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お母さんは魔王さまっ~朝薙紗凪が恋人になりたそうにこちらを見ている~

詩一

第19話 信じたから

会計を済ませて帰ろうとしたところで、俺だけ呼び止められる。
霧裂さんにはエントランスで待ってもらい、俺は紗凪の所へ行く。
「なんだよ」
「燈瓏君。私が居ない間、何もされてない?」
紗凪は俺の周りをぐるぐる回りながら、体の各部位を見ていく。
「なんで俺がされる側なんだよ」
「する側だとでも言うの?」
「そうは言ってない」
「えっと、彼女なんて言うんだっけ?」
「え? もしかして霧裂さんの事か?」
「そうそう」
「同じクラスの人間の名前と顔くらい一致させておけよ!」
同じセリフを今日昼にも言ったな。薄拂さん以外にも失礼な奴がここにも居たとは。友達として情けない。
「霧裂さんとお友達になるのは賛成するし、私も仲良くなれる様私なりに努力はする」
「そうか。そりゃよかった。よろしくな」
俺が笑って紗凪を見ると、彼女はそれを真っ直ぐ受け止める。睨むでも見つめるでもない。二つの正方形の面と面を合わせる様に、俺の視線をかっちり捉えて離さない。
「でも、それ以上、つまり恋人になってはいけない」
「どうして?」
「だって私と燈瓏君は婚約しているのよ?」
「待て待て待て待て! やっぱりそう言う事になっていたのか」
俺は紗凪の両肩に手を置いて宥める様に言う。
「あのな。あの時は順番関係なく一気に言われたから何も言い返せなかったが、俺は一言も承諾の意思を表明してないぞ」
「問題ない。だって私が魔王を討伐したら、燈瓏君は私にメロメロになるもの」
ふふん、となんだか得意げだ。
俺はため息を吐く他ない。
「まあ、その、なんだ。取り敢えず陽織さんと付き合う事は無いから」
「陽織さん?」
「ああ、霧裂さんの下の名前」
彼女は苦り切ったような顔で俺を見る。何か勘違いしているようだ。
「友達として紗凪と同じように扱って欲しいと言う彼女からの要望に応えたまでだ」
「そう。燈瓏君は正直だし、信じるわ」
ガクッと体勢が崩れる。
「お前は疑り深いのか浅いのかどっちなんだ」
「そもそも燈瓏君の事を疑ったりはしてない。こちらから彼女とは恋愛しないでと要望を出しているだけ。その要望の前に彼女と何かしらあったのなら困ったと言うだけ。それに貴方の事は信じているから全く問題ない。仮に貴方が嘘を吐いていたとしても、私は騙されていないから」
「どういう意味だ?」
「意味も何も、信じると言うのは、そう言う事」
「例えば俺がそれを利用して紗凪を貶めても、同じことを言うのか」
「そう。だって敬虔けいけんなクリスチャンはイエスの言葉は余すことなく信じるでしょう? この世にもしも神様が居なかったとしても、クリスチャンはイエスを疑いもしなければ、糾弾する事もない。だって彼らはもう既に救われているから。疑いも糾弾も意味の無い事だと言うのを理解しているわ。勿論ミーハーなクリスチャンは発狂すると思うけど」
話がデカくなっているが、それだけ俺の事を信用しているという事でいいのだろうか。
神と言う単語を聞いて、ふと、メロンの事を思い出す。あいつと紗凪を会せたらなんか起きてはいけないケミストリーが起きそうで怖いと思った。

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