悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
70話 めでたし、めでたし。
70話 めでたし、めでたし。
腸をグチャグチャにされて、
心臓も貫かれて、
臓器の全部が木っ端みじんになって、
ついには、
――残ったのが、首から上だけになった。
それでも、センは、
「おびえる時間だぜ、クトゥルフ・オメガバスティオンさんよぉ! この状態になっても、まだ、俺の殺気は、更年期の血圧みたいに、とどまるコトを忘れて、ひたすらグングン上昇中だぜ?! すげぇだろ! ラリってんだろ?! けど、ここはまだ旅の途中! 俺はまだ壊れる! まだ、折れてやらねぇ! そのきざしすら微塵もない!!」
センは、魔力とオーラだけで自分を推動させる。
突撃の途中で、図虚空を召喚して口にくわえると、
(――龍牙一閃――)
まっすぐに、
オメガの喉元めがけ、ナイフをきらめかせた。
当然、そんな一撃がオメガに届くはずもなく、
「センエース。お前の殺気が、いつまでも上昇し続けることはよくわかった。お前の心は絶対に折れない。よくわかったよ」
そう言いながら、
オメガは、センの頭を掴んで、
「けど、それだけじゃねぇか。別に強くなっているわけでもなんでもない。ただ、俺を殺そうと『むき出しの気持ち』を前面に押し出しているだけ。確かに気持ち悪いが、今のところ、それ以外の感想はないな」
そう言い捨てて、
オメガは、センの頭を地面にたたきつけようとした。
そのムーブを、センは予見していた。
最善手を求め続けたセンの演算が、
未来視に少しだけ近づいていた。
田中トウシほど完璧かつスマートに、
一直線の演算をすることは流石に不可能。
しかし、鉄火場でのセンの頭は、
田中トウシでも見えない部分を見通していく。
田中トウシならば『見る必要がない』と合理的に切り捨てていく部分すら、センは愚直に演算しつづける。
その愚かさが、世界に切り込みを入れる。
自分の生首を囮にするというキチ○イの一手。
オメガが『センの頭を地面にたたきつける』ということに集中した、その瞬間だけを狙いすまして、
「――龍閃群――」
ひそかに空へと設置していた剣翼を暴走させる。
イメージとしては、幻爆の剣翼。
『田中トウシが解析した結果』の一部を、
センは『自分の中』に刻んでいた。
センエースを苦しめ続けた絶望を、
センエースは、自分のモノにすることで克服する。
気分的にはロッ○マン。
ボスの必殺技を会得して強くなる!
――空から降り注ぐ無数の剣翼。
厨二が暴走した漆黒の剣。
聖なる死神と、悪夢の熾天使、
両者の質量を込めた剣が、オメガの全身を貫く。
「……っ……」
回避は許さない。
丹念に積んできたセンの一手。
ようやく一矢報いた。
そう思ったセンの視界に、
オメガの黒い笑顔がうつる。
剣の雨にうたれて吐血しながら、
しかし、
「――見事だったぜ、センエース」
いっさい動じることなく、そのまま、オメガは、
『センの頭を、地面にたたきつける』という行動を完遂してみせた。
グシャリと、あっさり、センの頭部は破裂した。
それでも、なお降り注ぐ剣の雨を、
オメガは、
「舞い踊れ、幻爆の剣翼」
自身が展開させた剣翼で相殺してみせた。
センの一手は、オメガに、大量の血を流させた。
大きなダメージを与えた。
それは間違いなかった。
しかし、結局のところ、センは、
オメガを殺すことはできなかった。
一矢報いることはできたが、
しかし、最終的には、
オメガを殺すことはできず、
『そのまま死んでしまっただけでした』とさ。
めでたし、めでたし。
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