悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

81話 俺の言動がキモいのは認めるが……


 81話 俺の言動がキモいのは認めるが……

「あなたの『尊い献身』に対して、人類は、『無知』を貫くべきではない。それはあまりにも不誠実が過ぎます。それを通したら、人類は、真なる原罪を背負うことになる」

「お前の宗教観は知ったこっちゃないが、とりあえず、俺に関する誤解をあらためてくれる? 俺は、俺がやりたいことを、独りで自由にやっていただけだ。喝采も賛美も必要ない。そんなものは、むしろ、俺を穢すノイズ。『俺の世界』は、俺のワガママだけで完成している」

 頑なな態度を貫くセン。
 そのイカれた目を見た事で、
 黒木は、センが、『本音』を口にしていると理解した。

 もちろん、100%の本音ではない。
 そんなものを、言語化できるわけがないから。

 正確に表現するなら『本音の一部』を口にしたといったところ。

 黒木は、バカじゃない。
 だから、センの言動が、
 『本音でありながら、しかし、それだけではない』
 という事も理解できた。

 センは確かに壊れているが、
 しかし、ただのサイコではない。

 黒木愛美は、センエースに対して、
 確かな人間味を感じている。

 センエースは人だ。
 神ではない。
 神の素養をもってはいても、
 彼はまだ人間の世界にとどまっている。

 それがゆえの苦悩。
 それがゆえの絶望。

 すべてを背負って、
 センエースは、闘い続けてきた。
 たった独りで、無限の地獄を。

 ――ソレが、正しく理解できたから、黒木は涙を流した。
 感情の要領限界を超えた。
 ツーっと、頬を伝わっていく。
 黒木の中心が、
 『黒木の心に刻まれたセンエース』を取り戻していく。

 それを見て、センは、

「いや、俺の言動がキモいのは認めるが、しかし、泣くほどではないだろう。失礼なやっちゃな」

 ファントムな言葉で世界を濁す。
 そうやって、センエースは、自分自身を霧の中に隠して、
 誰にも理解できない領域に立ち、
 世界を救うため、永遠の地獄と向き合ってきた。

 黒木は、
 まっすぐに、センを見つめて、

「あなたは……誰よりも美しい」

 心からの言葉を投げかけた。

 センは、軽く辟易した顔で、

「嫌味もそこまでいくと、いっそ清々しいね。それとも、眼科案件なのかな? なんにせよ、正常な言動ではないな。狂っている」

 最後まで幻影を貫く。
 そんなセンに、黒木は、
 絶対に言語化出来ないであろう感情を抱いた。

 それは、母性の中心にある感覚。
 返報(へんぽう)性の原理に近いけれど、
 それだけでは説明がつかない感情のオーバーフロー。

 黒木は、自分の『中』に太陽を感じた。
 ポカポカと、体の全てを包み込む。
 心の位置を正しく理解する。

 そんな黒木に、
 センは、ほんのわずかな勇気を出す。

「……お前は、俺が『ずっと独り』で闘ってきたと言ったが、しかし、実際のところは、ずっと、お前がいてくれた。さっきも説明したが、アイテム探索のダウジングマシンを頼んだのは今回だけじゃない。ずっと、お前は、俺を助けてくれた」

 センは踏み込む。
 言葉に色を乗せる。

「だいぶ強制的に付き合わせてしまった感は否めないものの、しかし、お前が俺を助けてくれたのは事実だ。正直、『お前の手を借りなければいけない状況』を、俺は、心底めんどくさいと思っていたが……けど、きっと、どこかで、お前を頼りにしていたんだと思う」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品