呪いで常識を失ったのでロリと旅に出る

こが

第39話 片付けの基本は収納

「よーしみんな準備はいいかー!」

「うるさ」

「急に元気ですねキミヒトさん」

あかねとフラフィーが結託している気がしてならない。もしあかねがボーイズハントしたらフラフィーお前まじでめちゃくちゃいじり倒すからな覚悟しとけよ。

「はーいじゃあ荷物預かりまーす」

みんな最低限の回復アイテムと食料を持って、かさばるものを全て俺に預けてくる。収納は確かに便利だが、俺に何かあった場合不味いので少しはみんな持つようにしている。

するとあかねはすごい羨ましそうな目でこっちを見ていた。尊敬のまなざしのような気もするが欲深い目のため尊敬という感じではない。

「ずるい! なにそれ! 私も欲しい!」

「片付けの基本は収納だ。ゴミ屋敷を作り出したお前が収納スキル手に入れられると思うなよ」

「きえー!」

奇声を上げながら襲い掛かってきた。こいつ情緒不安定すぎるんだが。

「落ち着いてくださいあかねさん。キミヒトさん、教えてあげてください」

「しゃーねーなー」

頼まれたなら仕方がない。念じるとスキルポイントがあればスキルは思い浮かぶ。一覧としてずらっと出てくるが足りないものはよく見えなくなっている。そう伝えるがあかねは呆然とつぶやく。

「……ない」

「片付けの基本は収納だ。ゴミ屋敷を作り出したお前が収納スキル手に入れられると思うなよ」

「この人また言ったー!」

あかねがわめき出したが正論を言っているのは俺なので問題ない。というか俺が昨日寂しい思いをしたのはあかねのせいだから八つ当たりさせてもらっているだけともいう。

「あ、でも便利そうなのあった」

「ほう、言ってみろ」

「なんで上から目線!? まあいいけど。『ダンジョンテレポート』だって」

「勇者ってこんなのばっかなんですか? あれもレアスキルなんじゃ……?」

「そうね。でも一緒に行動するんだから便利で良いんじゃない?」

フラフィーはそれもそうかと納得した。うらやましがるというよりはただ単純に驚いていただけだった。物欲にまみれているあかねとは違うようだ。

名前からしてダンジョンでテレポートできるものなんだろう。範囲は不明だが、楽できるというのならばそれに越したことは無い。最高なのは行った事ある階層全てに行ける事だけどそこまでは求めない。

ていうかクロエは色々と詳しいな。そういえば王都でも自動人形だかの事知ってたっぽいしなんか色々ミステリアスで魅力が増していくな。はー可愛い。

「俺の収納とあかねのダンジョン移動スキルがあれば探索めっちゃ楽になるな。他の探索者に申し訳ないぜ」

「キミヒト、うそつき」

うん、イリスの言う通り申し訳ないなんて欠片も思っていません。やったぜラッキーしか思わん。しかしこのロリっ子どもは感情の機微に聡いな。ロリっ子どもって書くとロリ子どもみたいでよくわからん字面だな。

「んじゃー探索に行きますかー。名前はそのまんまミスリルの洞窟。つるはしとかは既に持ってるんでいりません」

探索者としての最低限のアイテムはもう持っている。屑鉄の探索の時に買ったのが使ってないでそのまま入っているだけともいう。なので外に出て遠足気分でダンジョンに向かう事にする。

「じゃあ私クエスト見てくるよ。討伐とかあったらついでに出来るし」

「頼むわ」

あかねは気配を消してささっと探索者ギルドの中に入っていった。そういえば納品するとランクあがるって言ってたけど他にもクエストとかあるのか。

というかナチュラルに気配消していくのびびるからやめろ。どんだけ人と関わりたくないんだよ。

「クエストは個人的に出してる人がいるようね。ギルド経由すればたくさんの人に見てもらえるから便利みたい。ランク上げるために納品するよりもお金もらえるからクエスト優先って人もいるみたいよ」

なるほど。ギルドに納品するとランクアップ分の手数料が引かれる。しかしクエストという形ならその手数料が無くなる。探索者がお金稼ぐ方法は納品以外にもちゃんとあるのね。

探索ランクを上げるとどこのダンジョンにも潜れるようになるし色々便利ではある。でもお金が欲しいだけなら納品のほうがお得と。ちゃんと出来てるんだな。

つくづく探索者に優しい街だな。

ちなみに俺達が行こうとしているミスリルの洞窟。ここは探索者ランクB以上のダンジョンだ。あかね以外はなり立てだが、あかねがAランクなので存分に利用させてもらう。

ランクの高いダンジョンには門番みたいな人がいて入る時にランクを確認される。ただ、高ランクがいる場合は平均ではなく一番高い人に合わせられる。

その場合で一番ランクが低い人が死んだ場合、高ランクの探索者はランクを下げられる。殺しはご法度だが、連れ込んで強奪はセーフ。これが世紀末だ。

しかし強奪した場合放置が普通なのでまず死ぬ。強奪して連れ帰り何度もそういう行いをしていると門番が確認しギルドに報告が行く。門番はパーティの雰囲気の確認もしている善良な人です。

そしてそういった汚名はずっと付きまとうのでギルドから管理されて野良でパーティを組めなくなるという寸法。カツアゲ防止の制度だと思っていい。

おかげでこの街の治安はかなりいい。低ランクに連れていってほしいと言われても死なれたくないから連れて行かない。お金もってそうな奴見かけても、必死に上げたランクが下がる恐れがあるから無理につれていかない。

もし駄々をこねてお金で解決して連れて行ったとしても門番に弾かれる。門番も買収されていて死人が出たら全員除名なんてことも平気で起こる。

ちなみにそれで駄々をこねてギルドで暴れた人がいたらしいが、ギルドマスターやその他の探索者にボコボコにされた。一人のために規則が厳しくなるくらいならその一人を消す。それが世紀末。

ちなみに逆に低ランクの人を高ランクの人がキャリーしても別に特典はない。そのため本当に死人を出さないためだけの制度になっている。

良い街やんけ。

それで今回は強化スケルトンすら倒せるなら問題ないとミスリルの洞窟に連れてきてもらった。あかねは役に立つ奴だなぁ。

「キミヒトさん、なんでこっち見てるんですか」

「可愛いなって」

「絶対そういう視線じゃなかったです」

軽口に耐性出来てきたな。あかねの悪い影響を受けているかもしれない。あかねはなんてことをしてくれるんだ。

ギルドの外で少し待っているとあかねが戻って来る。

「ミスリル欲しいって依頼あったよー。ゴンズさんって鍛冶屋の人のやつだからゲットしてきた」

「よくやった。流石あかねだな」

「……素直にほめられるのなんか嫌なんだけど」

若干引き気味なんだけどなんでだよ。

このミスリル納品依頼とクロエ用のミスリル、ついでにランクアップ用のミスリルとかドロップアイテムを回収すればばっちりだな。

「じゃあちょいと買い物してから行くか」

適当にお店に入って大量の食糧を買ってダンジョンに向かう。危なく買い忘れていくところだった。スライムフィッシュもちゃんと買えたのでロリっ子たちが満足気なのが微笑ましい。

この収納はどうやら時間が止まっているらしい。昨日のダンジョン攻略前だとどうだかわからないが、スキルレベルアップしたとかアナウンス聞こえたからそれのせいだろう。先に取っておいてよかったわ。

そう考えるとみんなの戦力も上がってるんだよな。どのくらい上がったのかはわからないけど楽しみだ。あと俺が最初から持っているスキルはどのくらい影響があるのか。

もしこれで変わっていくようなら、ダンジョン攻略してスキルをガンガン鍛えていくっていうのもありだな。

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