悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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88話 この上なく尊き救世主センエース。


 88話 この上なく尊き救世主センエース。

 吐くほど必死に止めたのだが、
 しかし、ゾーヤは、有言を実行した。

 300人委員会の持つ力の全てを使って、
 というか、暴走させて、
 センエースという王の誕生を世界に向けて大声で叫んだ。

 世界中の人間が、一斉に、
 センエースという存在を認知する。

 センエースという王が、
 『いかに尊い存在であるか』が、
 ありとあらゆるメディアを通じて、
 世界中に拡散されていく。

 ほんの一瞬で、世界一の有名人になってしまったセン。



 ――そのセンは、今、
 周囲を『大量の警備員』によって囲まれている自宅豪邸の高級ソファーで、
 ボーっと、スマホのネットニュースをながめていた。

(どこもかしこも、俺の名前ばっかり……)

 テレビをつければ、自分の名前が連呼されており、
 新聞を開けば、でかでかとセンエースの名が掲載されており、
 ネットニュースは、上から下まで、
 センに関する個人情報で埋め尽くされている。

(……この上なく尊き世界の救世主……神以上に高潔な命の王……うわぁ……)

 絶句するセン。
 なんなら、その表情は、
 アウターゴッドと対峙している時よりも、歪み方が濃くて強い。

(きっつぅぅ……)

 状況のしんどさが、許容量を遥かに超えていた。
 あまりに辛すぎて吐きそうなセンは、
 どうにか心を落ち着けようと、

(……どうせ、リセットされる。どうせ、リセットされる)

 祈るように、救いの呪文を口にする。

 タイムリープは、センを苦しめている地獄の絶望だったはずが、
 しかし、今だけは、タイムリープだけがセンの唯一の救い。

(俺は孤高に戻れる……誰も俺を知らない世界に戻れる。そうだ。俺には銀の鍵がある。大丈夫。俺はまだ舞える)

 ――精神的な現実逃避をかましていくことで、
 どうにか、最低限、心が落ち着いたセンは、
 『なぜかセンエースという男を過剰に持ち上げようとしているメディアの動き』に対し、
 一般の方々がどう思っているか知りたくなり、
 掲示板を覗いてみると、

(……まあ、だろうなぁ……)

 『え? 誰?』という意味合いの意見が大半で、
 世間様は、とにかく混乱している様子だった。

 300人委員会は、センの事を、
 『謎のエイリアンと戦うヒーロー』
 といった感じで世界に公表した。


 ――『実は、地球は、ずいぶん前から、極悪なエイリアンに狙われており、そのエイリアンを殲滅する部隊の隊長がセンエースである。センエースは人類のために、毎日、命がけで、凶悪なエイリアンと戦ってくれている。その尊き献身を、我々は理解しなければいけない』


 ――などと急に言われて、
 『はい、そうですか。ありがとうございます』
 となるのは、当然の話だが、なかなか難しい。

 これだけ、世界中で拡散されているニュースなのだから、
 さすがに、ただのフェイクニュースではないだろう。
 ――と、みな、思ってはいるものの、
 しかし、いきなり全てを受け入れて、
 『センエース、万歳!』とはならない。

 メディアの力に押し流されて、『センエースを崇める宗教』みたいなものが、各地で、ちらほらと出来始めていたりもするのだが、しかし、大半は、センエースという謎の英雄を利用して金儲けをたくらむ輩の暴走でしかない。

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