悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
56話 最後の1%。
56話 最後の1%。
片目はつぶれ、全身複雑骨折で、
耳も聞こえづらく、頭がズキズキと割れそうで、
しんどくて、泣きたくて、辛くて、苦しくて、
――そんな全部に埋もれながらも、センは、
「ヒ……ロォ……見…………参…………っ」
勇気を叫び続けた。
大事なものを守るために闘い続けるという覚悟を示した。
その尋常ではない献身を目の当たりにして、
コスモゾーンが震えた。
感情論の終着点。
凝り固まった指向性が風化する。
だから――というのもおかしな話なのだが、
しかし、事実として、
本来であれば完全に反則なのだが、
コスモゾーンは自由意志を通した。
無意識の暴走。
結局のところは、それだけの話。
センエースの覚悟は、
特殊なアリア・ギアスとして昇華され、
コスモゾーンの中核を震わせた。
記憶の螺旋が、強制的に、円の輪郭を持つ。
途切れ途切れだったカケラが収束する。
100万回を超える献身。
常軌を逸した王の愛。
常人では、とても受け止めきれない『センエースの覚悟』が、
『彼女たち』の中心で立体的になっていく。
完全には無くさなかった『センエースへの想い』が昇華されていく。
センがどれだけあがいても、
絶対に削り切れなかった『最後の1%』が、
本物の器となって、現世に顕現する。
積み重ねてきたのはセンだけではない。
能動的ではなかったかもしれないが、
センに付き合わされて強制的だったとはいえ、
確かに、間違いなく、確実に、
――彼女たちの『中』では、
多くの『想い』が磨き上げられていった。
その『想い』に対して、
コスモゾーンが『事実』をつきつける。
センが、これまでに何をしてきたのか。
この無限ループにおいて、
どんな想いで、もがき、あがき、苦しみ続けてきたのか。
その全てが、ダイレクトに、
彼女たちの魂魄へと刻まれる。
コスモゾーンのワガママに振り回される。
――結果、世界に亀裂が入る。
その亀裂から、深い輝きが、注ぎ込んだ。
天使の階段。
「……なん……だ……」
何が何だか分からず困惑しているセン。
すると、亀裂の向こうから、
龍の鎧を装着した美少女が現れた。
知らない顔だった。
けど、面影は随所から感じる。
その『彼女』は、まるで、K5をモンタージュで合成させたような顔をしていた。
身にまとう龍の鎧も、彼女たちの龍を合成させて練り上げたような色鮮やかさ。
彼女は、
「――神の慈悲――」
センの体に触れて、神の魔法を使った。
命が癒されていくのを感じた。
痛みが熔けていく。
こころが、満たされていく。
彼女は、
センの体が、あらかた癒えたのを確認したところで、
「……っ」
我慢できなくなったように、
センをギュっと抱きしめた。
かきいだくように、強く、強く、抱きしめて、
「辛かったよね……苦しかったよね……」
遠慮なしに、想いのたけをぶつけていく。
「ありがとう……ずっと、ずっと……ありがとう」
ポロポロと涙をこぼし、
「愛しさで溺れそう」
心の底から湧き上がる感情をぶつけていく。
「幾億(いくおく)の……
刃のように、冷たい涙……
必死になって、飲み干しながら……
無限の痛みを心に背負い……
それでも、あなたは……闘い続けてくれた……」
言葉が結晶になって降り注ぐ。
無数の光が束になって、
ほんの少しでも、
『センエースの愛に応えよう』と、
必死になって、想いを紡いでいる。
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