悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
9話 薬宮トコの罪。
9話 薬宮トコの罪。
「てめぇの罪を数えろ。このガキは、てめぇのせいで死ぬ。全部、てめぇのせいだ! 俺を忘れやがって! 俺を! こんだけ……こんだけ頑張って……くそがぁ……っ」
とことんまで声を荒げて、
全力の怒りをぶつけるセン。
「罪深い貴様の罪を! 自覚しろぉお! てめぇのせいだ! 全部! 全部! 全部!」
そんな、センの慟哭を受けて、
トコは、
「あたしは……」
涙を流しながら、
「そんなに……わるいことを……したんか……?」
想いを吐き出した。
センにぶつけられた理不尽に対し、
自分の感情をさらけだす。
「親を奪われて、地獄を見て……それでも、一生懸命……毎日……頑張って……化け物と戦って……苦しくても……辛くても……ただ……必死に……世界を守るために……大事な友達を守るために……頑張ってきたのに……あたしは……」
センほどではない。
ここまで、すべての地獄を背負い続けてきたセンほどではないが、
しかし、薬宮トコも、そうとうな地獄を背負っていた。
自分の奥に、苦しみを抱え込んで、
それでも、健気に、必死に、
痛みを伴う毎日を積み重ねてきた。
お互い、ボロボロと、涙を流しながら、
ただ、ひたすらに、言葉を交わし合う。
「……あたしが憎いなら……あたしが悪いなら……あたしを殺してくれてええ……ズタズタにしてくれてええから……関係ない子供を殺すとか……やめてくれ……ほんまに辛いから……やめて……」
ひぐひぐと、鼻水をたらして、泣きじゃくるトコ。
そんなトコの、弱さが爆発した顔を見て、
センの中で、感情がまぜこぜになった。
『憎悪されるべく』、彼女たちに放った『自身の憎悪』は、
ただの演技などではなく、純粋な黒い塊だった。
無限の地獄ループの中で、センの中に刻まれた暗い歪み。
『こんなに頑張っているのに、どうして報われないの?』というブザマ。
センは聖人ではない。
聖人ではないのだ。
――だが、決して、ただのクソ野郎ではない。
だから、
「……すぅ……はぁ……」
センは深呼吸をする。
鋼の覚悟にハッパをかけて、
自分の中に、深く潜っていく。
(……俺が……欲しいものは……)
不思議なもので、とことん落ちると、整理される。
雑多になっていた感情が、
この無様さの中で整っていく。
だから、
(こいつの謝罪じゃない……そんなものはいらない……俺が本当に欲しいのは……)
気づく。
自分の本音。
『無数にある本音』の中で、
自分が、一番大切にしているもの。
それだけは、絶対に、何があってもなくしたくないと、
こころの底から強く、強く、強く、抱いている想い。
――愛されたかったの――
――それが本音――
――けど――
――それ以上に――
――笑って生きてほしかった――
――俺がいない世界でもいいから――
――愛して、愛されて――
――そうやって、幸せに、生きてほしかったんだ――
「……よく見ろ」
そこで、センは、トコの目の前に、赤子を突き出して、
「さっきのガキと同じ顔だろう?」
そう言われて、トコは、赤ん坊の顔をよく見て見る。
へちゃむくれで、可愛げない顔をしている。
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