悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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12話 アニキ!


 12話 アニキ!

「……お前の言っていることが事実だったとして……それを、俺に言ったのは、なんでだ? なんの意味がある?」

 聡(さと)い男だから、気付く。
 『佐田倉』に真実を語ったところで、
 センにメリットは何もないということに。

 センの話が事実だとしたら、
 あまりにも状況レベル濃度がエグすぎて、
 佐田倉に出来ることなど何もない。

「八つ当たりついでに、不幸自慢したくなった……みたいな感じかな」

 そう言いながら、センは、
 死んだ笑顔で佐田倉を見て、

「どうだ? 俺は、可哀そうだろう? 俺ぐらい『可哀そうな人』はそうそういないぞ」

 冗談っぽく言っているが、
 本当に『壊れかけている顔』で、
 はははと死んだ目で笑うセンを見て、
 佐田倉は、普通にゾっとして、

「……だ……大丈夫か、お前」

 と、心配そうに声をかける。

「大丈夫だったら、『八つ当たり』みたいな『吐くほどダサいまね』は絶対にしねぇよ。大丈夫じゃないから……今、こうして、お前と向き合ってんだ……」

「……」

「ああ……しんどい……」

 無意味な愚痴をこぼしながら、
 センは、また、死んだ目で、はははと笑う。


 ★


 黒木に電話で、つい、キレてしまって、
 スタートダッシュで、しょうしょうモタついたが、
 しかし、そこから先の流れには、さほど変化はなかった。

 いつも通り、ひたすらアイテムを探しながら、
 一日、一日を積み重ねていく。

 ――それまでの『流れ』と、少しだけ違う点と言えば、
 日常パートにおいて、佐田倉が、センの付き人になった点。

 『上』から命じられての行動らしいが、
 佐田倉自身も、センの下につくことを望んでいるとのことで、
 『八つ当たりで親指の爪を剥いでしまった』という負い目があるセンは、
 佐田倉から、『ぜひ』と言われてしまえば、
 なかなか断ることができず、
 結果的に、この『周』限定だが、
 センは、非常に長い時間を、佐田倉と共にすごすことになった。

「兄(あに)さん、お食事の時間です」

「俺の方が年下なんだから敬語、やめてくれない?」

「すでに、数年をタイムリープに費やしている兄さんの方が、実質的には、年上だと思いますが?」

「物事の本質をとらえる際、『実質』という観点にフォーカスをあてるのは、決して悪いことじゃない。しかし、時には『目の前の現実』のみに注意を払った方が得策である場合もある。現状においては、特に、『質量を伴わない実質』よりも『目の前の現実』を大事にするべきだと、俺なんかは思うね」

「勉強になります」

「……」

 センが何を言おうと、
 『現時点における対応の方向性』を死守する佐田倉に、
 センは、普通に辟易しているが、
 しかし、それでも、諦めず、

「これから、事実だけでモノを語ろう。あんたは俺の先輩で、俺は、あんたの後輩だ。俺は確かにタイムリープという、イカれた状況に身をとしているが、だからって、俺とあんたの『戸籍上の年齢』が上下することはありえない。この先、何百回、何千回、タイムリープしようと、俺が、あんたより年下の後輩であることに変わりはない。よって、あんたは俺に敬語を使うべきではない。証明完了」



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