悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

73話 別次元のクオリティ。


 73話 別次元のクオリティ。

 閃拳ではない、ただのグーパン。
 『ラピッドがどうするのか』を見たがっているだけの一手。
 そんなセンの、遥かなる高みからの一手に対し、
 ラピッドは、

「ナメたまねをぉお!」

 憤怒を正しくエネルギーに変えて、
 センの拳に、カウンターの蹴りを合わせていく。

「ヒュゥ!」

 センは、楽しげに、口笛をふきながら、
 ラピッドの蹴りを、あえて、紙一重で回避しつつ、
 伸びのいいバックステップをはさんで、
 いい感じの距離をとってから、
 ラピッドに対し、

「いい動きだ……積み重ねてきたのが伝わってくる……」

 『本音』を口にした。
 『褒めている』というわけではない。
 ただ、思ったことを口にしただけ。

 夕焼けを見て、『めっちゃ赤いなぁ』と口にする、
 みたいな、そういう、たんなる直球の感想。

「壊れて膨れ上がっただけの『オメガども』とは違い、お前の攻撃は、それなりに重い……出力的には、オメガレベル500程度だが……しかし、『あのザコども』と違い、中身が濃い。薄っぺらな軽さを感じねぇ。丹念に積み上げてきた重みを感じる。お前みたいなのが、他に、少なくとも、35人はいる……それがゼノリカ……そう考えると、すげぇ組織だ」

 そこで、センは、ニィイイと、真っ黒な笑みを浮かべ、


「その全てを喰らい尽くせば、確かに、俺は、壁を超えられるかもしれない」


 などとつぶやきつつ、
 入念にストレッチをしていく。

「楽しみだ……俺の未来には希望しかねぇ。ゼノリカという極上のエサを平らげた時、いったい、俺はどうなっているのか……」

 そんなセンの発言に対し、
 ラピッドは、
 まっすぐに射貫くような瞳で、
 センを睨み、


「……イカれ野郎が……ゼノリカをナメるなよ」


 心からの言葉を放つ。

「ゼノリカとは……『全てを照らす光』という意味だ。あまたの絶望を、意地と覚悟で乗り越えてきた『命が放つ輝き』の結晶」

 『自分が所属する組織』に対する想いをぶつけるように、
 ラピッドは、

「貴様のような『イカれクソ野郎』に……ゼノリカが負けることなど、ありえない。あってはいけない!」

 魂魄を燃やす。
 本気の本気。
 手加減という概念を根こそぎ忘れ去る。


「僕は、ゼノリカの天上! 九華十傑の第十席序列35位! ラピッド・ヘルファイア! その意地と誇りにかけて、絶対に貴様をブチ殺ぉおおす!!」


 全身全霊の特攻。
 全てを賭した突撃。

 その『全力』に対し、
 センは、

「なるほど、美しいな」

 本音を口にする。

 ゼノリカの天上。
 その『輝き』を理解する。

「あの壊れたモンスターどもとは、『強さ』の次元が違う。『大きさ(サイズ)』では劣っているが、『質(クオリティ)』で言えば、てめぇの方がはるかに上だ。ラピッド・ヘルファイア。お前は強い」

 ラピッドの突撃を、サラリと交わすと同時、
 センは、彼の右腕をつかみ上げ、

「だが、そんなお前をも虫けら扱いできるぐらい……俺は強いんだ」

 言いながら、
 センは、螺旋を描き、
 ラピッドを、

「うぉおおああああああっっ!!」

 美しく、背負い投げしていく。

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