呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第115話 気が抜ける

「この忙しい時に……近くの探索者たちを向かわせろ!」

慌ただしく伝令とやりとりをしだしダンジョンの対策に関しても同時に進めていく。しかしこれは間に合うのだろうか。魔法使いを集めて薬草のダンジョンの閉鎖、今来ている謎の襲撃者の対処。

強い人たちがいれば解決するだろうが、高ランクの探索者なんてロンド以外に見たことないしどのくらいいるのだろうか?

ダンジョンの方じゃ役に立たないし勇者の可能性があるなら俺たちが出向いても良いだろう。有事の際に出動することになっていたが今まさに有事だわ。

「俺たちが行きます」

「……助かる。増援を送るからそれまでなんとか持ちこたえてくれ。頼んだぞ!」

俺がそういうとジーギスムンドは了承した。俺たちは適任だけどダンジョンの方で依頼していた手前言い出しづらかったのだろう。後に言うことになるにしても熟練の探索者たちで何とかしたかったのかもしれない。

できれば温存戦力として残しておきたいが、逐次投入している場合でもなさそうだと判断したのだろう。一気に片付けたほうが早いし時間がないのも間違いない。

俺たちは執務室から出て現場に向かって走っていく。

「もしかしたら勇者かもしれん」

「……ねぇ、魔物連れて強い人間ってあかねさんじゃないですよね?」

「違うはずだ。あかねは知性ある魔物は操れないって言っていたから外の魔物は襲われないように出来たとしても操れはしないはずだ」

もしあかねの場合だったら全てアンデットかそこまで強くない魔物のはずだ。しかし警備の人は強力な魔物で手が出せないと言っていた。

操られているという可能性もなくはないが、あかねは一度呪いを解いているから悪意のある人物に捕まったりもしないだろう。そのためのスキルだしそうそう問題が起こるとも思えない。

やってきた方向も王都のある方向じゃないし違うと思っていいだろう。つまりもし勇者だったら相当広範囲に移動してるとも言えるけども。

「キミヒト、勇者だったらどうする?」

「とりあえず捕獲かなぁ」

俺の不屈で対処できたらそれでいいけど、俺が離れた場合はすぐに効果が切れることはわかっている。となると不屈で洗脳を解くのは現実的じゃないのであかねが戻ってくる三か月後まで放置という手を取ることなる。

その間この街を出て魔王の事探しに行くなら相当かわいそうなことになるな? 洗脳解ければ楽だったんだけどな。あかねと入れ違いとはタイミングが悪すぎた。

現場についてみるとそこは思ったよりも激しい戦闘が行われていた。街の入口が閉鎖されているので守衛室みたいなところから外に出たが街の人たちと思われる重症者がそこかしこにいる。

ヒーラーが回復をしているが全然追いついていない。

「かなり悲惨だな。クロエ、回復してやってくれるか? 俺たちは食い止める」

「わかったわ。気を付けて」

二手に分かれ魔物たちの相対する。一緒にいるという人間の姿は見当たらないがそれならそれで魔物を倒すだけなので簡単だ。

フラフィーと共に飛び出し近くにいる魔物に攻撃を仕掛ける。魔物の種類はそれほど多くはなく、この近辺の魔物ばかりで本来は強くない魔物ばかりのはずだった。

しかしその動きは素早く攻撃力も非常に高い。フラフィーは盾を構えて魔物同士をぶつけるように受け流し敵のヘイトを良い感じに稼いでいる。

俺たちが来るまでにそれなりに駆除されいていたようで残っている魔物の数はそこまで多くはない。これなら俺達だけでも充分やれる。襲撃からどれくらい時間が経ってるのかはわからないがだいぶ強いな守衛の人々。

俺は負傷した人たちを襲おうとしている魔物に向かって剣を振り下ろす。

「大丈夫か?」

「すまん、助かった。っておい! 後ろ!」

男が声をあげるが俺を襲うとしていた魔物は氷の塊に貫かれ即死する。イリスの援護射撃もあり人を逃がす時間くらいは稼げそうだ。

「ここは俺たちが何とかする。負傷者を引き連れて下がっていてくれ」

男はうなずき、近くにいた負傷者を引き連れて後ろに下がっていった。あたりには俺達を警戒し一気に襲い掛かろうとしている魔物たちがいるが脅威は感じない。

「なんかいい感じの炎の壁。ファイアウォール」

地面からせりあがるように炎が噴き出す。あたり一面を火の海にしそうだったが、魔物を燃やしたあたりで炎は消失した。相変わらず加減が上手いが呪文がテキトウすぎて気が抜ける。

魔物を一気に片付け魔法の範囲に入らなかった魔物は普通に倒し、あたりを一掃することに成功した。イリス一人いれば相当な防衛が可能になるよなほんと。

強い魔物と聞いていたがたぶんランク的にはBに届くかどうかくらいの強さだったと思う。俺でなんとかなる強さで良かったわ、どうにもならなかったらどうしようかと。

「見つけた見つけた」

するとそんな声と共に一人の青年が姿を現した。見た目は黒髪黒目、どう見ても日本人で王都で見たことがある人物だった。

          

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