悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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24話 時間稼ぎ。


 24話 時間稼ぎ。

 首のない紅院と黒木。
 額を貫かれたトコ。

 三人とも、命はもうない。
 完全に死んでいる。

 その光景を見て、

「うぇっ……」

 流石に我慢できなくなって、トウシは、普通に吐いてしまった。
 ここまで徹底されると、胸の奥からこみあげてくる不快感を抑え込むことが出来なかった。

 その光景を見て、茶柱が、

「あ、タナてぃんって、『気持ち悪くなると吐く』っていう普通の感覚もあったんだぁ。意外だにゃぁ」

「……おまえ、ワシを……なんやと……」

「人間の心を持たない、特殊量子コンピュータの擬人化だと思っていたにゃ」

「……ああ、そう……」

 どうでもよさそうに、そうつぶやくと、
 トウシは、げほっ、げほっっと、せきこんで、
 口の中に残った吐しゃ物も全て吐き出してから、
 ロイガーを睨み、

「他のやつは完全に死んでいるっぽいは、なんで……そこのイカれ女だけ、まだ生きている? いや、生きているといっていいのか微妙だが……」

 疑問を投げかけると、

「こうするためだ」

 そう言いながら、
 ロイガーは、『茶柱の頭を掴んでいる手』に力を込めた。

 豆腐をつぶす程度の握力。
 ただソっと握りしめただけ。
 それだけでも十分だった。

 茶柱の頭部は、肉も骨も、すべて、あっさりと砕けてへしゃげた。

 コンマ一瞬だけ、悲鳴をあげかけた茶柱だったが、
 しかし、すぐに意識はなくなった。
 それだけが救いと言えなくもなかった。


「うぅ……」


 目の前で茶柱を殺されて、
 また強烈な不快感が胸の奥を駆け上がってきたが、

「ぐっ……」

 今度は、押し殺した。
 経験で自分を制御するトウシ。

 これもまた学習の一つ。

 ロイガーは、たんたんと、

「……貴様は逃げた。だから、守るべき対象は、こうなった」

 ただの事実を並べていく。

「なにか、反論はあるか?」

「別に、何も」

「貴様は私に対抗するため、夜の時空ヶ丘に沸くアイテムを探していたのだろう? ならば、それを言い訳にできそうなものだが?」

「言い訳もクソもない。それだって事実。お前よりもはるかに貧弱で脆弱なワシは、お前に勝つための手段を探すために、一旦、お前の前から逃亡し、その間に、ワシよりも脆弱な女どもが殺された……それ以上でも、それ以下でもない。これ以上、何を言う必要がある?」

「ふむ……後悔などはしていないのかね?」

「あの場に残ったからといって、何もできん。そら、あの場で、女どもの盾にでもなって死んどったら、そっちの方がカッコよかったか知らんけど、ワシは、別に、カッコよさを求めて生きてないからな。ワシにも、女どもにも、力が足りんかった。だから、今、エゲつない窮地に陥っとる、それだけの話」

「簡潔な話だな。……ああ、ちなみに言っておくと、先ほど、私は、この空間に次元ロックをはった。逃亡はもう許さない」

 そう言いながら、ロイガーは、茶柱の死体を指さして、

「これから、貴様は、間違いなくこうなる」

「……できれば、そうはなりたくないんやけど……」

「だろうな。しかし、未来は変わらない」

「勘弁してくれや……ワシ、まだ、花の十代やで。ここから、恋とかもしてみたいがな。大学生活とか、社会人生活とか、そういう未来を夢見させてほしいんや。せやから、どうか、頼むわ。そう簡単に殺すとか言わんといてくれや」

 そんな、グダグダとした無駄な言葉を並べている間、
 トウシは、必死になって頭を回転させていた。

 なにも、本気で命乞いをしているわけではない。
 そんなことをしても無駄だということぐらいは分かる。
 トウシはバカではない。

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