呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第141話 脅迫スキル

そこにいたのはどう見ても女戦士風の装備を身にまとった屈強そうな冒険者だった。見た目からもオーラが出てそうな雰囲気でたぶん実際に強いんだろう。

しかし俺とあかね相手に実力行使か。良いだろう、その挑戦受けて立とうじゃないか。見た感じこの世界の住人だがその自信はどこからくるのか、鑑定だ。

勇者や相当な実力者だったりすると弾かれる鑑定だが今回はすんなりと成功した。そこでわかったのは名前とステータス。

名前はアマンダ、ステータスも軒並み高いがそれは全て攻撃力に特化しているという見た目まんまの戦士のステータスだ。俺とあかねを無理やり連れて行くには足りないだろうが、きっと言う事を聞くと信じているんだろう。

だが答えは当然ノーだ。

あかねと一瞬だけ視線を交わしこちらの意図を伝える。そう、あの時と一緒だ。こういう高圧的な態度取られるといたずら心がむくむくと育ってきちゃうよね。こっちの実力行使を見せてやるぜ。

「いきなり来いと言われても困るぜアマンダちゃん。こっちにも色々と都合があるからな」

俺が名前を呼んでみるとギョっとした顔をされる。そら初対面の奴にいきなり名前言われたらびっくりするよな。さらにちゃん付けという気持ち悪さ。だからこういったぎりぎり話が通じるかどうかの奴には効果的だったりする。

警戒心が強すぎるやつだとこれ以上の話し合いが出来なかったりするが、そこはこっちの腕の見せ所でどうにかできる。というかする。

「ちゃんづけするな! いやそもそもなんで名前を知って……貴様鑑定持ちか!」

「鑑定は持ってないよ。名前を知ってるのは……まぁ色々とね」

鑑定は持っていないが鑑定は使える。嘘を言っているわけではないので、もし嘘を判定出来るスキルでも持っていたとしてもバレる事はない。むしろより混乱する事必須だろう。

ユウキというたぶん勇者が知り合いにいるのならこっちのスキルがとても怪しく感じてくるはずだ。まともにやり合う気はないんだすまんな。

「それでアマンダ、なんでついてきて欲しいんだよ」

「馴れ馴れしいなお前。どうやら実力行使がお望みらしいな」

女戦士、抜刀。気短けぇ。ここ宿屋なんですけど!

「アマンダさん、そういうことするからアマゾネス呼ばわりされるんですよ」

「な! 貴様! 何故それを知っている!?」

あかねの言葉にアマンダはうろたえ始める。情緒不安定すぎるしこんなにあからさまに揺さぶりにかかってくれると今まで苦労してきたんだろうなと変な同情心が沸いてくるよ。

ちょろいというか考えが足りないというか、騙されやすそう。

「私は何でも知っています……。アマンダさんが小さい頃想いを寄せていた男の子にアマゾネスと呼ばれショックを受けてしまったあの日の事も。親友だった女の子にその男の子を取られてしまったことも」

「やめろ! 古傷をえぐるんじゃない!」

「アマンダ……可哀想にな」

「同情するのもやめろ!?」

どうやらあかねはアマンダのトラウマ的なものを引っ張り出してきたらしい。これもう意思疎通じゃなくて脅迫スキルでいいよ。

ピンポイントで人のトラウマを見ることが出来るとか人として最低の行為と言っても過言ではないだろう。やっててなんだけどまじで最低すぎるわ。

「アマンダさん、おちついて。男の子に悪気はなかったんですよ。ただ強すぎるアマンダさんに嫉妬していただけで」

「……そんなことわかってる。だがあの時の私には女としての自分を完全に否定されたとしか思えなかったんだ。ただ、認めてほしくて強くなっただけなのに」

アマンダは殺意を引っ込めて昔語りを初めてしまった。そしてあかねはアマンダを優しく甘やかす。

そう、今回は前回の門番の時みたくやり過ごすだけではなくこちらに害が無いように諭す必要がある。だからあかねにはアマンダを無力化しつつもうこっちにちょっかいをかけてこないようにしてもらおうというわけだ。

具体的には俺達を見なかった事にしてほしい。ちょっと視線かわしただけでここまで伝わるとあかねもクズなんだなって心の底から思うよ。

「ほらアマンダさん、涙を拭いて。今のユウキさんならアマンダさんより強いしちゃんと女の子扱いしてくれているんでしょう? 元気をだして」

「そう、なのかな。私は他のみんなに比べて男勝りな性格だしこんな屈強な肉体だ。女の子らしさなんてない」

「立てよアマンダ。今のお前、最高に女の子らしい悩みを抱えているぜ」

「そうか……?」

女としての自信を失っているなら、そのギャップを自分で自覚させてやればいい。それがこれからアマンダの武器になるだろう。俺とあかねはアマンダに幸せになってもらいたい。形だけは。

そして俺達もそれにあやからせてもらって平和にこの街を出ていきたい。

「そうだよアマンダさん。ユウキさんはアマンダさんの事をちゃんと女の子として観てますよ。かばってくれたり荷物持ってくれたり優しくしてくれているでしょう? 他のみんなと同じように」

「確かに、そうだな……。ユウキは誰にでも優しい、それがローラでもキャシーでも、私でも。そうか、そうだよな。ありがとう、なんだか気持ちが吹っ切れたよ」

「それは良かった。今後は遠慮したりせずちゃんと自分をアピールしていくんだぞ。ユウキとやらもアマンダの魅力に気付いてくれるはずだ。頑張れ」

「うんうん、私たちも応援してるからね。私たちはアマンダさんの味方だよ!」

「くっ、お前たち。初めて会った私のためにこんなに親身になってくれるなんて……疑って悪かった。本当にすまない。また相談に乗ってくれ」

そういってアマンダは俺達に頭を下げて帰っていった。何を疑われていたのかはさっぱりわからなかったが一難去ったのは間違いないのであかねと共にため息を吐く。

ちょろくてよかった。

「なんとかなったな」

「キミヒト君、一つ言っていい?」

「なんだよ」

「私これクセになりそう」

ガチクズになる気満々やん。

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