呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第92話 お互いに良い所しかない

「というかリーベンのとこからこっちにまで捜索命令が来てるとはな」

「タイミング的に魔界と一緒くらいだったわね。もしかしたらつながってるのかもしれないわ」

「あいつ、利用されてるだけな感じ」

そう、あのロリサキュバス……サッキュンとでも呼ぶか。サッキュンはあまりにも事情を知らなさすぎるしあまりにも弱すぎる。

サキュバスの特性でクロエの魅了をどうにか出来るとしても本気のクロエだったら束縛し続けることも出来るし、そこにイリスの魔法なんて食らえば一撃で死ぬ。

しかし捨てられたにしては連絡が来ていたのは驚きだな。通信していたと思われる宝石は背中に乗った時にさりげなく奪っておいたけど。

「あれが本来の姿だったのはいただけないが、あの感じならほっといても問題ないだろ」

「腹ペコで倒れるような子だしお金もなかったものね。キミヒトに免じて許してあげたわ」

「……やっぱり?」

「ええ、幼女の姿になった子を殺すのは気が引けたんでしょう? 脅威度は低いから別にいいわ」

「すまん」

「キミヒト、幼女に甘い。でも今回は許す」

サッキュンはこの二人を捕えようとはしていたけど害を加えようとはしていなかった。ただ本当に捕まえるだけのつもりだったんだと思う。最終的に向かう先が奴隷商って知っていたにも関わらず捕まえるだけとは甘すぎる考えだが。

今度出会ったときはその辺含めて脅してみようかな。さっきはあまりにも意表を突かれ過ぎてこっちの考えまで鈍っていたわ。俺がやらなきゃいけないことだったのに申し訳ないことをした。

次はハニートラップが来ても不屈で本気で耐えたり私情を挟まない様にしないといけないな。優先順位は俺の仲間たちだ。

「キミヒトさんがそういう人だってみんな知ってますし気負いすぎないでくださいね? いつも私たち守ろうと頑張ってくれるのは嬉しいですけどそれは私たちも一緒なんですから」

「そうよキミヒト、私たちも戦えるんだから頼っていいのよ」

「お姉ちゃんも私も、キミヒトより強い」

「そう、だったな」

俺が考えるのは良い。でもみんなに相談しないのは違うよな。これからもみんなと一緒にいるのに必要なのは俺の覚悟じゃない、俺たちの絆を確固たるものにすることだよな。

まじで頼りになるぜうちのロリ共は。

「ほら、最後の素材集めに行くんでしょ?」

「ああ。オーク狩りをしてイリスのために精力剤作らないとな」

「キミヒト、えっち」

俺たちはテントをたたみ目的通りに肉のダンジョンに向かう事にした。しかしこのケイブロット広すぎてほんと凄いな。全部でダンジョンいくつあるんだろうか。

オークが出現する肉のダンジョンはランクで言えばCランク。敵はそこそこ強いので完全な初心者では入る事すら出来ないが、水のダンジョンと同じ難易度設定にされている。

それは狩りやすさと地形が安定していることによるものだ。ダンジョンでは高台から魔法を打ちまくったり武器とか投てきしたりと狩りというより作業と化していると聞く。

食材という事もあり定期的に仕入れたい人たちがダンジョンの中にそういったポイントをいくつも作り安定供給することを可能にした。探索者は安定してお金が稼げる、料理店は安定して食材を確保出来る。

お互いに良い所しかない素晴らしい作戦と関係だ。

だが今回俺達が欲しいのは精力剤の元となるオークの睾丸。これもまたドロップ品とは違い死体が消える前に取り除かないといけない。めんどくさいから死体そのまま持っていく予定だけどな。

なので高台から攻撃するのではなく地面に降りて普通に狩らなければならない。

「そういや俺オーク生で見るの初めてだわ」

「そうなんですか? キミヒトさん強いから戦闘経験も豊富だと思ってました」

俺以外のみんなはオークと戦ったことがあるそうだ。クロエとイリスは普通に森の中で返り討ちにしたらしいしフラフィーに至ってはやっぱり食用だった。美味しいもんね。

ダンジョンの中に入っていくと、草原のような場所なのに上は岩肌があった。明かりは壁の所々に光る石が埋め込まれているようで視界に困る事はなさそう。

あたりを見回すと壁の上には弓を持った人や商人みたいな人もいる。食材採取に来てるって感じがよくわかるな。それに雰囲気もダンジョンっていうよりも牧場のようなそんな柔らかい雰囲気。

こんだけ人がいれば事故も起きづらいだろうし誰かが襲われててもすぐに助けられる。ダンジョンってこんなんで良いのか本当に。楽だからいいけども。

「君たち! ここに来るのは初めてかい? 肉が欲しいなら上から倒すと良い。使用料はいくらか取られるけどね」

中に足を踏み入れると親切な探索者が上から声をかけてくれた。

「親切にありがとうございます。でも肉が目的じゃないので下で戦わなきゃいけないんです。今度来た時に使わせてください」

「そうか、オークは結構強いけど君たちだけで大丈夫か?」

「やばそうだったら全力で助けを呼びます」

俺の装備はミスリル一色になっているからそれなりの実力がある事はわかるだろう。しかしどうしても俺たちのパーティは見た目からすると非常に弱く見えてしまうため、親切な探索者からしたら危なく見えたんだろう。

クロエとイリスは完全に魔法職の見た目だし武器を持ってるのは俺しかいないからな。盾持ちのフラフィーもいるけど壁として不遇に扱われているように見えなくもない。装備が上等だから良く見ればわかるけど。

心配して声かけてくれるとか良い人多すぎるんだよこの世界。

というわけで特に見どころもなく危ない所もなくオークを倒して死体を数体ゲットした。

本来なら水のダンジョンもこのくらいさくっと終わる予定だったのに精霊が亀食い散らかすという暴挙に出たせいで無駄に時間がかかったからな。広かったらめちゃくちゃ大変だっただろうなあのダンジョン。

というわけで素材が全部そろったので後はクエスト発注した人の所に持っていくだけで精力剤が手に入る事になる。楽しみだな。

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