第109話　王都出発の朝

翌日、窓から差し込む朝日に照らされてアリーセは目を覚ました。
まだ、布団の中から出るのは少し辛い寒さが残る。

「やっぱりまだ寒いですね」

アリーセはベッドから起き上がると、いつものロングコートを羽織る。
そのまま、階段を降りてリビングへと向かった。

「おはようございます。まだ少し冷えますね」

リビングに入ると、既に仕事をしているロジェルが声をかけてくる。
今日も、その燕尾服にはしわ一つ無かった。

「おはよう。今日も早いのね」
「いえ、今日はこれでも遅い方でございます」

それでも、アリーセよりは早く起きているのだからいつ休んでいるのかの謎は未だに解けていない。

「食事にしましょう。ロジェルも一緒にどうですか？」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」

最近になって、ロジェルともだいぶ打ち解けてきた気がする。
こうして、二人で食事することも初めてでは無い。

朝食をしっかりと食べることは冒険者にとってはかなり大事なのではないだろうか。
なにせ、体が資本の商売なのである。

「これは、マリーナの食事ですね」
「ええ、今日も手伝って頂きました。本当に助かっています」

マリーナは元々料理が得意な方ではあったようだが、最近ではうちの料理人に教わっているためか、メキメキと料理の腕を上げていた。

これも、マリーナなりの努力なのだろう。
人間、適材適所というものがある。

アリーセにはアリーセの出来る事、マリーナにはマリーナの出来る事を。
そうやって、支え合って生きていけばいいのではないだろうか。

「「ごちそうさまでした」」

数十分が経過した頃、アリーセとロジェルは同じタイミングで食べ終わった。
これは、ロジェルがアリーセに食べるスピードを合わせているのだと思う。
細かい所まで気を遣えるのが完璧執事といわれる所以んなのだろう。

「では、そろそろ行きましょうか」

朝食を食べ終わったアリーセはロジェルに向かって言った。

「かしこまりました。準備して参ります」

ロジェルは食器類を片付けると、使用人室へと向かって言った。

アリーセも自室に戻り、準備を済ませる。
腰には二本の剣が帯刀されている。

「お待たせいたしました。参りましょうか」

ロジェルはいつもの燕尾服姿に一本の剣を帯刀していた。
相変わらず、綺麗に着こなすもんである。

「行ってらっしゃいませ」
「お姉ちゃん、気をつけてくださいね」

セシールとマリーナに見送ってくれる。

「いってきます」
「行って参ります。屋敷の事お願いします」

アリーセとロジェルはそう言うと、屋敷を後にするのであった。

そこから、約束の場所である侯爵家へと向かって歩みを進める。
今日はなんだか忙しい一日になりそうである。