悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

80話 ニャルの悪意。


 80話 ニャルの悪意。

「あなたたちも知っているはずだよね? なのに、さっきの茶番はなに?」

(旦那と話し合いがしたかっただけ。言いたいことは山ほどあるのに、平場じゃ、なかなか言えないことも多いから、この状況を利用させてもらった。それだけ)

「相変わらず、クソしたたかな女だね。精神面がバグっているマイマスターの伴侶にはふさわしいと思うけど、人間的には嫌いかな」

 そう言い捨ててから、
 ルナは、センに意識を戻し、

「改めて言うよ、マイマスター。あなたはすでに積み上げてきた。その軌跡は、誰にもマネできない、あなただけの道程。だからたどり着ける。誰も届かなかった『あの丘』の向こうに」

「……無限の地獄に関してはともかく、俺の記憶が世界から消えるとか、K5の面々に男ができるとか、その辺のあれこれは?」

「あんなもんは、デス○ートの13日ルールみたいなものだよ。一言で言えば、悪意でいっぱいの嘘」

「……」

「一つだけ言っておくと、あれも、別に、無意味な嘘ってワケじゃない。必要な嘘だった。ニャルの悪意を受け止める必要があった。マイマスター、あなたは、過酷な運命の全てに、根性一つでうちかった。だから飛べる」

 言葉が、センエースの中で、形になっていく。

 ルナに続くように、
 彼女たちも、

(――あなたは飛べる――)

 センエースの器として、
 より強く支えるという意志を示しつつ、

(――あたしたちのヒーローは、誰よりも高く飛べる――)

 信念に昇華された願いを世界に刻み込む。
 すべてが、高次のアリア・ギアスになっていく。

 感情の正念場。
 命の華が萌ゆる。

(――あたしたちの全部を、あなたに捧げる――)

 無数の想いが、一つになっていく。

(ここから先も、あなたは、きっと、多くの地獄に苛(さいな)まれていく。命の最前線、絶望の鉄火場でもがき、あがき、苦しみ続ける。けど、もう、二度と、独りで背負わせたりしない。一番大きな責任は、あなたしか背負えないから、泣く泣く譲るけど、それ以外の全部をもらう。あなたの側(そば)には、いつだって、必ず、私がいる)

 ぶっちぎった覚悟を宣言。
 ジャンキーとも、狂信者とも違う、
 もう一歩踏み込んだ狂い方をした瞳。
 そんな、イカれた眼差(まなざ)しのまま、彼女は言う。


(――愛している。あなたを。あたしたちの全部が、あなたを求めている――)


 ぶつけられた無数の感情。
 それらは、まるで、振り下ろされた鈍器のように、
 重たく、強く、ガツンと、センの心に届く。

「……注がれていく……」

 理解と感情が統一されていく。
 伝わってくる。

 それは、希望のカケラ。
 願いの結晶。
 命がけの激励。

 魂魄が、これでもかと沸騰している。

 彼女たちは、
 重なり合って、
 センに全部を注ぎ込む。


(――あなただけが本物のヒーロー。この世界でもっとも尊い閃光――)


 すべての想いを注がれたセンは、
 今にも溢れ、こぼれだしそうな想いを、両手いっぱいにかかえながら、

「……俺はヒーローじゃない。それが事実。それが現実」

 沸騰した想いが新しい器になる。
 その器を覚悟でひたひたに満たす。
 その器をのぞきこんでみると、そこには、

「それでもなくさなかった勇気を」

 センは全身に力を籠める。

「記憶も数値も全てなくして、しかし、それでも、なくさなかった想いを、すべて集めて、今日も俺は、とびっきりのウソをつく」

 バカみたいな前提を山ほど積んで、
 まっすぐな視点で世界を睨みつけて、




           
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「――(――【【ヒーロー見参】】――)――」
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