金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第8話 オーダン侯爵家I

大きな屋敷の前で馬車は止まり、馬車の扉が開かれた。
ロルフが手をとり、ソフィを降ろす。
アリーセは手を借りずとも、そのまま飛び降りた。

「さぁ、アリーセ様もこちらへどうぞ」
「分かりました」

ロルフに促され、屋敷の中に入る。

「こちらで、少々お待ち頂けますか?」
「はい」

応接間のような所に通された。
アリーセは何となく部屋の中を見回す。
調度品も一目で高価だと分かるものばかりだった。

「お待たせしました」

待つこと数分、高身長でソフィと同じく、白い髪の男性が入ってきた。
その後に続くようにソフィも入ってくる。

「ディオン・オーダンと申します。この度は、娘がお世話になりました」

ディオンと名乗ると頭を下げた。

「頭をお上げ下さいな。あのまま、見て見ぬふりは、目覚めが悪いと思ったまでですわ」
「ありがとう」

そう言うとディオン侯爵はアリーセの対面に腰を下ろした。

「まだ、私が名乗っておりませんでしたわね。私は、アリーセ・ベートと申しますわ」
「アリーセ・ベートだと!?」

アリーセが名乗ると侯爵は表情を変えた。

「お父様、知っていますの?」
「アリーセ殿、ご出身は聞いてもいいかな?」
「ミューレン王国ですが、それが何か?」
「やっぱり、あのアリーセ・ベートなのか……」

ディオン侯爵は、何やら確信を持った様子だった。

「あの、私をご存知なのですの?」
「これは失礼。ミューレン王国の作戦参謀、アリーセ・ベートは有名ですからな。我が国にもお噂は伺っておりますぞ」

アリーセの実力は国内に留まっていなかった事を知った。

「それで、その最強の参謀さんが、どうして一人で?」
「その、実は……」

アリーセは、ミューレン王国であった事を全て、包み隠さず話した。

「それは、大変だったな……」
「何て酷いんでしょう……」

ディオンとソフィは顔を歪めた。

「信じて、下さいますの?」

他国の参謀だと分かったら追い出されるかもしれない、と思っていたアリーセにとっては、予想外の反応であった。

「形はどうあれ、アリーセ殿は、娘の恩人だ。信じるに決まっているだろう」
「ありがとうございますわ」
「アリーセ殿は、これからの当てはあるのか?」

侯爵が尋ねた。

「そうですわね。とりあえず、冒険者登録でもしようかと」
「そうか、そうか。それは面白くなりそうだ」

そう言うとディオン侯爵は笑った。

「これが、今回護衛に付いてくれた報酬だ」

ディオン侯爵が革の袋に入った金貨を渡してきた。
ざっと見ても30枚は入っている。

「え、こんなによろしいのですか?」
「侯爵家にも面子という物があるからな。受け取ってくれると嬉しい」
「承知しましたわ。ありがたく頂きます」

アリーセは受け取ると、羽織っていたコートの内ポケットに仕舞った。

「今日はもう、暗い。泊まっていくといい」
「いえ、そこまで、お世話にはなれませんわ」
「気にするな。他に頼る所も無いだろうに」
「で、では、お言葉に甘えますわ」

アリーセは侯爵の言葉に甘え、泊めてもらう事にした。

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