にあの威力を受けては耐えられなかったようだ。
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