金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第56話 家族はどうしている?

陛下は、どちらかというと、こっちの方が重要であるといった口調であった。

「アリーセは、一人でうちの国に来たんだよな?」
「はい、追放された訳ですし」
「突然、こんな事を聞くのはどうかとは思うんだが」

陛下はそう、前置きをした。

「アリーセの家族はどうしているのだ?」
「へっ」

陛下の真剣な面持ちからは想像していなかった言葉に、変な声が出てしまった。

「家族、ですか?」
「ああ、もし、まだミューレンに残っているならうちに移住させてもいいのかとおもってな」

陛下がそんなことまで気を回してくれるとは思わなかった。
義理堅い人だとは聞いていたが、アリーセは所詮は一般人と変わらない。
Sランク認定の冒険者が一般人と言ったらどこかから怒られそうだが。

「ありがとうございます。しかし、」

そこまで言うと、アリーセは目を伏せた。

「両親は既に亡くなっています」

アリーセの父は、王宮の騎士であった。
ある日、戦に行くと言って家を出た父が戻ってくることは無かった。
アリーセが20歳の時だ。
母は、その一年後、父を追うように病に倒れ、この世を去ったのだ。

「それは、悪いことを聞いてしまったようだな。すまない」

陛下が軽く頭を下げた。

「いえ、気にしないで下さい。でも、妹が一人います。まだ、ミューレンに残っているはずです」

アリーセはもう大人だった為、両親がこの世を去ってもやって行く術はあった。
しかし、妹は当時まだ15歳だった。
ひとり立ちをするにはまだ早いと判断され、親戚の家に引き取られた。

「なら、妹さんだけでもこっちに呼んだらどうかね?」
「そうしたいところですが、妹とも2年以上連絡を取っていないものですから」

まだ、親戚の元で暮らしているのかもしれないが、確実な連絡先は持っていなかった。

「そうか。まあ、連絡が取れたらでいい。妹さんの意思を聞いてみてくれ」
「せかっくお気遣いをして頂いたのにすみません」
「いや、いいんだ。こちらこそ、いらぬ気を回してしまったみたいだな」

そう言うと陛下は微笑んだ。

「ディオンも付き添い感謝するぞ」
「いえ、陛下のご指名とあらば」

侯爵は常に恐縮していた。
陛下の口ぶりからするに、結構古い付き合いのようだが、この二人の間には何があったのだろうか。

「話はこれで終わりだが、アリーセの方からは何かあるか?」
「いえ、私の方から特に」
「分かった。ではこれで話は終わりだ」

そう言うと、陛下は前に置かれていた紅茶を一口飲んだ。

「では、私たちは失礼します」
「ああ、急に呼び出してすまんかったな」

アリーセとディオン侯爵は立ち上がると王を後にした。

「ああ、疲れた……」

侯爵は大きなため息をついていた。

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