呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第175話 愛称で呼ぶ

あかねが王女様をたきつけたので王女様は敗者のような背中を見せながら部屋を出ていく。どうやら軟禁されているというわけでもなくただ魔法を封じられているだけなのだろう。

多くの兵士が呪いのことを知っているけど解こうとしているのは誰にも話して無い感じかな。もし話してたらもっと厳重に警備されてるだろうし自由に動くのに問題があるだろう。協力者がいれば話は別だが。

それにしてもあかねはひどい。

「人の心のデリケートな部分つっついて脅すなんて中々良い性格だよなぁ」

「キミヒト君が私にやらせた時にクセになった。私は悪くない。それに王女様を女神様の信者にしようとしてるのも同じくらい良い性格だと思うよ?」

罪の擦り付けあいをしながら二人で時間をつぶして待っていると王女様が戻って来た。一時間も経ってないけどめちゃくちゃ早えな。

「連れてまいりました」

「エリーちゃん、本当にここにいるのです?」

ほう、王女様を愛称で呼ぶほどの仲か。王女様が君でいけないことを考えていてさらには色々物品を頂いていることを知っているんだろうか。ばらしてやりたいぜ。

しかしこのローラ、かなりの美少女だな。見た目は完全にロリだし王女様と結構歳が離れているように見える。服装もナース服っぽいけどヒラヒラが多く付いていてアニメに出てくる聖女そのものって感じ。

いいね。お人よしで騙されやすそう。王女様にいい様にされているのがそれをさらに物語っている。

「エリーちゃん、もしかしてまた、なのです? あれドキドキして恥ずかしいのです……」

「ち、違います違います! 今日は本当に用事があって……」

「今日は? 本当に?」

無邪気に心底疑問ですといった表情で質問するローラ。あれとかまたとかなんなのか気になるところだが、もしかして王女様は同士なのでは? だとしたら俺の取る行動はだいぶ決まって来るな。

「ローラ、私の事を信じてください。私はあなたの事を本当に大切に想っています。この気持ちに嘘はありません」

「……うん、エリーちゃんの事大好きだから信じる。ごめんね、仲直りのぎゅーです」

そう言ってローラはニコニコしながら王女様に飛びつき優しく抱きしめる。その行動に王女様は完全に目がやばい感じだし手をわきわきさせてるしどう考えても変態です本当にありがとうございました。

はたから見ると何にも信じられない感じだけど仲良くなれそうと思うよ。

「そろそろいいかな」

俺とあかねは王女様たちが戻ってくるときは入ってきた時と同じように姿を消していた。透視とか意思疎通使えば戻ってくるタイミングわかるからね。そして中々タイミングがつかめなかったけど今なら大丈夫だろうというタイミングで姿を現す。

「誰なのです!?」

「ローラ落ち着いて、この人たちが勇者召喚された人たちよ。そして女神の使いと名乗る怪しい人物でもある」

王女様はローラから手を放さず状況を簡単に説明する。その手が若干下にずれていっているのを指摘した方がいいのかなんなのか。スイッチ入っちゃったのかな。

「……本当なのです?」

「本当なのです」

「真似しないで欲しいのです!」

俺が答えると怒りだす。そんな口調だったら普通真似するだろう。誰だってそうする、俺もそうする。

「証拠はあるのです?」

「ええ。鑑定をかけてもらえればすぐわかりますよ。俺でもこっちの寝っ転がってるやつでも」

ステルス状態を解いたらまたあかねはベッドに行ってしまった。めちゃくちゃ気に入ったみたいだな王女様のベッド。確かに部屋の中ですら良い匂いがするしベッドもふかふかと来たら気に入ってもおかしくはないな。

……俺もちょっと興味があるな。

「キミヒト君、フラフィーちゃんに言うよ」

「それはダメだなぁ」

あかねは前の世界では俺の心をあんまり読んでこなかった気がするけど今回ガンガン読んでくるな? 一向に構わないけど何か思う所でもあるのかな?

もしくは俺が感動の再会で思いっきり抱きしめたせいで恥ずかしい気持ちが残ってるとか。いやないな。恥ずかしい気持ちが残ってるなら人の部屋のベッドでごろごろとかありえないだろ。

「本当に……女神様の加護を、持っています。ど、どうやったのです!? 国に聖女として認められ毎朝と毎晩のお祈りを捧げている私でも加護はもらえませんでした。凄いのです!」

ローラは俺たちの鑑定を終えたようで結果に驚いている。半信半疑だったのだろう、自分が一番神を信仰していると国に認められていたのだから。それなのにぽっとでの俺達が女神の加護を持っている。

嫉妬してもおかしくないところなのにこのローラという子、普通に凄い凄いともてはやしてくるだけだ。めちゃくちゃいい子やん。王女様もいい子だしこの子もいい子だし未来は明るい気がしてくるよ。

「王女様ー、信じてもらえたー? 私達が悪い人だったら加護もらえないもんねー。というわけで話を聞いてくれるかな?」

「……にわかには信じがたいですが、ローラがこういうのであれば間違いないのでしょう。わかりました。ローラに免じて無礼を働いた事を許しましょう」

「うーん、王女様は立場を理解してないかな。良いんだよ、机の中ローラちゃんに見せても。こう見えてそこのキミヒト君は鍵開け出来るんだからね」

あかねはどうしてもマウントを取りたい様子。ベッドの中で凄まれてもあまり怖くはないけどやったことと言ってる事は極悪極まりないな。あとさらっと俺を巻き込むんじゃない。

「脅しには屈しませんよ」

「ねえローラちゃん、王女様の机の引き出し、三重底になってるんだけどそこの一番下にローラちゃんの下着が入ってるよ。最近お泊りに来て王女様から下着から服まで一式もらったでしょ。そしてその時に交換された服は王女様が持っていったんだよ」

「ちょ」

「本当です? エリーちゃん?」

速攻屈しそうな王女様である。

「ローラ違うのよ。大切なお友達のお洋服だし使用人に任せてしまうのは心苦しいから私が預かっていただけで決してやましい気持ちとかそういうのではなくて誰にも渡したくないとかそういうのでもなくて私が責任をもって管理しておくためにはどうしても人目の届かない所に置いておく必要があるからで決して下着を手に入れるために新しい服を用意したとかそう言う事はありませんしどちらかというと私の物を肌身離さず持っていてくれる方が私的にはとてもクるものがありますし決してやましい気持ちで下着や洋服を大切に空気に触れないように保管しているわけではないんです愛なんです本当です信じてください」

めちゃくちゃ早口。というか色々ゲロってるんだが。

「うん知ってるのです! エリーちゃんは私が無くしたものとかいつも大切に保管してくれてるいい子なのです! ありがとうなのです!」

ローラのセリフに王女様は複雑な表情をしている。こんないい子をだまして色々悪事を働いているとは王女としての威厳は皆無だな。さっき上の立場の人がうんたらとか厳しい事言っていた人物と同じとは思えない。

この世界は殺伐としてるけど癖の強い人が多いな。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品