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お母さんは魔王さまっ~朝薙紗凪が恋人になりたそうにこちらを見ている~

詩一

第45話 ラ・ヨダソウ・スティアーナ

メロンに紗凪さなぎが泊まる事になった経緯を話す。
「遂にラストダンジョンにパーティで集まったという事ですね」
「いろいろすっ飛ばすとそう言う事になるが、別に討伐しないからな。後ここをラストダンジョンって言うなら、ずっとそこに寝泊まりしている勇者は相当図太いな」
扉のノック音の後、開く音がした。
そこにはぶかぶかのパジャマを着させられた紗凪が立っていた。
「これほどまでに戦力の差があるとは」
と、何やら呟いている。
「何のことだ」
「ほらこれ。ぶかぶかでしょう」
「そうだな」
「特に胸の辺りなんて、生地が伸びているの。きっとあのたゆんたゆんの巨乳に引き伸ばされたのよ。一体何センチあるのかしら。と言うか何カップなのかしら。この目で見たのに大き過ぎて解らなかった」
「見たって、一緒に入ったのか?」
「そう。最初は着替えを持ってきてくれただけだったんだけど、一緒に入りたいと言うから」
「そうか。それはうちの母さんが迷惑かけたな」
「ううん。比々色ひひいろ家にお邪魔させてもらっているのだからそれくらいは良いのだけれど。ただ、戦力の差を見せつけられて愕然がくぜんとしてしまったの。本当に同じ女性なのかと疑ってしまったわ」
そう言って自分の胸の周囲をまさぐる。
ぶかぶかのシャツが肌蹴て、鎖骨が見えている。
俺が自分の鎖骨の辺りをちょいちょいと指すと、彼女は襟を引っ張って肩を曝け出した。
「お前なあ」
彼女の悪戯っぽい笑みに、俺は溜め息を吐いた。
「話の区切りはつきましたか? そろそろ紹介して頂きたいのですが」
メロンが不意に喋り出した。
こんな急に喋り出して紗凪がびっくりしないか、と思ったが杞憂きゆうだった。
「ああ。これが燈瓏ひいろう君が言っていた天使のメロン」
「天使のメロンって言うとなんだかそう言う銘柄に聞こえてしまうが、まあそうだ」
「初めまして。紗凪様。格闘家としてのご活躍は勇者様よりお聞きしております。この度は勇者様のパーティに加わって頂き、誠にありがとうございます。魔王討伐と言う目標に向かい、一緒に頑張りましょう」
「初めまして。メロンさん。よろしく」
無挙動のメロンにうやうやしくお辞儀をする。
「メロンさんは、天使でいろんなことを知っていると聞いているわ」
「はい。私のお答えできる範囲であれば、知識をお披露目致しましょう」
「では、燈瓏君の前世を知りたい。彼の事だから、前世もそれはそれは素晴らしい人だったに違いないと確信しているのだけれども」
まずい。
これはまずいぞ。
確か前回聞いた時、前世の俺は近親相姦したがりの屑野郎だった。前世の事だから関係無いっちゃ無いが、なんか黒歴史を晒されるようでとても嫌な気持ちになるに違いない。
「紗凪、それは聞いちゃダメな事だ。天界の秩序的にも俺の前世を知らせるなんて、そんな事できるわけがないよな、メロン」
俺は紗凪に見えないようにメロンにアイコンタクトを送った。奴に目は無いが、こんな明け透けなウィンクしたら、流石に解るだろう。
「いえ、お教えできますよ」
こいつ空気読む事できなかったんだった!
俺はひざまず項垂うなだれた。
「どうしたの? 燈瓏君」
紗凪が怪訝な顔つきで俺の顔を覗き込む。
「最初に言っておく。前世の俺はあくまで別人だ。俺じゃあない。俺は前世の記憶などまるでない。それだけ覚えておいてくれ」
不思議そうな顔をして、メロンに向き直る紗凪。
「では、前世の勇者様のどういったところを知りたいですか?」
「前世ではなんていう名前だったの?」
「    です」
なんだ? 今の間は。
「紗凪、今聞こえたか?」
紗凪は首を横に振る。
「何て言ったの?」
「ですから……ああ、失礼しました。向こうの言語を向こうの周波数で発音してしまいました」
そうか、異世界って事は言葉も違うし、咽喉の作りも違うんだ。
「音だけを取るなら、ラ・ヨダソウ・スティアーナです」
えええええ!
「それは日本語に翻訳するとどういう意味になるの?」
「切れ痔を痛がる者、です」
ええええええええええええ!
「そんな出鱈目でたらめな翻訳あるかよ!」
「出鱈目では在りませんよ。だいたいこちらの人間の価値観で物事を推し測るのは良くないですよ。向こうでは割とポピュラーなネーミングなのです」
紗凪は俺の尻を不安そうに見つめる。
いや、仮に名前がその通りであったとして、今の俺の尻事情は関係ないから。
「それで、何をしていたの? 職業は? やはり勇者なの? スティアーナは」
スティアーナ! 今後それで行く気なの!?
「いえ。勇者様が勇者様なのはこの世界だけでございます。前世では、そうですね、こちらの言葉で言うところのプー太郎、ニートと言ったところでしょうか」
紗凪は俺を見る。
だから前世の俺は俺じゃあないんだって。
「質問を変えるわ。趣味とかは?」
「趣味に分類されるか定かではございませんが、好きな事は性交ですね」
「は?」
「口癖はおっぱいとセックスでした。勿論、こちらの言葉に翻訳するとですが」
職業ニート、趣味性交、口癖はおっぱいとセックス。
最悪だ。
考えるまでもなく最悪だ。
紗凪の視線が痛い。
「それでも、勇者に選ばれたって事は、きっと死に際良いことをした。という事になるのかしら」
「いえ、関係ありません。死因は栄養失調です」
「誰かを助けたわけではないの?」
「詳細を説明しますと、スティアーナ氏は村人の女性をレイプし」
「ちょちょちょちょちょちょっと待った! なんだその出だしは! まずはじめにの感覚でいきなり大罪ぶっ込んでくるなよ!」
「やったのはスティアーナ氏ですよ。私はただ説明をしているだけです。それに、向こうの世界では日常茶飯事です。そもそも、ここ日本においてもほんの数年前まで、夜這い文化が在ったくらいですし、現在でもインドのとある地方では女性に人権が認められておらず、レイプした側の男性は罰せられないのが真実です」
「その地域の女性は可愛そうだよな。でも、日本の夜這い文化って、聞いた事ないぞ」
「ほんの1200年前くらいの話です」
「今事ここに至っていきなり天使感出すなよ! 人間にしては随分昔の話なんだよ、それは!」
「で、その後スティアーナはどうしたの?」
「女性を独り身だと思い込んでいた彼は白昼堂々していたわけですが、彼女には旦那が居まして、その旦那に見つかり、スティアーナ氏は逃げました。ズボンを下ろしたまま。村の外まで逃げたところで、石に躓いて倒れ、頭を打って失神します。そして彼が倒れた先には運悪くスライムが昼寝をしており、長時間触れ続けた為、体内の栄養を全て吸い尽くされ、絶命しました」
「つまりなんだ。俺は、ゲホンッ。スティアーナは、罪から逃れる為に下半身丸出しで走って転んで寝ているスライムに突っ込んで自滅した、と」
「要約するとそうです」
俺ZAMAAA!
……嗚呼。やはり前世の俺は無能で屑だった。その再認識の時間だった。
「燈瓏君、いくらなんでもちょっと引いたわ」
「いやいやいやいや! 違うって! 最初にも言ったが、前世と現世は関係ないんだって! やめろやめろ! ジト目で見るのはやめろ! 前世差別反対! 前世ハラスメント反対!」
俺が自由解放運動をしていると、紗凪は何かを悟ったらしくにハッとしたような顔になった。
「いけない。きっとこういう事からカースト制度は生まれたのね」
言われてみれば前世差別なんだな。カースト制度って。
「お二人とも勘違いされていますが、私や我が主から見れば現時点での勇者様とスティアーナ氏には特別変わりはありませんよ。寧ろ、スティアーナ氏の方がより好戦的である為、討伐に向いているかと思われます」
「前も言ってたな、それ。と言うかそれならなんで完全に生まれ変わらせたんだよ。お前達からしてみればその所為で魔王討伐が滞っているんだろ? いっそそのままワープさせちまえば話が早かったのに。そういうラノベも読んだことあるぞ」
「ライトノベルはあくまでフィクションです。勇者様に魔王討伐の使命を思い出させるためのきっかけ作りでしかありません。実際問題、もしもスティアーナ氏をそのままこの世界にワープさせていたら死亡して終わりですよ」
「え。なんで」
「今勇者様が存在する世界の重力を1とした時、スティアーナ氏が存在していた世界の重力は0.2。更に気圧を1とした時は0.3程度。そして酸素濃度もこちらが21%に対して、あちらは7%です。条件の違う世界へワープさせたらどうなるでしょう」
「どうなるんだ」
「まず重力が5倍になるので全身の骨が折れて死にます。よしんば生き延びたとしても、3倍以上の高気圧と高濃度の酸素によって内臓の抗酸化システムが追い付かず、酸素中毒で死にます」
「話が違うじゃあないか」
「ですからフィクションはあくまでフィクションなのです。勇者様は私の話は半信半疑の割に、こちらの世界の書籍から得る情報だけは疑いもせず信じますよね」
まあ、地球人だし、仕方ないよね。

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