悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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17話 学習すること。


 17話 学習すること。

 両手を握りしめて、
 武を構えるトウシ。

「おどれと殺し合うことで、ワシは、経験値を補完する」

 そんなトウシの様子を見て、
 ロイガーは、鼻で笑い、

「……まさか、それで構えているつもりか? まったくなっていない。スキだらけだ」

「そらそうやろ。こちとら、これまで、まともなケンカ一つしたことないんやから」

「貴様からは、武のセンスすら感じない」

「へぇ、そうなん? まあ、ワシって、完全にデスクワーク派のモヤシやからのう。殴り合いのセンスなんか、なくて当然やろう。結局のところは、適材適所。サメは飛べへんけど、水の中では無双できる。タカは飛べるが、水の中では溺れ死ぬ。どうやって闘うかは重要やけど、それ以上に『どの分野で闘うか』の方が、大事やったりする。どれだけ高い資質を持っとったとしても、闘う場所を間違えたら失敗する」

「つまり、今の貴様は、陸にあがったサメということか。頭でっかちが、戦場に出てきても、踏みつぶされて終わりだ」

「今のワシが闘える分野は、かなり広いで。これまでは、海の中で泳ぐことしか出来んかったけど、イスの遺産と言う翼を授かったからなぁ。ワシは飛べる。お前を殺せる。他のやつには無理やろうけど……ワシならできる。これは、ワシにしか超えられん不可能や」

 そう叫んでから、
 トウシは駆け出した。

 普通の人間をベースに考えれば、
 おそろしく速いのだが、
 しかし、グレート・オールド・ワンの視点だと、

「遅すぎてアクビが出る」

 ナメクジの歩みにしか見えない。
 ノロノロと、ゆっくり、ゆっくり動いている。

 ロイガーは、
 ギリギリまで動かず、
 トウシの拳が、鼻に触れるまで待ってから、

「これが『武』だ」

 そう言いながら、
 軽やかに、
 ギュンっと、体を回転させて、
 トウシの腹部にカウンターの右フックをぶちこむ。

「うぐっ、ぶほぉ!」

 あまりの衝撃に体がくの字になった。
 普通に吐血する。
 激痛で、一瞬、頭が真っ白になった。

「うっ……がはっ……ごほっ……」

「どうだ? 『武』を学習できたか?」

 と、鼻で笑いつつ、心底からバカにしてくるロイガーに対し、
 トウシは、

「……ああ……少しだけ……見えてきた……」

 ボソっとそうつぶやく。
 その発言が、全力で気に入らなかった様子のロイガー。
 イラついた顔で、

「一発殴られただけで『武』が見えてきた、だと? 命をナメるのも大概にしておけよ、クソガキ」

 そう言いながら、
 ロイガーは、二発目のフックを、
 トウシに叩き込もうとした。

 ロイガーは、トウシを、普通に、殴り倒せると思っていた。
 けれど、


「そいつはもう学習した」


 ボソっとそうつぶやいた声が、ロイガーの耳に届いた時には、もう遅かった。

 トウシの体は、驚くほど完璧に、
 ロイガーのフックと適合する。

 完璧な角度と速度で、ロイガーの拳をいなすと、

「こうやろ?」

 ロイガーの動きを完全に模倣した、完璧な右フックで、
 ロイガーの腹部にカウンターをたたきこむ。

「ぶふっ!!」

 くの字に曲がるロイガーの体。

「なっ……はぁ……っ?」

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