ここが異世界なんてありえない!!

瑠香

なんで……

「あぁーーー」
寝ていたであろうベットから飛び起きて叫んだ。叫んだと言うよりは無意識で。
こう叫びたくなるのは当たり前。
みなさんは信じられますか?
気づいたら知らぬ部屋にいたなんて。
しかも記憶が無い。
ベッドの上に座り直し、自分を少し落ち着かせる。
この状況を思い出さなければ。
脳みその片隅まで意識を当てて
「えっと……」
何回も思い出そうとしているのに。




これは5時間前の話。
成乃しげのーいつまで覗いてるの」
「ちょっと待って。確かここにネズミが逃げ込んだと思ったのに」
私、加山かやま成乃は家の天井裏のネズミを探しております。
正確には幼馴染の小山 梨莉こやま りりの家なんですが。
ねずみ嫌いの梨莉から呼ばれて早30分。
全然見つけられません。
「それよりこの隙間何?」
私の近くに丸い穴が空いている。
直径20センチくらいだと思う。
人差し指を入れたり抜いたりしてみる。
なにかにかじられたようなギザギザ。
「え?私の家隙間無いはずだよ?」
と梨莉は言うが、明らかに穴。この大きさを見間違えるわけが無いから。
「いや、絶対この隙間からネズミ入ってきたって。
塞いだ方が良くない?」
「ちょっと待って。ガムテープ持ってくるから」
ドドドドッ
そう言って走って階段降りていった。
天井裏を繋いでいる梯子の下にいた梨莉は1階にあるリビングに行ったのだろう。
「そう言ってもこの穴、元から空いてたんか(ネズミに)食べられたんか」
ふと呟くと何か視線感じた。
45度振り向いてみるも誰もいない。
が、また穴を見つけた。今度は一円玉くらいの大きさか。
「梨莉ーなんかこの家ネズミ多そうだよ」
下の階まで声が届かないのか何も返事はない。
気になったのでもう一つの穴も見ようと四つん這いで動いた。
それにしても天井裏は狭い。
私は身長が160cm超えているから頭をぶつけそう。
身長が150cm少ししかない梨莉が入るべきなんだけどな。
それに、ミシミシ言うから怖い。
こんなことしてると愚痴しか出てこなくなってしまう。
顔を横に数回振って両手で顔を叩いた。
これ終わったら奢ってもらえばいいや。
そう思いながら穴の方に視線を向けた。
「なんかこの穴は小さい」
またも呟いたが、その呟きと同時に私の記憶は無くなった。




「あ、梨莉の家にいたんだ。ネズミの駆除で。」
何となく思い出した。
あの日は定期テストがあったから高校が早く終わったんだ。
その後梨莉と遊ぶ予定だったんだけど、ネズミがいたって即呼ばれて。
その後が全然思い出せないや。
まぁ、その経緯はどうでもいいとしても。
「ここどこ!?」
こっちの方が大事だ。
見渡してみるとベッドとトイレとキッチンがある。
東の方向にあるキッチンの前に窓があるけどボロそう。
そこから陽が入ってきて明るい。
ただ、ここには電気がないから夜になったら危険。
スマホを取り出して時間を見る。
「16:30か。あと少しで日没か。」
今は夏なので陽が長いことが救い。
それまでにここからでなければ。
キッチンと真反対のところにドアがある。
外に出たいとドアノブを捻ってみるが
「あ、開かない」
鍵がかかっていた。
どうやら閉じ込められたようだ。
自分の格好を見てみると高校の制服だ。
しかし、梨莉の家に行った時は私服だったような……
ぐぅー
「あーお腹すいた」
そういえば朝から何も食べていなかった。
キッチンの前にある窓に手をかけて右に押すがビクともしない。
キッチンの周りを見渡しても食材はない。
冷蔵庫がないのだ。
「これ、キッチン置いてある意味あるのかな?」
正当な疑問だと思う。なんのためのキッチンなのか。
「そもそもあんなに叫んでも誰も来ないなんて変だよなー」
たとえ監禁されていて犯人がいたとしても、あんなに叫べばうるさくて様子を見に来るだろう。冒頭で大分叫んでいるのだ。
ということは無人か?
私は監禁されているのか?
監禁だとしたら辻褄が合う。
この質素な部屋で冷たい床。
生活するには不便だから。
ここに来てから何一つ謎が解けていない。
「おーいだれかー」
とりあえず誰か来て欲しい。
私一人の思考能力だと限界というものがある。
なにか違和感があるけどそれが何か分からない。
声が低いような……
「ニャー」
壁の向こうから微かに猫の鳴き声も聞こえる。
少なくとも外に面しているのか。
地下でもなく2階でもなく1階にある部屋か。
「あ、助けを呼ばなきゃ」
携帯の存在を思い出した。
LIMEや電話で親に連絡できる。
その期待を込めて携帯の電源を入れるが
「わっ圏外か。
時間見る時には全然気づかなかった」
アニメでありそうなくらい大袈裟に肩を落とした。
「この部屋歩き回ってたら電波通るところあるかな」
少しの望みをかけて6畳程の部屋を歩き回る。
が、案の定何処も圏外の表示が出たままだった。
「お腹減るからあまり動かない方がいいか」
空腹を紛らわすかのようにベッドに横たわった。
寝ればどうにかなるでしょう。
この時の私はまだ甘い考えが抜けきれていなかった。

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