悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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70話 原初の愛。


 70話 原初の愛。

「あいつらの死がリセットされないのは、今回のループだけ……今回だけ、どうにか、守り切れば、また、いつものループに戻る……そうだよな、ヨグシャドー」

「たぶんな」

「……『たぶん』とは、また不穏な言葉を使うじゃねぇか。まさか、今回だけではなく、次回以降も、この流れを引き継ぐ、なんて展開が待っているわけじゃないだろうな」

「おそらくな」

「確定した言葉を使ってくれ、頼むから。こんなに、フワフワした状態だと、まっすぐ前を向いて歩けねぇ」

「蛇行しながらでも、貴様はきっと前に進む。迷わず行けよ、行けば分かるさ」

「うるせぇえ! 死ぬほどハラ立つから、テンプレつかうな!」

「貴様の流儀に合わせてやったというのに、激昂するとは……ずいぶんと難儀なヤツだな」

「テンプレを使っているのは流儀じゃねぇ、ただのクセだ。ゆえに! マネされると腹立つ!」

 怒りをあらわにしてから、

「……ところで、ヨグシャドーよ。他に何か、俺に伝えておくべきことはあるか? 今回だけ、これまでとは全く流れが異なるペナルティゾーンであること。この周で、あいつらが死んだ場合、その事実はリセットされないこと。GOOの出現パターンが完全にランダムであること。これ以外に、何か言い忘れていたことはないだろうな?」

「ないな」

「ほんとうにか?」

「ああ。最終日までに、紅院美麗・薬宮トコ・茶柱罪華・黒木愛美の四名全員と恋人関係&肉体関係にならないと、剣翼が舞ったあとに、『私の本体』がフルマックスの状態で召喚されてしまうが、そんなことは伝える必要すらない些細なことだろう」

「……」

「どうした、センエース。顔が真っ青になっているが? おなかでも痛いのか?」

「えっと、あの……冗談だよな? お茶目なジョークだよな? そうだよな? どうか、そうだと言ってくれ。頼むから。この通りだから」

 そう言って、センは、
 気持ちがいいほど、堂々と、
 図虚空に向かって土下座をかましてみせる。

 そんなセンの頭部に向かって、
 図虚空は、

「安心しろ。センエース。あの四人は、貴様に対して、すでに、並々ならぬ好意を抱いている。貴様の高潔さと雄々しさにメロメロだ。あの四人を手籠めにするぐらい、貴様ならば楽勝――」

「え、あの、マジな感じ? え、ウソだろ?」

「薬宮トコにかかっていた呪いは、発動しても消えることはなかった。形を変えて、貴様の魂魄に宿った。――『原初の愛』の呪い。貴様の愛が四人のヒロインを包み込んだ時、原初の愛は解除される」

 たんたんと話すヨグシャドー。
 フラットなヨグシャドーとは対照的に、

「……」

 センの顔は、青さを増していく。

「普通であれば、なかなか難易度の高いミッションだが、しかし、案ずる必要はない。『原初の愛』は、貴様だけを蝕むものではない。あの女どもの記憶にも影響を与える広範囲にわたる強い呪い。あの女どもは、おぼろげにだが、しかし『貴様に救われたこと』を思い出しはじめている」

 原初の愛は、この世でもっとも強い呪い。
 『幾億の想い』が積み重なった地獄の呪い。
 ゆえに、抗うのは途方もなく難しい。


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