金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第101話 領主代理

侯爵が再び紅茶を一口啜った。

「それで、私に頼みたい事というのは?」

アリーセ対面に座る侯爵に尋ねた。

「ああ、それだがな。入ってくれ」

侯爵が扉の外に向かって言った。
恐らく、誰か待機させていたのだろう。

「失礼致します」

その声と同時に応接間の扉が開かれた。
入ってきたのは、いかにも好青年といった感じの男性だった。
服装はそれなりに整っているので、名家の出といった所であろう。

「まあ、座ってくれたまえ」

その青年に、侯爵は自分の隣に座るように促した。
青年は、少し戸惑った様子を見せたが、侯爵が促したので侯爵の隣へ腰を下ろした。

「紹介しよう。ライナー君だ」

「お初にお目にかかります。ライナーと申します」

侯爵に紹介されたライナーという男は、軽く頭を下げた。

「アリーセ・ベートですわ」

アリーセもまたその会釈にこたえるように軽く頭を下げた。

「存じております。この王都であなたを知らない人はまずいないでしょう」

アリーセはいい意味でも悪い意味でも目立ち過ぎているのだ。
そりゃあ、噂も広がるだろう。

「悪名ってのは早く広がると言いますものね」

アリーセ自嘲気味に笑って見せた。

「いえ、そんなことは」

そんなに真面目にならなくてもいいだろうに。
まあ、一国の侯爵とSランク冒険者が居るこの空間で平然としていられるのは、あの国王陛下ぐらいだろう。

「で、彼はどういった?」

アリーセが切り出した。

「おお、彼をミスタンの街の領主代理を任せようと思ってな」

領主代理とは、領主がやむを得ない事情により長期間に渡って領地を離れる時に、立てられる役職である。
本来、領主というのは自分の領地に屋敷を構えてそこで生活するのが一般的である。
何か、用事がある時や招集がかかった時に王都にやってくるのである。

しかし、侯爵の場合はそうもいかない事情がある。
国の重役である侯爵は王都の屋敷でやらないといけない仕事がある。
その上、宰相までやるとなるとますます、自分の領地には帰れなくなることだろう。

ここで、領地代理の登場という訳である。
領地の統治を領主代理に任せるということだ。
その為、信用できる貴族がその領主代理に選ばれることが多かった。

「なるほどです。それもありですわね」

正直、ここで領主代理を立てるという侯爵の正しい判断だろう。

「ちなみに、ライナー君はヴォルフ伯爵のお孫さんだ」

「祖父がお世話になっております」

ヴォルフ伯爵はキムゼの街の領主である。
ここ、王都と迷宮都市を繋ぐ通り道に領地を持っている。
アリーセも迷宮都市に行く時にはお世話になった相手である。

「それなら、任せても安心ですわね」

あの伯爵にお孫さんがいるという話は聞いていた気がするが、まさかここで繋がることになるとは思わなかった。
ヴォルフ伯爵のお孫さんなら信頼できる。

「それで、まさか彼を紹介するためだけに呼んだのではないですよね?」

「流石、察しがいいな」

ここからが、侯爵のもう一つの頼みなのであった。

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