悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

65話 65。


 65話 65。

「それでも……叫び続ける勇気を……」

 ――『その言葉』は、いつだって、この上なく強い呪い。
 へたり込むことを、死んでも許さない縛り。
 疲れ切って、動けなくなって、へたり込もうとしても、
 荒々しく、無慈悲に、首根っこを掴んできて、
 ムリヤリ、強引に、立ち上がることを強制してくるブラックな神の手。

「はぁ……はぁ……うぅ……」

 グっと、奥歯をかみしめ、拳を握りしめる。
 目の前に広がる現実という地獄。
 押しつぶされても仕方のない絶望の底で、
 センは、

「折れるな……」

 自分に言い聞かせる。
 押しつぶされそうになりながら、
 ヘシ折れそうになりながら、
 しかし、

「降りてやらねぇ……」

 自分と向き合う。
 覚悟と向かいう。

 『勇気を叫び続ける覚悟』は、
 いつだって、鬼畜すぎる強い呪い。
 労働基準法に正面から牙をむく、とんでもなくブラックな神の手。
 折れることを絶対に許してくれないパワハラの極み。

 ――その代わり、その黒い神の手は、
 倒れそうになった時、力強く、背中を支えてくれる。
 へたりこむことだけではなく、倒れることさえ許さない無敵の傍若無人っぷり。

 『折れない心』を保ち続ける限り、
 何よりも心強い味方でいてくれる、無上の輝き。

「絶対に、降りてやらねぇ……」

 悲鳴を上げている奥歯。
 軋みすぎて肉が裂けた。
 滲(にじ)む血は鉄の味がした。

「……絶対に守るから……」

 いつだって、
 傍若無人な神の手は、
 『輝く明日を求める迷子』を、
 光のある方へと引っ張っていってくれた。

 例外はない。
 ――だから、

「……絶対に……」

 ふるえる魄を抑え込んで、
 澄んだ魂だけで前を見る。

 かすみそうになる視界にハッパをかけて、


「何も心配しなくていい! 絶対に守ってやる! 足りないというのなら、もっと地獄を積んでやる! 絶対に折れねぇ! 絶対に降りてやらねぇ! 最後の最後まで、俺は抗い続ける! 思い知れよ、運命ぇ!! ここにはぁああ! 俺がいるぅううう!」


 この上ない恐怖心と絶望を、
 『完全にはねのける』ということは出来ない。
 いつだって、その二つの痛みは、センの背中に重たくのしかかる。
 普通なら動けなくなる重荷。
 そんな、鬱陶しい荷物を背負って、
 それでも、舞い続けると宣言するヒーロー。

 世界が瞠目する。
 すべての運命が二度見する。
 有機物も無機物も関係なく、誰もが心奪われる英雄。

 ――並ぶものなど存在するはずもない、
 その圧倒的な英雄は、
 細胞の全部を沸騰させて、
 オメガに殴り掛かった。

 全身全霊の特攻。
 神を殺す一手。
 極まった史上最強。

 積み重ねてきた全てを余すことなく放出。

 ――そんなセンの研ぎ澄ました一撃を、
 オメガは、サラリと受け流す。

「お前の神風特攻には畏怖すら感じるよ、センエース。正直に言おう。俺は、お前に恐怖を抱いている。俺は、この世で、唯一、お前にだけ恐ろしさを覚える」

 言いながら、スルリと、受け流しの精度を高めるオメガ。

「けど、それは、人間がゴキブリに抱く恐怖と類似している。気味の悪さ、気色の悪さに対する不快感。それだけ」

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