第90話　マリーナの朝食

翌朝、アリーセはいつもと変わらに朝を迎えていた。
一つ違うところがあるとしたら、妹がこの屋敷に住み始めたという所だろうか。

「寒いですわね」

最近になって、寒さが増してきている気がする。
布団から出るのも辛い季節になってきた。
アリーセは少し厚手のカーディガンを羽織ると、部屋を出た。

「あ、お姉ちゃんおはようございます」

「おはよう。早いのね」

マリーナは既に起きてキッチンに居た。
恐らく朝食の準備をしているのだろう。
マリーナはアリーセとは違い、料理も出来ると聞いている。

「朝ごはん食べますか？」

「ええ、いただきますわ」

そう言うと、アリーセは朝食を取ることにした。

「美味しいですね」

温かいスープが身に染みる。
普段は屋敷の料理人が作ったご飯なので当然ながら美味しいのだが、こういう家庭的な料理もたまにはいいものである。

「じゃあ、私も食べようかな」

マリーナも朝食を食べ始めた。
久しぶりの姉妹での食事である。

朝食を食べ終わった頃、ロジェルがアリーセの元にやって来た。

「アリーセお嬢様、ギルドマスターから書簡が届いております」

ロジェルの手には書簡が握られていた。

「ありがとうございますわ」

アリーセはロジェルから書簡を受け取った。
ギルドの紋章が描かれた封蝋を開けた。

アリーセはその内容に一通り目を通して行く。

そこには、至急ギルドに顔を出して欲しいという内容だった。
ギルドマスター直々のお呼び出しということは、それなりに急を要することなのだろう。

「ギルド本部に行ってきますわ」

書簡を読み終わるとアリーセはロジェルに向かって言った。

「かしこまりました」

アリーセは、いつものロングコートに着替えると、屋敷を出ようとしていた。

「では、行って参りますわ」

「お気を付けて行ってらっしゃいませ」

屋敷を出てギルド本部に向かって歩く。
歩くこと数分、ギルド本部の前に到着する。

そう言えば、ここに来るのも久しぶりな気がする。
まだ朝だと言うのに、ギルド本部は数多くの冒険者が集まっていた。

中に入ると、アリーセに視線が集まる。
この視線にもだいぶ慣れてきたものだ。

「ギルマスに呼ばれているのですが」

アリーセはギルドの受付嬢に、ギルマスからの書簡を見せた。

「はい、確認して参ります」

受付嬢は、受付に離席中の札を立てると、その場を離れた。
その場で少し待つと、受付嬢が戻って来た。

「確認が取れました。ご案内いたします」

アリーセは受付嬢により二階にあるギルドマスター執務室へと案内された。

「アリーセ様がお見えになりました」

受付嬢はノックと共にそう言った。

「入ってくれ」

中からギルマスの声が飛んできた。

「失礼しますわ」

アリーセはギルドマスター執務室の中へと入った。