悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

49話 次の私はもっと強い。


 49話 次の私はもっと強い。

 他の神話生物との闘いでも、
 当然『痛み』は感じてきたわけだが、
 しかし、なぜだか、ウムルとの闘いでは、
 いつも以上の『苦痛』を感じた。
 妙な吐き気を感じる。

 重たいのだ。
 ジットリと、ベッタリと。
 苦痛と絶望が、グンと、肩にのしかかってくる。

 『しんどさ』が常識外の質量を持って、
 センの臓器に過度な負担を強いてくる。


「貴様の罪を数えろ、センエース。その重荷は、貴様が、いつも、他者に与えているものだ。貴様の敵は、いつも、その地獄を味わってから死んでいる。自身がいかに罪深い存在か、心に刻み込め」

「……そんなもんを刻み込んだところで、俺には一円の得もねぇ。つぅか、たいがいの敵は、俺を殺そうとしてきたゲス共だ。基本、自衛してきただけの俺に罪なんざねぇ。法律を勉強してから出直せ、カスが」

 言葉で切り返しつつ、
 拳でも切り返していく。

 ノーガードの殴り合いは続いている。
 別にガードしたっていいのだろうけれど、
 なぜだか、両者とも、
 『引いた方が負け』のような気がしてしまい、
 引くに引けなくなって、
 時間が経つごとに、ボロボロになっていく。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 満身創痍の両者。
 どちらもボロ雑巾のようになって、
 けれど、まだ、両者とも、相手を殴る手を止めない。

 頭のおかしい殴り合いは、

「せ……閃拳っ」
「うぼぇっ……っ」

 最終的に、
 センの方に軍配が上がることで幕を閉じた。

 倒れこんだウムルに対し、
 センは、必死に呼吸を整えてから、


「……ナメんなよ」

 最後に、そう言い捨てる。

 その言葉に対し、倒れこんでいるウムルは、

「今回は負けるが……『次周の私』は……もっと……重たいぞ……」

 と、不穏な言葉を残してから、
 粒子状になって、
 センの奥へと注がれていった。

 残されたセンは、天を仰いで、

「……ああ、そうだった……こっから、何回も、あいつの相手をしないといけないんだった……」

 殴り合いに夢中になっていたので忘れていた。
 これから、何度もタイムリープを経て、
 さっきの鬱陶しいウムルと殴り合わないといけないということ。

「……次は、さらにウザくなっているのか……で、次の次は、もっと……あぁ……しんどいぃいい……」

 泣きそうな声で、未来を憂(うれ)うセン。
 どれだけ泣き叫ぼうと、どれだけ弱音を吐こうと、完全に無意味。

 誰も、センを助けてはくれない。
 いつだって、センエースは、自分で道を切り開くしかない。

「はぁあああ……」

 深いため息を吐いてから、
 センは、黒木に連絡を入れた。

 これだけ満身創痍になりながら、
 しかし、それでも、アイテム探索を続けようとする。

 それが、センエースの生きる道。
 あまりにも険しい修羅の道。

「……ヒーローなんて……なるもんじゃねぇよなぁ……」

 心の底からの本音をこぼす。
 今だけの感傷ではなく、
 ほとんど、生まれてからずっと思っている本音。

 ――けれど、それでも、
 センは、ヒーローを騙り続ける。

 そういう生き方しか知らないから?
 違う。
 そういう生き方を選択したから。

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