悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

28話 矛盾の塊を背負った主人公。


 28話 矛盾の塊を背負った主人公。

「――『時空ごと世界を終わらせる』……それを成すまでは、絶対に帰らない。そういう感じだろ、どうせ。――わかっているよ。俺の人生って、だいたい、いつも、そんな感じだから。なぜか、甘えが一切ゆるされねぇ。ほんとうにしんどい。ほんと勘弁してほしい」

「……諦観が板についている。しかし、諦めが非常に悪そうでもあるという矛盾。貴様はすべてが歪んでいる」

「さすが、神々の頂点を名乗るだけのことはある。理解力が素晴らしい。まさに、俺は、そんな感じ。『諦観だけが人生である』というブザマさを信条にしていながら、『諦め方を忘れている』というヤバめの前衛アート」

 たんたんと並べられた言葉。
 しかし、中身に込められているのは狂気の覚悟。

「とことん終わっているサイコパス。だからこそ叫べる何かでもって、俺は、お前というナイトメアを駆逐する」

 覚悟を示した宣言。
 重たい絶望を前にして、
 だからこそ、センは強く輝く。

 とことんまで膨れ上がった絶望だけが、
 『センエースの魂魄』を磨きあげる砥石。


「さぁ、行くぞ、ヨグシャドー。殺してやる」


 全力でとびかかるセン。
 限界までオーラを溜めた拳を、
 一心不乱にたたきつける。

 全速の加速。
 今のセンに出来る最高の一撃。
 最善にして最速の一手。

 その結果、
 何が起こったかというと、



「……ぁの……えっと……ぼくのパンチなんですが、少しくらいは痛かったですか?」



「どう思う?」

「……そ、そうですね……ボク的には、『そよ風ぐらいにしか思われてないんじゃね?』……っていう印象ですかねぇ」

「まさにその通りだ」

「ですよねー、はははー」

 笑いながら、センは、
 舞台上でスベり散らかした芸人が楽屋に帰るようなテンションで、
 ゆっくりと、元のポジションに戻る。

「おかえりにゃさい」

 すごすごと帰ってきたセンを出迎えた茶柱は、

「それで、勝てそうかにゃ?」

 と、無慈悲な質問を投げかける。

 センは、たっぷり五秒間、ジックリと間をとってから、
 スゥウっと大きく、肺いっぱいに空気をためて、



「勝てるかぁああ!」



 と、魂からの慟哭で『全力の否』を叫んで、

「あんなもんに勝ててたまるか! ナメんなよ! 言っておくが、あいつ、たぶん、スーパーセンエースなみに強いからな! だから、むりむり! さよーならぁあ! また来週!!」

「スーパーセンエース? それってなんなのかにゃ?」

「いちいち説明するのも面倒だ! テメェで考えろぉお!」

 豪快にテンプレを暴投してから、
 センは、ヨグシャドーを横目で睨み、

(くそ、やっべぇ……あそこまでの強さかぁ……想定の12000倍ぐらい強いぃ……あれは、さすがに無理だなぁ……俺とあいつとの間には、働きアリとハイニューガ〇ダムぐらいの差があるなぁ……)

 現状を正しく認識するセン。
 『どうしようもなさ』の精度を受け止めると、
 頭が普通にクラクラしてきた。

(強くなれたと思っていた……いや、実際、だいぶ強くはなったんだが……)

 冷たい汗が背中を流れた。
 自信が根こそぎ溶けていく。
 眩暈がして、頭痛に見舞われる。
 肉体的な疾患ではなく、自律神経の失調。

 ヨグシャドーという、ありえないレベルの絶望に、魂魄がビビり散らかしている。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品