悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

7話 クソ陰キャはクソ陰キャの夢をみるか。


 7話 クソ陰キャはクソ陰キャの夢をみるか。

「タイプの女子の前でカッコつけようとするのは、男の本質。それだけの、極めて単純な話だよ。俺は神様じゃないし、イケメンでもない、どこにでもいる量産型汎用一般人だけど、だからこそ、好みの女の前では、そこそこちゃんと頑張るのさ」

 そんな、イカれた言葉を残して、

「じゃあ、俺はいく。ピンチになったら呼んでくれ。行けたら行くから」

 センは、その場をあとにした。

 階段を下りている途中で、
 天童が、テレパシーで、

『会ったばかりのギャルを全力でナンパとは……お前、思ったよりも、だいぶチャラいな』

「そう思われても仕方がないとは思うが、しかし、俺は別に、チャラ男じゃねぇ。あの女は、何がどうとは言えないんだが、とにかく全力でヤバそうだったから、釘を刺しておいた、と言うだけの話だ。あと、普通に、マジでタイプだしな。俺のストライクゾーンは、なかなか狭いという自負があるんだが、あいつは、まあまあど真ん中だった」

『お前のタイプは、おしとやかな大和撫子じゃなかったか?』

「なんで、お前、俺のタイプを知ってんだよ。きしょいな。俺のファンなの?」



 ★



 センの背中が見えなくなるまで見届けたあと、
 酒神は、壁にもたれかかって、天を仰ぎ、

「……あれは……この世界を創った神じゃない……」

 ボソっとそうつぶやいた。

「……」

 自分でつぶやいた言葉に、
 酒神は、自分で疑問符を抱く。

「なぜ、そう思った?」

 自問自答をしてみる。
 しかし、答えなど出るはずもなかった。

 ただ、

「……あれは違う……分からないけれど……たぶん、違う……」

 あいまいな確信。
 ブレブレの矛盾の中で、
 彼女は、
 しかし、

「……なに、この感情……」

 自分の胸に抱いた感情が理解できず首をかしげつつも、
 しかし、妙に暖かさを感じる。

「まるで、実家のような安心感……」

 ボソっとつぶやいて、
 そして、また首をかしげる。

「……わからない……どうしよう……」

 自分を見失ったことは、
 これまでにも、何度かあるが、
 しかし、こんな、『全体像すら見失ったこと』は初めてだったので、
 酒神は、心底から戸惑った。

 どうするべきか悩み、
 しばらく、立ち往生してしまった。



 ★



 教室に戻ったセンは、
 曖昧な記憶を頼りに、
 自分の席につく。

 そこは、才藤零児の隣の席だった。

 席についた直後、センは、チラっと才藤を確認する。

(この才藤とかいうクソ陰キャ、目つきが終わってんなぁ……)

 と、心の中でつぶやく。

 ちなみに、その時、
 センに見られている才藤も、
 心の中で、

(なんか、隣のクソ陰キャに睨まれてんな……なんでだ? つぅか、興味ゼロだったから、今まで気づかなかったけど、こいつ、目つきが終わってんなぁ……)

 ボソっとそうつぶやきつつ、
 センの視線から外れようと、
 無駄に、窓の外へと視線を向ける。

 お互いが、お互いのことを、
 全力で『やべぇやつ認定する』という、
 奇異な状況。

 センエースの現場は、いつだって、不純物でいっぱいの濃厚なカオスが渋滞している。

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