呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る
第145話 泥沼
隔離された結界の中で俺とあかねは自分たちの部屋を目指していた。
「通信機もやっぱり使えないか」
通信機に魔力を通してみても発動する気配がない。しかし魔法自体は使えるみたいなので、物理的にも魔法的にもこの結界が内と外を切り離しているんだろう。
外に出ようとしてみたがそれも無駄に終わり、結界に触れると弾かれる仕様になっていた。中からはこうなっているが外から触るとどうなるのだろうか。それとも人がいなくなってるから外とは別の空間なのか?
というか結界を張られた時点で問答無用で攻撃されると思っていたが、何故かまだ俺たちは無事だった。
「うーん、ユウキ君以外にも誰かいるみたいだね」
あかねはぼやきつつあたりを探っていた。意志疎通のスキルで位置を探ったりしていたことはあったが、この中ではその場所の特定が難しいらしい。
気配を消していると探れないか、もしくは場所がばれないようなスキルを使っているか。どちらにせよ俺達に出来ることは何も変わらないけど。
俺も透視を発動しながら歩いてはいるが、結界の魔力が強すぎるためまともに壁を貫通して見る事すら出来ない。
警戒しながら進み、本来であれば俺たちが泊まっている部屋の前まで来るとそこには先客がいた。女戦士風の衣装を身にまとい、騎士のように直立した姿勢で虚空を見つめている。
しかし俺たちが上がってくるのに気づくと笑顔を見せて声をかけてくる。
「おおキミヒトにあかね! よく来てくれた! ユウキの言うとおりだったな!」
そこにいたのはアマンダだった。前に会った時のそのままだったが、アマンダからは敵意は全くと良いほど感じず、むしろ友好的な雰囲気を感じ取れた。
「アマンダか、これどういう状況?」
「なーに、私が積極的になったらユウキが私にも興味を持つようになってくれてな! 質問されたからキミヒト達の事を話したんだ! そしたら話してみたいって言い始めてな!」
アマンダは楽しそうに喋っているがこっちとしては驚きを隠せない。あれ、俺達ユウキに会いたくないって言ったはずなんだけど聞いてなかったかなこの子は。
「キミヒトもあかねも会いたくないって言ってたから話し合いだけならって条件で場所を教えておいたぞ! それなら問題ないだろう? 私からも改めてお礼を言いたかったしな!」
「大ありだばかやろう」
「アマンダさんがここまで脳筋だったとは思わなかったなぁ」
脳筋というか話を理解していなかったというか、逆に頭いいだろと思わせられるふざけっぷりだ。感謝してくれるのは嬉しいがこんなことになるなら完全に口封じしておいた方がよかったかもしれない。
ドヤ顔で語るアマンダにめちゃくちゃキレたいところだが、やっちまったもんはもうどうしようもない。切り替えていこう、すぐさまユウキに攻撃されないところを見ると何か策があるのかもしれないし。
もしも本当に話し合いだけで済ませられるならこっちとしても願ったり叶ったりということにして前に進もう。
「それでユウキとやらはどこにいるんだ?」
「この部屋の中だ」
アマンダが指したのは俺達が泊まっていた部屋の反対側だった。実際の宿屋には存在しない部屋なので、この結界の中は外の世界とは少し違っているようだ。結界の中をある程度いじれるとか便利そうだな。
だが場所が分かれば全力で透視を使わせてもらおう。かなり疲れるから本気の発動は控えていたが、短時間で良いならこの魔力に包まれた中でも透視出来る。
中をのぞいてみると、確かにそこには一人の青年がいた。そしてその姿をぼんやりとだが認識した瞬間激しい頭痛に襲われた。
「ぐ……」
「キミヒト君? 大丈夫?」
あかねが俺に声をかけ背中に手を置いてくれて少し気が楽になる。しかしこの頭痛のやばさは明らかに呪い関係の物だ。
「はぁ……はぁ……」
「ちょっとキミヒト君! 耐えて!」
「あ? ああ、なんだ、これ?」
気づけば剣に手が伸びていた。あかねの声で我に返り不屈を発動させる。常時発動している不屈だが、最近は常時発動だけではなく意識的に強く発動しないと耐えられないものが多くなってきている気がする。
いや、それも全部呪い関係か。おちつけ、落ち着け。
剣から手を放し深呼吸して酸素を取り入れる。自我を失いそうな感覚は慣れないし、もし不屈を発動する間もなく自我を失ったらどうなってしまうのか。
「おい、お前たちどうした?」
「アマンダさん、絶対に扉開けないでね。絶対に戦闘になるから」
「そんなまさか。ユウキは善人を絵に描いたような人物だぞ? それとも何かあるのか?」
「ああそうだよ。ユウキが善人であっても関係ない、きっと俺達を見たら襲い掛かって来るだろうよ」
アマンダは怪訝な顔をして全く信じていなさそうだったが確信を持って言える。ユウキは俺達を見たら確実にショウと同じように襲い掛かって来ると。
俺がユウキを見て殺意に捕らわれたのは何故かはわからない。もしも九番を殺した影響でその呪いが移ったのなら普通ならあかねを殺そうとするだろう。
しかし俺はユウキを殺そうとしている。
もしかしたら敵対するように仕向けられた呪い、なんだろうか? この状態でショウに会ったらどうなる? 呪いが解けているからあかねと同じように殺意を持たずにいられるか?
それとも俺達がターゲットだったから、そのまま敵対関係を続けているという形になっているのか? わからん、これ以上は考えたら泥沼に入りそうだ。
俺は第一グループの勇者達が憎くなるような呪いに改めてかかった、そして第一グループの連中は俺達を殺そうとしている、これだけ分かれば今は充分だろう。
「アマンダ、騒がしいけど来たのかな?」
扉越しから男の声が聴こえる。これがユウキだろう。アマンダに語り掛ける声は優しい声で、イケメンなんだろうなという気持ちになる。いや実際に女神さまに色々といじって貰ってるからイケメンなのだろうけど。
「ああ来てくれたぞ。でも扉は開けないで欲しいそうだからそのままにしてくれ」
「そうかい? でも殺気を向けられたからには直接顔を見てみたいね」
「ちょ、ユウキ! 話が違う!」
アマンダは扉を押さえようとするがそのかいむなしく扉は開けられてしまった。
「通信機もやっぱり使えないか」
通信機に魔力を通してみても発動する気配がない。しかし魔法自体は使えるみたいなので、物理的にも魔法的にもこの結界が内と外を切り離しているんだろう。
外に出ようとしてみたがそれも無駄に終わり、結界に触れると弾かれる仕様になっていた。中からはこうなっているが外から触るとどうなるのだろうか。それとも人がいなくなってるから外とは別の空間なのか?
というか結界を張られた時点で問答無用で攻撃されると思っていたが、何故かまだ俺たちは無事だった。
「うーん、ユウキ君以外にも誰かいるみたいだね」
あかねはぼやきつつあたりを探っていた。意志疎通のスキルで位置を探ったりしていたことはあったが、この中ではその場所の特定が難しいらしい。
気配を消していると探れないか、もしくは場所がばれないようなスキルを使っているか。どちらにせよ俺達に出来ることは何も変わらないけど。
俺も透視を発動しながら歩いてはいるが、結界の魔力が強すぎるためまともに壁を貫通して見る事すら出来ない。
警戒しながら進み、本来であれば俺たちが泊まっている部屋の前まで来るとそこには先客がいた。女戦士風の衣装を身にまとい、騎士のように直立した姿勢で虚空を見つめている。
しかし俺たちが上がってくるのに気づくと笑顔を見せて声をかけてくる。
「おおキミヒトにあかね! よく来てくれた! ユウキの言うとおりだったな!」
そこにいたのはアマンダだった。前に会った時のそのままだったが、アマンダからは敵意は全くと良いほど感じず、むしろ友好的な雰囲気を感じ取れた。
「アマンダか、これどういう状況?」
「なーに、私が積極的になったらユウキが私にも興味を持つようになってくれてな! 質問されたからキミヒト達の事を話したんだ! そしたら話してみたいって言い始めてな!」
アマンダは楽しそうに喋っているがこっちとしては驚きを隠せない。あれ、俺達ユウキに会いたくないって言ったはずなんだけど聞いてなかったかなこの子は。
「キミヒトもあかねも会いたくないって言ってたから話し合いだけならって条件で場所を教えておいたぞ! それなら問題ないだろう? 私からも改めてお礼を言いたかったしな!」
「大ありだばかやろう」
「アマンダさんがここまで脳筋だったとは思わなかったなぁ」
脳筋というか話を理解していなかったというか、逆に頭いいだろと思わせられるふざけっぷりだ。感謝してくれるのは嬉しいがこんなことになるなら完全に口封じしておいた方がよかったかもしれない。
ドヤ顔で語るアマンダにめちゃくちゃキレたいところだが、やっちまったもんはもうどうしようもない。切り替えていこう、すぐさまユウキに攻撃されないところを見ると何か策があるのかもしれないし。
もしも本当に話し合いだけで済ませられるならこっちとしても願ったり叶ったりということにして前に進もう。
「それでユウキとやらはどこにいるんだ?」
「この部屋の中だ」
アマンダが指したのは俺達が泊まっていた部屋の反対側だった。実際の宿屋には存在しない部屋なので、この結界の中は外の世界とは少し違っているようだ。結界の中をある程度いじれるとか便利そうだな。
だが場所が分かれば全力で透視を使わせてもらおう。かなり疲れるから本気の発動は控えていたが、短時間で良いならこの魔力に包まれた中でも透視出来る。
中をのぞいてみると、確かにそこには一人の青年がいた。そしてその姿をぼんやりとだが認識した瞬間激しい頭痛に襲われた。
「ぐ……」
「キミヒト君? 大丈夫?」
あかねが俺に声をかけ背中に手を置いてくれて少し気が楽になる。しかしこの頭痛のやばさは明らかに呪い関係の物だ。
「はぁ……はぁ……」
「ちょっとキミヒト君! 耐えて!」
「あ? ああ、なんだ、これ?」
気づけば剣に手が伸びていた。あかねの声で我に返り不屈を発動させる。常時発動している不屈だが、最近は常時発動だけではなく意識的に強く発動しないと耐えられないものが多くなってきている気がする。
いや、それも全部呪い関係か。おちつけ、落ち着け。
剣から手を放し深呼吸して酸素を取り入れる。自我を失いそうな感覚は慣れないし、もし不屈を発動する間もなく自我を失ったらどうなってしまうのか。
「おい、お前たちどうした?」
「アマンダさん、絶対に扉開けないでね。絶対に戦闘になるから」
「そんなまさか。ユウキは善人を絵に描いたような人物だぞ? それとも何かあるのか?」
「ああそうだよ。ユウキが善人であっても関係ない、きっと俺達を見たら襲い掛かって来るだろうよ」
アマンダは怪訝な顔をして全く信じていなさそうだったが確信を持って言える。ユウキは俺達を見たら確実にショウと同じように襲い掛かって来ると。
俺がユウキを見て殺意に捕らわれたのは何故かはわからない。もしも九番を殺した影響でその呪いが移ったのなら普通ならあかねを殺そうとするだろう。
しかし俺はユウキを殺そうとしている。
もしかしたら敵対するように仕向けられた呪い、なんだろうか? この状態でショウに会ったらどうなる? 呪いが解けているからあかねと同じように殺意を持たずにいられるか?
それとも俺達がターゲットだったから、そのまま敵対関係を続けているという形になっているのか? わからん、これ以上は考えたら泥沼に入りそうだ。
俺は第一グループの勇者達が憎くなるような呪いに改めてかかった、そして第一グループの連中は俺達を殺そうとしている、これだけ分かれば今は充分だろう。
「アマンダ、騒がしいけど来たのかな?」
扉越しから男の声が聴こえる。これがユウキだろう。アマンダに語り掛ける声は優しい声で、イケメンなんだろうなという気持ちになる。いや実際に女神さまに色々といじって貰ってるからイケメンなのだろうけど。
「ああ来てくれたぞ。でも扉は開けないで欲しいそうだからそのままにしてくれ」
「そうかい? でも殺気を向けられたからには直接顔を見てみたいね」
「ちょ、ユウキ! 話が違う!」
アマンダは扉を押さえようとするがそのかいむなしく扉は開けられてしまった。
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