呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第106話 クロエ視点 その二

「お姉ちゃんもフラフィーも私より先にキミヒトといちゃいちゃした。私が最初にキミヒトにアプローチしてたのに」

イリスは私とフラフィーに拗ねた視線を向けてくる。

「だから今度は私が一番キミヒトと一緒にいる。夜もずっと一緒にいる。別に夜這いとかじゃなくても一緒にいたい」

イリスは駄々っ子のようにそう宣言する。しかしイリスと一緒に寝ていたらキミヒトは手を出してしまうだろう。イリスも絶対誘惑するだろうし。

そうするとキミヒトの活動に支障が出るだろうし、イリス以外とする機会がめっきり減ってしまう。

「イリス、気持ちはわかるけど聞き分けなさい。イリスはキミヒトとデートもしたでしょう?」

「やだ。お姉ちゃんは最初にした。ずるい」

「それは話し合って決めたでしょう?」

「あの、私その話し合い知らないんですが……」

フラフィーが何か言っているが気にしないことにしておく。あの時はイリスと話して結論が出ていたはずだった。イリスもそれを了承して送り出してくれていたのにそれを今更。

「確かにお姉ちゃんに任せた。でもそれとこれとは別」

「イリス、別ってどういうこと? 詳しく教えてもらえるかしら」

「タイミングはお姉ちゃんに任せたよ。でもまさか私も眠らされるとは思わなかった。お姉ちゃんなら私も一緒に混ぜる事だってできたはず」

「……」

その通りだ。キミヒトはかたくなにしようとしなかったけれど、私があれだけアプローチをかけた後にイリスも連れてきたら一緒に可愛がってくれたことは間違いない。

それでも私は二人だけでしたかったからイリスを眠らせたままにしておいた。たまには私も思いっきり甘えてみたかったから。

イリスはそこを敏感に感じ取っていたから今こうやって言ってきているのだろう。でもだからと言ってここでイリスの言い分を飲むわけにはいかない。

「反論できない。お姉ちゃんはキミヒトの初めてになりたいからみんなを眠らせたんだ」

「そうね。私も最初は二人きりでしたかったもの。イリスだってそうでしょう、二人きりの方が愛を確かめ合えるってわかるでしょう?」

「それはそう。でも最初は別に、三人でも、良かった……」

「すいません私のことも数えてもらって良いですか?」

イリスはうつむいて少し悲しそうにしていた。ああそうか、いつも一緒にいたから忘れていたけど、イリスは寂しがりやだったわね。

いつも何をするにも二人で一緒だった。だからキミヒトとするときも一緒にしたかった、一人だけ仲間外れにされた寂しさを抱えていたのかもしれない。

「そっか、ごめんねイリス。お姉ちゃん自分の事ばっかりだったわ」

「お姉ちゃんはいつも私の事考えてくれてるけど、男の事で妥協しないのは初めて知った」

私とイリスはまっすぐ見つめあい、言葉を交わす。同じ顔をしている姉妹だが、最後にこうやって見つめ合ったのはいつだっただろうか。

ちゃんと自分の気持ちを伝えられるようになって偉いと思っていたけど、自分の気持ちをちゃんと言えてないのは私も一緒だったかな。

「だから今度は私を優遇してほしい」

「それはだめ。キミヒトの事考えるならちゃんと寝かせてあげましょう?」

「不遇というならたぶん私が一番ですよ……」

「お姉ちゃんはキミヒトを取られたくないだけ。愛は弱肉強食、あかねが言ってた」

あかねは危険人物ね。イリスに変なことを吹き込んでいたなんて知らなかったわ。変な言葉づかいもきっとあかねが原因、面白い子だけどちょっと言っておいた方がいいかもしれない。

「イリス、あかねの言うことは真に受けちゃだめよ」

「重要なのはそっちじゃない。キミヒトの事」

「……私だってたまにはキミヒトと二人きりになりたいのよ」

「お姉ちゃんはいつも暗躍する。このみんなで夜這いしない会議もきっと何かして二人きりになる作戦があるはず」

流石私の妹。よくわかっている。夜這いはしないと言ったが夜に部屋を訪ねてはいけないとは言っていないから行こうとしていました。

場合によってはイリスも誘って行こうと思っていたけどこの作戦は失敗かしらね。それならキミヒトに誘ってもらうだけなんだけど。

「ふふ、流石私の妹ね。完敗よ」

「なら夜這いかけてもいいよね」

「……仕方ないわね。そんなに言うなら最終手段を取ることにするわ」

「お姉ちゃん、何する気?」

今キミヒトは一人部屋を使っている。だからみんなこぞって行こうとしているわけで。たぶんキミヒトはあえて一人部屋を使っているんだろうけどここまでみんなの関係がこじれたならもう逆にみんなで寝てしまえばいい。

流石に三人相手にやろうとはキミヒトも思わないはず……よね?

「なんだかクロエさんが墓穴掘ってる気がします」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品