悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
60話 ニャルのアリア・ギアス。
60話 ニャルのアリア・ギアス。
「女にケツを拭いてもらっていながら、またすぐに、HPが赤ゲージへと元通り。みじめだな! 女が風俗で稼いできた金を奪ってパチンコにいくカスみたいだ」
「さすがに、そこまではひどくないと思うが……まあ、でも、このまま終わってしまった場合、シルエット的には変わらないのかもな」
そう言いながら、センは奥歯をかみしめる。
戦意はまったく失っていない。
センの目は、まだまだ、まっすぐに、オメガを捉えて離さない。
「俺は無様だよ……ずっと、ずっと……」
芯が熱くなっていく。
氷のように冷たく、
朝の森みたいに静かに、
「……けど、無様なままじゃ終われないから……覚悟を決める……」
「てめぇは、すでに、目一杯の覚悟を決めて、そこに立っているだろうが。もう、それ以上はない」
「ああ。俺だけの力じゃ、もう、無理だ。けど、あと一つだけ、俺には切り札がある。正直、切り札と呼んでいいか微妙なところだが……けど、未来を掴める可能性……」
そう言いながら、
センは、アイテムボックスに手を伸ばし、
黒い多面体を取り出すと、
「黒く輝け、トラペゾヘドロン」
いつもの呪文を唱えた。
すると、
「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃん」
などと、おどけながら、
ニャルが登場する。
ニャルは、ニタニタと笑みを浮かべたまま、
センをチラ見して、
「……ボクの提案を受ける気になった、と解釈していいのかな?」
「……ああ。全部受け入れる。だから……俺の大事なものを……守ってくれ。頼む」
「オーケー。了解した。刻み込んであげるよ、君に。ニャルのアリア・ギアスを」
そう言うと、
センの左の頬に、刻印が刻まれた。
蛇のような、龍のような。
禍々しい顔面タトゥー。
「いやぁ、しかし……提案しておいてなんだけど、本当に受け入れるとは思っていなかったよ。君は本当に異常者だよ、センエース」
ニャルのアリア・ギアス。
その詳細は以下の通り。
・センエースだけが、永劫の地獄に落ちる。
・世界の記憶から、センエースの全てが削除される。
・K5の面々が『セン以外の、素晴らしい異性』と巡り合えるチャンスを得る。
――その代わり、世界を守れる。
「もしかして、永劫の地獄をナメているのかな? 本当につらいよ? 君が、これまで積んできた無限ループに匹敵するよ?」
「構わない」
「誰も君を思い出さない。誰も君の献身を知らない。誰も君を愛さない。それが、世界の記憶から削除されるという意味だよ?」
「分かっている」
「彼女たちも、当然、君を忘れる。世界を守るために命をささげてくれた君に操(みさお)をたてて、純潔を貫く、なんてことはしない。普通に、『適当な男』を見つけて、バンバン、セックスをする。君以外の男に股を開き、君以外の男に愛をささやく。それでも耐えられる?」
「耐えられるとは思っちゃいない。だから、想像しないようにしている」
「そんなに苦しい目にあってまで、なんで、受け入れたのかな? ぶっちゃけ、自分でも引くぐらい、最低な提案だと思っているのだけれど?」
「それでもいいと思えたから」
「……」
「それでもいい……全部受け入れる……どんなに苦しくてもいい。……それでもいいから……」
センは、
涙を流しながら、
「……生きていてほしい。……失いたくない。……幸せになってほしい。……それだけ」
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