呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第166話 扱いやすい女神様

「はいこんばんは。ってそうじゃなくてですね? 感謝の気持ちは言葉にしなくても神の私には伝わるんですよ? 言葉でも伝えようと色々考えてくれるのはとても嬉しいですけどね? こっちに呼ばれた後に延々と語らなくても大丈夫ですからね?」

「そうおっしゃられましても私としては女神様に莫大な恩を感じているので……」

「信者一号は最初からこうでしたっけ?」

女神様は俺とのやりとりでさらに疲れた顔になってしまった。やっぱり女神様はこうでないといけない。堅苦しいのがあまり好きじゃないのはわかっているが、元気いっぱいで来られるとこの表情を見ることが出来ないからな。

呼び出すときは堅苦しく行きたい。そして感謝を盛大に伝えていきたい。

「女神様来てくれてありがとうございます。こっちも少し変わったことがあったので報告もあるのですが、女神様の方からお話しますか?」

「いいえ、ここは女神の力を証明するために後から話しましょう! ふふふ、神の力をもってすればなんでも可能ってことを教えてあげましょう! そっちからいいよ!」

ドヤ女神様いただきました。相変わらず口調が定まらないけど愛嬌あるからおっけ。女神の力がどんなもんなのか俺に知らしめてくれるらしい。ロリ達に会わせてくれた奇跡以上に凄い事なんてあるのだろうか。

もし日本にいるときに大金持ちにしてもらったり特殊能力とかもらったとしても、幼女と結婚できるという状況をもらうほうがはるかに難しいと俺は思っているからな。神の力、期待してしまうぜ。

というわけでこちらの情報を話していくことにする。

「というわけで異世界をループさせてる奴がいるみたいです。理由はわかりませんが世界を救いたいという気持ちから魔王を討伐するまで何度も繰り返してるようですよ」

「……」

「ほかにも呪いを簡単に解除しちゃうへんなおじいちゃんとかも暗躍しているそうで、もしかしたら放っておいても世界が救われる可能性もあるかもしれません。私がどういう行動取るかわかりませんが」

「……」

俺の話を聞いている女神様は真顔で何も反応を示さなかったので若干不安になってきた。この女神様もしかしてあんまり良い作戦を思いつかなかったとかかな。なんだかんだでドジ属性も持ってそうな女神様だ、充分ありうる。

というか世界を救うのにループさせる以上にいい方法があるのかって話でもある。チート能力といえど本当にチートすぎてどうしようもないわ。

「というわけです。女神様の方はどんな方法なんですか? 女神様の力とやらを教えていただけると嬉しいのですが」

「……知らない」

「ええと?」

「そんな力知らないもん! やだー! そんな世界ループするような力与えてないもん!」

「いや女神様がやったんでしょ。この世界の管轄って自分で言ってたじゃないですか」

「知らないですー。私は確かに『並行』ってスキルを与えましたけどそんな能力だとは知らないんですー」

「子どもか」

どうやら女神様、人に能力を与えるのもだいぶてきとうやってたらしい。飛ばすところも呼ばれてるところへぽい、能力もなんかそれっぽいのをぽい、そして人が向かった世界も放置。

大丈夫か女神様のいるところ。この女神様クビにした方がいいんじゃないか。よく今まで何も問題が起きなかったと本気で思うくらいに心配してしまう。

逆に言えばそれくらい放置していても世界は維持できるってことでもあるけど。魔王によって滅ぼされることは本当に稀なんだろうと思わされる。こんなにダメな女神様でも管理任されるだけあるわ。

「ふー、ふー」

「どうどう、落ち着いて女神様。とりあえず女神様の案を聞かせてくださいよ。どんなにポンコツで目も当てられないような作戦だとしても別に馬鹿にしたりしませんから」

「それ既に馬鹿にしてるよね!? 信者一号はどうして敬ったり馬鹿にしたりしてくるのかな!? それなのに感謝の気持ちが一向に減ってないのも驚きなんだけど!」

「そりゃあ女神様大好きですから」

「は、はい」

とりあえずほめておけば女神様は落ち着くので褒めておく。フラフィー以上に扱いやすい女神様で本当に助かる。こういう感謝も伝わって俺の感謝は絶対に減ることは無い。

もしフラフィーなら流血沙汰、イリスなら遊園地沙汰、クロエなら口に出せないようなことをしてくるだろう。あかねはたぶんひたすらに面倒見させてくるくらい。

「ごほん。私の世界救済計画は信者一号を過去に送って魔王の復活を阻止してもらおうというものです」

「シオリのと一緒じゃねえか」

「ち、違います! その血迷った子羊が私の案をパクったんです!」

違います違いますと俺に言い訳を並べ立てまくる女神様が非常に愛おしい。信仰度合い上がるぜ。というか実際に別物だろうと思う。スキルで出来る限界、女神様の限界、どっちが上かと問われれば当然女神様だろうから。

つまりこれはシオリの案に乗らずに女神様の案に乗っかって行動するのがいいのではないだろうか。シオリの事を完全に信用できているわけでもなし、女神の本気の力を思いっきり受けてみるのも一興だろう。

ただ、女神様がドジした場合はどうなるかわからないが。能力的には女神様だが、実績的にはシオリの方が上だからな。というか血迷った子羊って仮にも神が言っちゃだめだろ。自然すぎて突っ込み遅れたわ。

「女神様のは副作用というか、反動はあるんですか?」

「私は女神、そんなものありません。と言っても信者一号がいる世界なので、戻せるのは召喚した後までですが。あ、やったことないので記憶が残るかは不明です」

「まじでシオリと一緒じゃねえか」

「ち、違います……」

自分でもほとんど一緒だと思っているのがその勢いのなくなった返事からもうかがえる。

「女神様のその過去に戻す力って時間制限ありますか? 世界崩壊直前で過去に戻ってもう一度世界をやり直すみたいな方法って意味ですけど」

「そ、それは出来れば避けてほしいかなーなんて」

ちょっと焦った感じで女神様は言う。

「ほら、前も言ったじゃないですか。世界が滅びると神の力を没収されちゃうって。あんまり崩壊間近まで待ってると私の威厳ってやつがね? 神の力失う前になくなるよねっていうね?」

「女神様に威厳ってあったんですか?」

「ありますよ!? いっぱい部下がいるんですからね!? 適度に手を抜く方法とかサボり方とか色々教えてこれでも慕われてるんですからね!?」

だめだこの女神。慕われる要素しかない。めちゃくちゃ慕われる代わりに威厳というものが失墜している。信用とカリスマはあるけどフランクに接してしまう友達系上司だわ。

「ちなみに今まで世界を崩壊させた神様はいるんですか?」

「……過去に一人だけ」

いるのか。神様の世界がどのくらいの長さあるのか知らないけど、それでたった一人。どんだけサボりまくってたらそんな状態にもっていけるのだろうか。このサボり癖のある女神様ですら今こうやってどうにかしようと頑張っていると言うのに。

いや俺が報告しなかったら世界滅びて……シオリが滅びないようにしてるからセーフか? どの世界も基本的にギリギリ耐えられるようになってるのかもしれないな。

勇者召喚とか日常的に行われているみたいだし全然ありうる話な気がしてきた。

「そ、それで信者一号は世界を救ってくれるんですよね!? お願いします!」

女神様は教会の床に正座して頭を下げてくる。今までずっと浮いていたから視線が下に向くのに非常に違和感を感じると言うか申し訳ないというか悲しい気持ちになると言うか。

そんな女神様に俺が言うことは決まっていた。

「フラフィーと世界崩壊直前まで遊んでていいですか?」

「ぶれませんね!?」

だってフラフィーとずっと一緒にいるって約束したし。

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