呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第187話 なるほどわからん

「なるほどわからん」

めぐがケンちゃんに状況説明していくがケンちゃんは全然理解してくれなかった。猫は賢い動物ではあるが本能に従っているためあまり難しいことを考えようとはしない。

そんな猫に世界が崩壊しそうだとか世界を巻き戻したとか女神の力がどうとか話したところで理解できるはずもなく。というわけでケンちゃんはめぐにもふもふされながら話を完全に聞き流していた。

「もー、可愛いですねーケンちゃんは。神獣の中で一番好き!」

「主、良いぞ。悪い気はしない」

褒められて撫でられてご満悦の巨大猫。俺ももふもふしたいけど近づこうとするとガン飛ばされる。まじで猫ですよこのケットシーさん。めちゃくちゃ可愛いぞこいつ。

あかねは普通に近づいて触らせてもらえてるからもしかして女好きの猫なのかもしれない。確かにあかねはあの性格だし動物に好かれそうな感じはある。あぁ猫に警戒されるのたまらないんじゃー。

「主、もふもふしてくれるのは良いのだが、何故呼んだのだ? ご飯の時間か」

「んーん、ご飯は自力で調達して。ちょっと獣人の村に行きたいから連れてって欲しいの」

ご飯を自力で調達してって言われてちょっと悲しそうな顔になる猫可愛すぎる。もうこいつ猫でいいや。ケットシーでもケンちゃんでもなく猫。まじでもふりてぇわ。

「たやすいご用だ。乗れ、我が主」

「わーいもっふもふー」

そしてめぐだけ乗せて走り出そうとしたので待ったをかける。ちなみにあかねもちゃっかり乗ってる。あいつは生き方うまいよな。

「なんだ、人間」

「いやここにいるの全員一応人間だからね? じゃなくて俺も乗せてってくれないか?」

「……ふっ」

猫は口角をあげて笑うとゆっくりと走り出した。乗せる気はないがめぐと一緒にいたからついてくることだけは許す、そんな感じの走り方だ。こいつぁ良い猫だぁ。

「よっしゃ猫と追いかけっこ大好きだぜ!」

俺は全ての能力を使いこの猫を追いかけることを誓う。舐めてもらっては困る。二重に頂いた女神様からの力、そして強化されているステータスの恩恵。その全てを乗せて走り出せば相当な速度が出せるはずだ。

まずはステータスの力だけで走ると六十キロくらい出せる。ぶっちゃけめちゃくちゃな速度だがこれが女神の恩恵、逆に言うとこれくらいないとスキルのある世界でやっていけない。

他の連中はスキルありだと瞬間移動みたいな事するからな。

俺の速度に驚いたのか猫はさらにスピードを上げる。これよこれ。

猫を追いかけるときに楽しいのは猫の全力の逃げを見られること。絶対に害を加えるつもりはないがこっちを見て驚く猫を見るのは凄く楽しい。たぶん猫大好きな人で飼ったことある人ならわかる。

しなやかに動く背筋、華麗に伸び縮みして躍動感のある手足、そして全くぶれない見事な体感。猫の走る姿はとにかく美しく追いかけて眺めるのが非常に楽しい。

だが猫よ。甘いな。俺にはまだスキルの力があるんだ。

俺は防御のスキルを発動させる。地面の衝撃に対して反作用を働かせるように展開することで、蹴る力が地面に吸収されず前に使われるようになる。さらに空気抵抗を防御することで空気抵抗すら無視する。

さらに不屈を発動し肉体の限界を超える力で地面を蹴る。

するとどうなるか。あほみたいな速度が出る。

「ちょ、ま!」

「!?」

俺はそのまま制御が効かず木を破壊しながら突っ込んで行くことになった。防御をとっさに前に展開してダメージを防いだがかなりの恐怖。当然猫は置き去りしたため猫の驚く気配だけを後ろに感じていた。

テンションあがりすぎたわ。やれると思ってたけどあまりにも驚異的なスピードがでて驚いた。なんとか止まると猫も追いつき止まってくれた。

「主、あれは人間か?」

「私の信者だから当然!」

「なるほど、我と同じか。乗れ、人間の雄よ」

なんか認められたわ。ケットシーと言えど主人大好きなんだな。でっかい猫じゃらしとか作ったら一緒に遊んでね。

「キミヒト君も人間離れしていくなぁ」

ドッペルゲンガー作れるやつに言われたくはない。

その後しばらく猫のもふもふを堪能していると獣人の村に到着した。

「我が入ると混乱するからな。ここまでだ」

「ありがとケンちゃん。また会いに来るね」

「待っているぞ主。それと人間たち、主を頼むぞ」

ケンちゃんはゆっくりと姿を消していった。登場した時の威圧はすっかりなくなり、森の気配も落ち着いていった。凄まじい体験をしてしまった。あんなでかくて可愛い猫がいるなんて思いもしなかったぜ。資料と全然違う。

「めぐ、他にもあんな感じの子達いるの?」

「うん、神獣は全部私の家族」

「ケルベロスとか会いたいな」

あかねは猫より犬派なのだろうか。でもたしかに猫があんな感じだったから女神様が作った犬のケルベロスもかなり可愛いんじゃないかと期待してしまうよ。

「ベロに会うのは難しいですね。あの子は人間界と地獄の間に住んでるから。私にしか懐かない気難しい子です」

ご主人至上主義の犬も可愛いからおっけー。

そんな会話をしながら結界の目の前まで来る。ケンちゃんがうろうろしながら通ったように正式な手順を踏まないとこの結界までたどり着くことは出来ないようだ。そして結界は普通に出入り可能。

ただし入ったら中にいる人に存在が検知されると言うものらしい。あと人間は入ると力が抑えられるとも。獣人のために作った結界らしい良い感じの出来栄えだと自画自賛していた。

あんな見た目でとってもかわいかったけどやっぱりすごい生物なんだと実感させられる。

「じゃあ入りますね」

俺たちは獣人の村の中に入った。

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