俺の幼馴染が勇者様だった件

ラムダックス

第30話


「おお、先程ぶりだな、ベルよ。改めてそなたのこの度の働きぶり、誠に感謝する」

「はい、国王陛下。ありがたきお言葉」

私達は再び謁見の間へと来ていた。私は勇者という立場上、陛下とは跪くのではなく普通に立ち会う形での面会だ。

「他のみなも、改めて礼を言うぞ。よくぞ自らの身を顧みず、世界のために戦ってくれたな」

陛下が私の後ろで跪く仲間達をねぎらう。みんなも、それに合わせて返礼する。

「--うむ。さて、凱旋の件について話があるのだ。まずは、壮行会のように庭で祝勝会を催そうと思う。その前に、王城までのパレードをしてもらいたいのだ」

「パレード、ですか?」

「そうだ。いきなり庭で凱旋の報告を行うよりも、民が自らの目で勇者の帰還を目撃する方が、人々の勇者に対する求心力への労いになるだろう。非力な民は勇者の力にその命を託したも同然、安心という点でも、その方が良いと思うのだ」

「なるほど……最もな話で」

ドルーヨが静かに呟いた。周りのみんなもそれに対して頷きで返す。

「そなた達は転移魔法とやらが使えるらしいな。それは何処にでもいけるのか?」

「はい、一応は」

転移魔法は私の能力の一つだ。あらゆる物質を任意の場所に転移させることができる。その物質の数や転移先の距離など、規模によって使う魔力も比例して上がっていき、魔力が足りず失敗したら転移させようとした物質が半分に分かれてしまったり、転移した先でグロテスクな形になってしまうこともある、危ない魔法だ。しかし、私の魔力を持ってすれば、仲間達を転移させるくらいはどうということはない。

「王都の北方1キロ先ほどから、王城に向かってきて欲しい。出来るな?」

「仰せのままに」

うん、それくらいなら全然大丈夫だ。

「あの、アクーダとマレイのことはどうするおつもりで……」

ジャステイズが恐る恐る発言した。

「うむ……旅の中で亡くなることは仕方がないことだ。栄誉の戦死、ということで丁重な扱いをなそう」

「はっ、ありがたく存じます」

「お主達も辛いものはあるかろう。しかし、魔王を倒してこの国へと帰ってきてくれたことは確かな事だ。皆の出身国にもまた礼を言わなければな。さて、ベルよ、一度下がるが良い。この後もう少し官僚と話を詰めなければならないからな」

「「「「「御意」」」」」

私達は、謁見の間から退室した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺は、王都の北方20km地点に来ていた。

「さてさて……あと1日もすればここに来るはず」

王都オーネからテナード侯爵領の最大都市バッスまでは約50km。バッスからこの草原では30km位ということだ。朝方に出発したと考えて、1時間に3キロの進軍、1日で10時間進軍するとしたら、ここに着くのは明日の朝から昼にかけての間。俺はその間で作戦を練って下準備をしなければならない。

「さて……まずは罠からだな」

俺は手始めに導魔線を地面に引いていく。自らの魔力を地面に引き、指定した魔法が発動されると、線を伝って一気に遠方まで魔法の効力を及ぼすことができる、完全な俺のオリジナル魔法だ。そこそこの魔力量が必要だが、俺の今のレベルでは何てことはない。沢山の敵を一度に相手出来る点は、端から見たらチートだろうがな。

「一応レベルの確認しておくか。前確認したのは1年前だったか。もう確認しなくても魔力が有り余るようになってしまったからな。そろそろ地球の技術をこの世界に持ってきてもいい頃合いかもしれない」

この戦いが終わったら、手始めに照明からだな。この世界では電気なんてものはなく、照明は専ら生活魔法を使って数時間灯すことが出来るものが使われている。俺のクリエイトのギフトで半永久的に使える照明を開発するつもりだ。近現代の技術は魔力をかなり使うことが分かっているからな。後にしようと思い今まで開発していなかったのだ。別に俺一人なら生活するのに困らないが、平和な世になったのだし、ここらで内政チートを発揮してもいいだろう。

「さて、ステータスっと--」


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ヴァン:男/16歳
種族:人間

レベル:12
経験値:22504/32768

HP:6400/6400
MP:196500/204800
攻撃:8192
防御:2048
魔攻:4096
魔防:4096
速さ:8192
幸運:1024

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◯スキル
・経験値倍々ーーレベル4(通常の8倍)
・無限倉庫--レベルMAX
・魔力強化--レベル2
・筋力強化--レベル3
・幸運値抑制--レベル1

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○ギフト
・クリエイト
・神の祝福<グチワロス>
・女神の祝福<ドルガドルゲリアス>

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◯覚醒
・魔法適性MAX
・???
・???

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○称号
・転生者
・神に祝福されし者
・キス魔
・国軍指導官
・エセチート野郎
・不屈の心

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「……うん、エセチート野郎って何だよ!」

それに、覚醒は未だ1つだけだ。

「チートを使ってないからとか?   それとも俺の能力なんてチートではないということか……」

充分チートだと思うんだがな。普段周りの人々をサーチの魔法で鑑定してみても、このステータスを参考にする限り俺の100分の1もない人々がほとんどだ。国軍の兵士でやっと届くかどうかくらい。

「はあ、まあいいか。幸運値抑制は何なんだ?   1年前に確認した時はなかったのだが。幸運も上がりすぎると良くないのか」

恐らく自然発生的についたスキルだろう。上の強化系もいつの間にか習得していたしな。

「さて、魔力も確認できたし作業に入りますか」

俺は地面に巨大な魔法陣を引いていった。


--そして二時間後、空がすっかり暗くなった頃。

「……ふう、これで終わりか」

その魔法陣の大きさは、半径が1.5km程だ。これで兵士はすっぽり入るはず。

「ふう、ひと休みひと休み」

俺は無限倉庫から夕食を取り出した。無限倉庫は俺が闇魔法から作り出した、これまたオリジナルの魔法だ。違う空間に繋げることにより、幾らでも物を収納することができる。空間の時間は基本止まっており、任意で進めることもできる。1つ欠点があるとすれば、生きている物は生身のままで入れることができないということだ。もし緊急事態が発生しても、この空間に避難、というわけには行かないということである。

「今日はソーセージにパン、シチュー。いつものメニューだ。変に変えて体調不良になっても困るからな」

兵糧は栄養重視、これ基本。


俺は地面にあぐらをかき、少しばかり英気を養った。

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