悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

45話 最適な登場速度。


 45話 最適な登場速度。

「今こそが、もっとも幸福な時間! 神になってしまえば、いずれ、慣れてしまう。神になったという喜びは、神で在り続けることで薄れてしまう。神になれるという僥倖を最も喜べるのは、目の前に立った今! 今なんだ!」


 だから、もっと、今を楽しみたい。
 『今』という最高の瞬間を、かみしめていたい。

 大いなる希望の海で、甘く溺れていたい。

 だから、ガタノトーアは、
 紅院たちを瞬殺することなく、
 ゆっくり、じっくり、ねっとりと破壊していく。


「ああ、いい! 貴様らの命はカウントダウン! 私を神へと導く、至高の時間!!」


 変態のような顔で、
 紅院たちをもてあそぶガタノトーア。

 あまりにもウザいその行動に対し、
 紅院たちは、せめて『一発』ぐらいは、おみまいしてやりたいと願い、
 必死になって抵抗してみるが、しかし、わずかも相手にならない。

 ガタノトーアと、紅院たちの間には、
 絶対的な差がある。

「貴様らの脆さが心地いい! のびやかに駆け上がっていくのを感じる! 私は今日! 報われる! 私の全てが祝福されている!!」

 恍惚をひたすらに叫んでから、

「さあ、そろそろ、死のうか! 貴様らは私への供物! 新たな神の誕生を、その命で祝福できる幸運に感謝しながら死ね!!」

 両手に集めた膨大なオーラと魔力。

 膨れ上がっていく。
 紅院たちでは、どうしようもないほどに。
 大きく、深く、優雅に、高貴に、


「――異次元砲――」


 放たれたのは、特大の照射。
 弱い命を飲み込もうとする無慈悲な咆哮。

 その輝きを目の当たりにして、
 紅院の思考はスーパースローになった。

 ――あ、本当に走馬灯ってあるんだ――

 などと、そんなことを思いながら、
 自分の人生を、簡素に振り返っていく。
 名場面がフラッシュバック。

 色々としんどい思いもしたけれど、
 大好きな友人に囲まれて、
 それなりに楽しかった、

 ――なんて、そんなことを思いながら、
 その生涯を終えようとした。


 ――その時、





「――桜華一閃――」





 突如、切り裂かれた時空。
 裂け目から飛び出してきた閃光は、
 手にもっているゴツいナイフを横に薙いで、

 ガタノトーアの異次元砲を、
 真っ二つに切り裂いてみせた。

 その事実に、


「――っっ?!」


 誰よりも驚いたのは、やはり、ガタノトーア。
 言葉なく、ただ、口をパクパクとさせている。
 高い次元にいるからこそ、その場にいる誰よりも高速で理解できた。
 突如出現した閃光の異常さを。

 そんなガタノトーアの反応とは正反対に、
 美少女たちは、ヒーローの登場に歓喜する。
 と同時に、

「ちょっと……遅くないですか?」

 と、軽めの不満を垂れ散らかす。
 『本気で文句をいいたい』というワケでもないのだが、
 しかし、『ヒーローの実力』を考えると、『最適な登場スピード』ではない、
 と、その場にいる全ての美少女が同じ愚痴を心に抱いた。

 そんな彼女たちに、

「うっせぇ! 今、この空間は、異常なほど硬いバリアに守られているんだよ! 俺だから、この速度で突破できたんだ! 俺以外だったら、お前らを助けるどころか、ここにたどり着くことすら不可能だった! ――つぅか、そんなことよりも、なによりも、まずは、『助けていただいて、ありがとうございます、このご恩は忘れません』が最初だろ! なに、助けられておきながら、『そんなことは当然』みたいな顔して、登場速度に文句かましてんだ! シバきまわすぞぉお!」


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