二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!

南野雪花

第142話 解決したと思ったら

 村の青年団の団長であるリゲンは身柄を拘束され、村役場の牢屋に入れられた。
 ガイリア王国なら郡都か王都の司法官へ身柄が引き渡されるところだけど、セルリカ皇国では村長も司法権を持っているらしい。

「リゲンを拘束してからというもの、盗賊の被害はすっかりなくなりましたね」

 そして三日。
 村を恐怖のずんどこ(笑)に落としていた盗賊団は消えてしまったようだ。

 街道での被害もゼロ。
 まあ当然だよね。

「しかし、青年団がぐるになってこんな茶番を演じていたとは」

 頭を抱えるビャクである。
 あきらかになった事情としては、泥棒騒ぎはぜんぶ青年団の仕業。実家から家畜だの小麦だのを勝手に持ち出したのが泥棒の仕業だと思われたのだ。

 それで騒ぎが大きくなってきたから、街道に出て旅人や行商人から金をせしめることにした。
 普通にハクゲンの村の者だと名乗ってね。

 村長たちはそんなこと知らないから、当然のように盗賊の仕業だと勘違いする。
 これが事件のあらましだ。

「なんだってこんな馬鹿なことをしたのか……」

 動機の自白は得られていない。
 頑として黙秘を続けている。

「娯楽のない田舎だから、なにか面白いことをしたかったとか」

 俺は適当なことを言って笑った。
 リゲンとやらの為人も知らないからね。他に言いようもないんだ。
 動機は判ってないけど事件は解決ってことで良いだろう。

「では、俺たちはそろそろ出発しますね」

 報酬は、昨日のうちに守備隊から届いている。
 たいした額ではないが、いまの『希望』の財政状態から考えたら、どれほどの大金だってたいした額ではなくなってしまうのだ。

「お世話になりました」

 ビャクの見送りで広場まできたときだ。

 風切り音とともに、地面に矢が突き立つ。
 どこから射られた?

「メグ!」
「周囲に気配はないス」

「ミリアリア!」
「魔力反応ありません」

「サリエリ!」
「射手発見~ 十町(約一キロ)むこうの森の中だよぅ」

 のへーっと指をさす。
 ていうか、十町ってあんた。そんな遠距離から狙ったのかよ。
 とんでもない技倆である。

 それを見つけちゃうサリエリの精霊魔法もすごいけどね。

 足元に視線を落とせば、矢には紙がくくりつけてあった。

「矢文だな」

 広げてみる。

『冒険者諸君。誤認逮捕ご苦労様。リゲン君は我々の仲間ではないよ。その証拠に物資強奪はまた起きる。今夜参上するので、ぜひ警戒してくれたまえ』

 なんともふざけたことが書きつけてあった。

「予告状ですか。不思議な不思議な盗賊団ですね」

 やれやれとミリアリアが肩をすくめた。




 本来、予告状なんか出す理由はない。
 強いてあげれば時間を指定することによって、それ以外の時間帯の警戒を緩くさせるとか、そのくらいだ。

「それだってほとんど意味ないのん~」

 サリエリの言葉に頷く。
 そもそも相手のいうことを馬鹿正直に信じる奴がいるかって話だ。

「普通に考えれば、リゲンというのはやっぱり盗賊団の仲間だから、身柄を奪い返しにくるってところですが」

 ミリアリアが首を振る。
 自分でも筋が通ってないと判っているからだろう。

 盗賊団なんてものはない、という結論にはすでに至っていたのだ。
 蒸し返して、やはり盗賊団は存在すると印象づける意味が判らない。

 そしてリゲンの身柄が欲しいなら、こんなタイミングではなく俺たちが村を去ったあとでこっそりと奪還すれば良いのである。
 こんな鼓笛隊の伴奏を付けて行進するような真似をする意味がない。

「わけが判んないねー!」

 むっきーってアスカが暴れる。

 うん。
 お前さんは難しい話に入ってこない方が良いよ。混乱するだけだから。

「メイシャ。なんか天啓とかないか?」
「そんなに都合良くは起こりませんわ」
「そりゃそうか」

 メイシャの微笑に頭を掻く。
 神頼みというのも、軍師としては問題ありだろう。

「ネルダンさんもさっぱりわかんない感じスか?」
「判らないな。筋が通るように状況を整理することはできるが、かえって判らなくなってしまう」
「参考までに、それを聴いてみたいス」

 メグの言葉に他の四人も頷く。
 良いんだけど、ほんとにわけがわからなくなるだけだぞ?

「まず、盗賊団なんかいない。この前提を変える必要はないと思うんだ」

 青年団連中の自白もあるしね。

 となれば、盗んだものや奪った金をどこに持って行っていたか、という部分に、鍵があるんじゃないかと。

 仮説。森の中に誰かが住んでいて、青年団はその人のために食料とかを用立てていた。
 頼まれたのではなく自発的に。

 その結果としてリゲンが犯人として捕まってしまった。
 森の中の誰かはそれを知って、助けなくてはならないと計画を立てた。

 それこそが、やはり盗賊団はいるのだというストーリーを走らせること。
 だから殊更に盗賊団とリゲンは無関係だと強調した。

「それってつまり、リゲンを助けるために自分が泥をかぶろうってことですか? 母さん」
「そういうことだ。筋を通すと意味不明になってしまうんだよ」

 だから、俺の推理は当たっていない。

「んにゅー? それであってると思うよん~?」

 のへーっとサリエリが笑った。
 固有名詞を変えれば判りやすいよ、と。

 どういうことだ?



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