呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第186話 はい以上です

「というわけなので私はお役に立ちますよ! というか行き場所が無いので信者一号お世話してください!」

「もちろんですよ。身に余る光栄です」

女神様が仲間になった。夢みたい。とりあえずお腹が空いていそうだったので前回の世界で大量に仕入れていた料理を女神様に献上する。ついでに服もなんだか悲しい気持ちになるのでスモッグを与えておいた。少し小さいけどいいだろ、可愛いし。

黄色い帽子や小っちゃいポーチを後で買い与えて完全に幼児にしてあげたい。そしてそんな子を神と崇める俺の姿を想像すると色々とやばい気がしないでもないけど異世界だし良いだろう。

「うーん、とってもおいしい」

ご飯を食べてほくほく顔の女神様、とても可愛い。それに反してあかねは真顔。完全に俺の様子に引いている感じだ。

「ねえキミヒト君。女神様連れて行くのはいいんだけどずっとその調子でいるつもりなの? めちゃくちゃドン引きなんだけど。みんなも絶対引くよそれ」

「それは困る。困るけど相手が女神様だし仕方ないんじゃないか?」

だって相手は神。俺が存在した最たる理由だ。もしこの女神様がいなかったら俺という存在はこの世にいないしみんなに出会えてもいないだろう。

「いやそうじゃなくてね? ……わかったちゃんと言うよ。女の子として面白くない。はい以上です」

あかねは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。そして布団に入りこれ以上話すことはないと頭まで隠してしまった。

そうか、俺がこんなだと一緒にいる女の子たちは良い気しないか。そりゃそうだよな。女神様に会えるとどうしても舞い上がっちゃってその辺の事全く考えられなくなっていたわ。

というか嫉妬だよなこれ。もう少し俺と二人旅出来るかもって言ってたくらいだし寂しいのかもしれない。なんかあかねが可愛く見えてくるから不思議だわ。

あと凄いどうでもいいけどあかね、出会ってから一番女の子らしい行動取ったと思うよ。

悔い改めるか。女神様にも重い重い言われるしな。

「じゃあ女神様、もう少しラフに接してもいいですか?」

「最初からそうしてって言ってたよね! ようやくだよ! あかねさんナイスだよ!」

というわけで女神様の事はこれからめぐと呼ぶことになった。

「じゃあめぐ、改めてよろしく」

「うん、よろしくお兄ちゃん」

「おうふ」

俺は死んだ。俺はその場に膝から崩れ落ち、体から力が完全に失われ受け身も取らず床に倒れる。破壊力が桁違いすぎる。

「え、あの、信者一号? お兄ちゃんはだめでしたか? 兄弟設定のほうが喜ぶかと思ったのですが……」

女神様の気遣いの方向おかしいけど最高です。

「お兄ちゃんでお願いします。あぁもうだめだ女神様好き過ぎる」

「て、照れますよ……」

「いちゃいちゃしすぎだろこいつらはーつまんね」

あかねは完全にふてくされてしまった。あかねには好きとか全然言ってないのに女神様には愛だとか好きだとかめちゃくちゃ言ってるからな。しゃあなし。

そろそろ眠いし女神様にもちゃんと眠って欲しいので寝ることにする。布団は二つしかないので俺はあかねの布団にもぐりこむ。

「え!? ちょっとキミヒト君!?」

「あっちは女神様……めぐが使うからな。いいだろ別に」

「良くないんだけど!? 女神様と寝ればいいでしょ!」

あかねが激しく抵抗してくるが俺には不屈がある。本気で抵抗しない限りは俺をベッドから追い出すことは不可能だ。つまりあかねはまんざらでもないということ。ツンデレめ。

俺最低野郎だな。フラフィーどころか色んな所から殺されそう。

「お兄ちゃんおやすみ」

「おうおやすみめぐ。ほらあかね落ち着け、明日もフラフィー探しに行くんだから寝るぞ」

「こいつ殺したい」

俺のあまりの傍若無人ぷりにあかねは殺意をみなぎらせながら諦めた。これはみんなにちくられて修羅場がまってるだろうなぁ。でも大丈夫だ、俺は殺される覚悟も修羅場に放り込まれる覚悟もばっちりだ。

それにたぶんだけどめぐがいる以上俺を殺そうとするのはフラフィーとあかねだけだろう。みんなからハブられてもめぐが俺と一緒にいればクロエとイリスはこっちに付くだろうからな。

どういった報復を受けるかまでは不明だが死ぬようなことにはならない。そう信じてるよ。でも遊園地のダンジョンだけは二度と行きたくありません。

あかねがヒートアップしていたのでベッドは非常にぬくぬくでぐっすり寝ることが出来た。そして朝になりもう一度森の中を探索することになった。

「キミヒト君、私に近づかないで」

「わかった。めぐ、迷子にならないようにこっちにおいで。肩車してやろう」

「わーい大好きお兄ちゃん」

「茶番もやめろ」

あかねがガチでお怒りなのでやめる。俺だけじゃなくめぐにまで殺気を飛ばしまくる始末だ。どうやらあかねはこの一晩で殺気を飛ばす技術を身に着けたようで、朝からずっとチクチクと肌を刺すような感じがする。

無駄な方向にハイスペックになっていくなこいつは。

「それでめぐ、こっちのほうで良いのか?」

「うん、合ってるよ。ケットシーは私が作った獣だから気配くらいわかります。それが作った結界もね」

どうやら獣人の村を見つけることが出来なかったのは結界が貼られていたからのようだ。数か月後獣人狩りが村を訪れた時には結界が壊されていたか、無くなっていたかのどちらかだろうと言う話。

なのでめぐの案内で森の中を進んで行く。東にあるケイブロット、西にあるリーベン、今回はそのどちらでもない北にあるネイジョン方面だ。

ネイジョンは宗教国家であり色々な宗教がある。その特色から国の中でも区画が分かれていてかなりめんどくさい作りになっているそうだ。面白そうだけど巻き込まれそうでちょっと怖い雰囲気を感じる。

そもそも歩きで行けるような距離にはなく、馬車で数日かかるような位置にあるため行こうとは思っていなかった。それにこっちの森は範囲は狭いが密集していて深い。

魔の森と言われているが魔物が中から外に出てくる気配は一切ないと言うことで放置されている。もし出てきたとしてもそいつはそこまで強い魔物でもない。本当に強い魔物もいるという話だが、噂だけであり誰も見たことはないということだ。

なのでこの中に獣人の村があるとは思っていなかったが、どうやらこの中らしい。自然豊かな場所だし結界があるなら確かに良い場所になりそう。そら魔物の情報が無くて獣人が住んでいるって話があったら獣人狩りが行っちゃいますわ。

「ああ、迷うようになっていますねこれは」

「なんとか出来るのか?」

俺が尋ねるとめぐはドヤ顔だった。

「元女神の力、見せてあげましょう。ケンちゃーん!」

めぐが大きな声を出すと森がざわめきだし、辺りが段々と暗くなっていく。どうみても悪役の登場だけどこれ本当にケットシー呼んでるの? というかケンちゃんっていうんだケットシー。

「キミヒト君、森の動物や魔物たちがやばいやばいしか言わなくなってるんだけど……」

「俺もやばい気がするわ」

明らかに魔の気配。それもとてつもなく強い。この濃さは正直魔王の手下とかそんな連中のレベルじゃない。これが魔王だと言われても信じられるくらいの強さがある。

「おおケンちゃーん、会いたかったよー」

「主……なんだその姿は……」

しかし登場したのはもっふもふの尻尾、もっこもこの毛皮、そして鋭い目つき。雪の中にたたずむシベリア猫みたいな獣がそこにいた。ただしめちゃくちゃデカい。

今結構あったかい季節なんだけどな。

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