妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第40話 ボウリング__ぷ。!!!


そして一同3階にあるボウリングエリアへ。
ここはワンフロアが丸ごとボウリングとローラースケートのコーナーとなっており、この建物の目玉施設の一つとなっている。
今は全国展開し大規模なチェーン店となっている『ターンスリー』も、元々は一つのボウリング場だったらしい。

それがここまで大きな施設になるのだからすごいことだ。
さぞかし大変だったろうな。

「じゃあ順番決めようぜ」

「ジャンケンで」

ほい! ということで。

泰斗

流湖

真奈

と、

理瑠





の順番で投げることとなった。

時間がもったいないのでレーンを二つ使って泰斗からと理瑠からで同時進行だ。

「じゃあ俺からだな」

「私の腕前見ていてくださいね、お兄さん!」

と、二人同時に投げる。

「あっ……」

「おお〜〜、今の見ました!? 見ましたかお兄さんっ」

泰斗は一発目からガーター。
そして理瑠はなんとストライクだ。

「おお、凄いじゃないか」

「えへへー、じゃあご褒美に頭撫でてくださいよー」

「はあ?」

「理瑠、ずるい!」

「ふふん、真奈もストライク取ったらおねだりできるかもよ?」

と、腕を組み偉そうにいう。

「いや、しないからな」

「「ええー」」

と声を揃えて抗議してくる。そういうところは協調するのな、君たち。

一方の泰斗といえば、霞にこれでもかと慰められていた。この二人、今日は何をしていてもイチャつくな。

「霞たち、すごいね〜……好きな人同士ってあんなにベタベタできるんだ」

流湖も半ば呆れながら言う。

「もう次投げてしまっていいんじゃないか?」

「うんそうするね。応援してね、伊導くん!」

「おう」

そして霞も、理瑠に説得され渋々投げる準備を始める。

「てりゃー!」

「泰斗のぶんもっ!」

流湖は、ピンを5本。ただし真ん中を通ってなので端の方に残ってしまった。

霞はというと、端っこの方に行ってしまったが、なんと将棋倒しで残り一本だ。この分ならスペア狙いは簡単だろう。

「うおお、霞流石だな!」

「うん、褒めて褒めてっ」

泰斗は霞に密着し、頭を撫でている。やはりこうなるのか……まあいいか、俺たちが口挟むことじゃないもんな。

「むむー、微妙な感じになっちゃったね〜」

「まあまあ、諦めたらそこで勝負は終わりなんだぞ」

「なにそれ、どこかで聞いたことあるよ? ふふっ、でもありがとう〜」

と流湖は笑顔を浮かべた。

「じゃあ最後は私たちだね」

「ああ、そうだな」

せーの、と同時に投げる。

「ああっ」

「おお」

真奈は泰斗と同じくガーター。

俺はピンが右端残り二本になった。

「結構やりますねー!」

理瑠が小さく拍手をしてくれる。

「ああ、ありがとう」

「ううっ……お兄ちゃん、私も慰めてください……」

真奈が瞳を潤わせそう懇願してくる。

「お兄さん駄目ですよ、それ演技ですからー」

「え?」

「理瑠!」

妹は自らの親友に詰め寄りポニーテールをぺしぺしと当てる。どうやら本当に演技だったようだ。

「お兄さんって意外と騙されやすいタイプですか? 女性選びは慎重にした方がいいですよー。ほら、ここに丁度いい女が一人!」

隙あらばアピールしてくるなほんと。ベクトルは違えども、泰斗たちといい勝負だよ……

「じゃあ二回目いこー!」

と泰斗が元気よくいう。慰めてもらって力が湧いてきたようだ。恋人パワー強し。

「では今度こそ……!」

「よっとなー!」

泰斗は気合を入れて結構な速さで投げ。

理瑠は変な掛け声を出しながら投げる。

「おおおお、まじか!?」

「ええっ、そんなー」

一回目とは逆、泰斗がストライクで理瑠がガーターとなってしまう。

「泰斗すごいっ、泰斗好き!」

「へへっ、どうってもんよ」

霞はもはや某国民的アニメスタジオの作品に出てくる人魚姫のように片言で泰斗に抱きついた。この二人は放っておこう、心が死にそうだ。

「お兄さん〜〜」

理瑠はどさくさ紛れに俺に抱きつこうとしてくる。

「はいはい、理瑠はこっちにいきましょーねー」

「あれーーー」

だが、すぐさまやってきた真奈にやって背中を引き摺られて行った。

「理瑠ちゃんもなかなか積極的だね〜、羨ましいな」

「え? 俺がか?」

「あ、う、うん。まあね〜、あはは」

変なやつだ。女子に迫られたい趣味でもあるのだろうか?

そしてレーンの前にさささっと向かっていく。

「私も負けないっ!」

「うーん、行けるかなあ」

霞と流湖の二投目。

霞のボールは狙い通り端のピンを倒しスペアに。

流湖のボールはスピンがかかっていたものの、若干狙い通りには行かず一本残ってしまった。

「ああっ、やっぱり〜……ううっ」

「よしっ!」

「霞偉いぞー、よしよしよし」

「えへへ」

お尻から尻尾が生えていたらブンブンと振り回しているであろう喜びようだ。あれは明らかにピンを倒せたことよりも泰斗に頭を撫でられていることに喜んでいる。
少し前までは、真面目そうな女性だと思っていたが、付き合った途端ドロドロのスライムみたいになってしまっている。

恋をすると人は変わるというが、霞たちの場合は話を聞くに元々イメチェンして自分の世界を変えようとした結果、好きな人に出会えたのだから二回生まれ変わってるのと同じなんだな。努力して得られた恋仲なのだから、素直に祝福を送るべきだとは思う。

但し、人目を憚らずいちゃつくのはやめてほしいが……遠くのレーンで遊んでいる男性グループが血眼で泰斗のことを睨みつけているぞ。あれはきっと呪いでも送っているに違いない。

「惜しかったな」

「ううーん、やっぱり端に残ると難しいよね〜」

「そうだな。でも初めてにしてはよく出来た方じゃないか?」

「そうかもね! よしっ、残りのゲームはもう少し得点あげていこう! 終わるまでにせめてストライク一回は出したいな〜」

「うむ、頑張れ。じゃあ次は俺だな」

「行こうお兄ちゃん、理瑠のことはしっかりシメておいたから大丈夫だよっ」

「え?」

見ると、理瑠は椅子に座って項垂れ、眼を見開いて頭を抱え、ぶつぶつと何事かを呟いている。
なんだあれは、一体なにを言われたら人間あんな状態になってしまうんだ……

「よし、いけっ!」

「ていっ!」

俺は端のピンを狙いなげる。

「げっ」

だが、思ったよりも真っ直ぐ進んでしまい、擦りもせずにボールはそのまま流れて行ってしまった。

「くそっ、しまったなあ」

「お兄ちゃんやったよ! ストライク!」

「おお、まじか! 凄いな真奈」

「うんっ!」

とツインテールをぴょこぴょこ左右に揺らす。
ガーターからストライクだから、随分と幅は大きいがよくやった。

「マナサマ、サスガデス。オメデトウゴザイマス」

「理瑠ありがとー」

と彼女に抱きつくが、片言で喋った後は無反応だ。こ、怖い……




そうして競技を続け、結果は。

「ふふん。ぶい!」

理瑠が一位。

「まあまあだったかなっ、もうちょっと上手くできたかも?」

霞が二位。

「お兄ちゃんより上だったね、ふふふー」

真奈が三位で。

「くっ、あそこでダブルガーターなぞ出さなければ……」

俺は四位だ。

「ぎ、ぎりぎり勝てた……」

流湖が五位になり。

「くう……こんなはずじゃなかったのに!」

そしてぶっちぎりの最下位で泰斗が六位となった。ストライクはあの一回でまぐれになってしまったのが痛かったな。

「じゃあ罰ゲームどうするの〜、泰斗くん今からヒヤヒヤだね〜」

「お手柔らかにお願いします!!」

「大丈夫、私が守るからっ」

案の定いちゃつく二人は風景にしておいて。

「そうだなあ。とりあえず、昼飯食べてから考えようか」

「あっ。お兄さん、ゲームセンターでの約束! 忘れませんよね?」

そういえばそうだったな。

「ああ、昼飯奢るって話だろ? わかってるよ。それにボウリングも優勝だしな。なんでも好きなもの食べていいぞ」

「なんでも? じゃあおに--」

「理瑠?」

理瑠が不穏なことを口にしようとしたとき、真奈がすかさず後ろに立って肩をポンと叩く。

「……ハイ、ムコウニイッテキメマス」

そうした方がいいと思うぞ、うん。

俺たちはボウリング場を後にし、4階へ向かう。

          

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