悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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8話 人の愚かさと美しさ。


 8話 人の愚かさと美しさ。

(うぅ……ぐぅ……おお……ぃ、いやいや……こいつは、ガチでキツイな……えぐい、えぐい、えぐい……図虚空の精神負荷でいうと……300%級ってところか……この手の絶望に慣れていない『3周目ぐらいの時の俺』だったら、普通に、一瞬でヘシ折れていただろうな……)

 センは、精神的負荷に慣れているので、
 この過剰な重さにも、どうにか耐えられているが、
 普通の人間だったら、一瞬で精神が破壊されていただろう。

 センだって、必死に耐えているだけで、
 決して楽勝というわけではなく、
 全身から脂汗がにじみ出ている。

 その様子を見ていたゾーヤが、
 怒りマークを浮かべて、

「ぐ、愚民どもがぁ……人類唯一の剣であり盾である陛下の足を引っ張る行為は、自分の首をしめるだけの愚考だと、なぜ気づかない……陛下がつぶれたら、人類は終わるんだぞ。なぜ、そんな当たり前のことが分からないっ!」

 怒りを吐き散らかしていると、
 そこで、茶柱が、

「大衆は『アホの弱虫』ばっかりだからにゃぁ。まあ、でも気持ちは分かるにゃ。センセーを憎悪するだけで、このしんどさから解放されるとなったら、そりゃ、憎悪してしまうにゃ。かくいうツミカさんも、その誘惑に負けて、今、普通にセンセーの事を憎悪しているにゃ。おかげで、肩が軽いにゃ。普段からの『憎悪の量』がハンパないせいか、なんなら、いつもより、体が軽いくらいにゃ」

 その言葉に対し、ゾーヤが、ゴミを見る目で、

「茶柱、貴様ぁあああ!」

 怒りに任せて、茶柱の胸倉をつかみあげる。

 そんなゾーヤの腕を、
 グっと握りしめて、止めるセン。

 全身にかかる負荷に耐えつつ、
 奥歯をかみしめながら、

「ちゃ、茶柱の発言は……いつも通りの……ただのサイコジョークだから、そうムキになるな」

「陛下! 止めないでください! さすがに、これはシャレではすみません! あなたを苦しめるカスには死を与えるべきです!」

「……うるさい。俺は『怒る理由がない』と言っているんだ。茶柱はサイコだが、プライドだけは一丁前のクソバカ野郎だ……」

「? それは……どういう……」

 センの発言の意図が掴めず首をかしげるゾーヤ。

 そこで、センは、ゾーヤから視線を外し、茶柱の目をジっと見つめて、

「……いつもより、体が軽いと言っている割には……しんどそうだぞ。額に、冷や汗がにじんでいるし、吐きそうな顔をしている」

「センセーの側にいると、気持ち悪くなっちゃうのにゃ。センエーの顔面は、ツミカさん的に『なし寄りのなしの中のなし』だからにゃ。ゆえに、憎悪するのは難しくなかったにゃ」

 あくまでも自分のスタンスを崩そうとしない茶柱。

 そんな彼女の発言を受けて、センは、

「ははは」

 楽しそうに笑う。
 全人類に憎悪され、その重荷を一身に背負うという地獄の中で、

 しかし、ヒーローは、ニヒルに笑ってみせる。


「――お前らの陰鬱な顔を見ていたら、そっちの方がしんどいな。別にいいから、お前らの重荷もよこせ。全部背負ってやるよ。いまさら、数人分の重さが加わったところで、大差ないからな」

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