悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

47話 私は、私より強い程度のザコに負けない。


 47話 私は、私より強い程度のザコに負けない。

(……あんまり手ごたえがねぇ……直前で軸をズラしやがった……)

 殴ったセンは、心の中で、ボソっとそうつぶやいた。

 吹っ飛んだウムルは、
 空中でキキっと急ブレーキを入れると、
 殴られた頬を撫でながら、

「……いい一撃だ。センエース。貴様は強い」

 血を吐きながら、ウムルは武を構えて、

「しかし、私より強いという程度で図に乗るな。私は私より強い程度のザコには負けない」

「……どっかで聞いたことがあるセリフだな」

 などと言いつつ、センは武を構えて、

「――お前より強いなら、俺はザコじゃねぇだろ。なに、ふざけたこと言ってんだ、ボケが。多角的に錯綜(さくそう)しやがって。寝言は寝て言え」

 などとブーメラン発言を決め込んでから、
 センは、ウムルに対して特攻を決めた。

 そんなセンの突撃に対し、
 ウムルは、とびっきりの眼力で世界を睨みつけ、

「――見える。私にも、貴様の動きが見えるっ」

 などと言いつつ、センの懐にもぐりこんで、
 綺麗なカウンターを決め込んできた。

「ぶへぇ!」

 顎に豪快なアッパーをもらったセンは、盛大に血を吐きつつも、

「く、くそがぁ!」

 反撃の拳で、ウムルの腹部に風穴をブチ開けていく。

 別に『打ち合わせした』というワケではないのだが、
 そこから、互いに、ノーガードの殴り合いを始める両者。

 『回避は無粋』と心が叫ぶ。
 『意味不明な論理』に世界が発狂。

 理解できない領域に立つ二人の化け物。
 互いに、握りしめた拳を、必死になって、相手にたたきつけ続ける。

 ボッコボコになった両者は、
 それでも!
 おたがいを!
 殴る手を!
 とめない!


「ぐへぇええ!」


 最初にクリティカルをもらってよろけたのはセンの方だった。
 鼻血で顔面が真っ赤になって、歯が何本も折れて、非常にブサイクな面構えになっている。

「く、くそがぁ……」

 右腕で鼻血を雑に拭き取りつつ、
 回復魔法で、損傷部位を治癒しつつ、
 センは、ウムルを睨みつけて、

「なんだ、てめぇ……ステータスの数字的には、覚醒ロイガーとトントンっぽいのに……なんか、妙に強いぞ……」

 イライラで奥歯をかみしめながら、
 ぶつぶつと、愚痴をこぼすセンに、
 ウムルは、ニィと爽やかに微笑んで、

「私に搭載されているセンエースエンジンは『最新型』の『本物』だ。パチモノではなく、本物のセンエースエンジン。使用するための限定条件が厳しすぎるため、汎用性は極めて低いが……しかし、間違いなく本物のセンエースエンジン。そのスペックは、ありえないほど破格。出力、加速、強度、粘り強さ、圧縮率、すべてが規格外」

 ウムルは、自身に搭載されている特殊なエンジンについて語りつくすと、

「だから舞える。誰よりも高く。誰にも届かない世界に、私は行ける。見せてやるよ、頂(いただき)の向こう。神ですら届かない深淵の最果て。見せてやるから、死ぬ気で見届けろ」

 スゥと、静かに息を吸った。
 目を閉じたら、暗闇に包まれた。
 静寂と孤高。
 その中心で、ウムルは、さらに深部へとダイブ。


「――ヒーロー見参――」


 その宣言をした直後、
 ウムルのオーラと魔力の質に変化が生じた。


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