魔法高校の聖騎士~楽園の鳥籠で天使は嘲笑う~

天羽睦月

第37話 本部へ


「そうなの? 人間って柔いのね」
「繊細だからね」

 そんな会話をミサとしながら夕食を食べ終えた出雲は、楓と琴音と談笑をした後に自室に戻った。
 自室に戻った出雲は、ベットに寝転がると疲れたと小さな声で呟いた。出雲はミサに話しかけると応答がないことに気が付いた。

「ミサさーん? ミサさーん? 寝ているのかな?」

 出雲は目を閉じて意識を集中させると、ミサが寝ている姿がうっすらと浮かんだ。

「寝てるんだ。そりゃそうか……俺の傷を肩代わりしてくれたり、代わりに戦ってくれていたから仕方ないか……」

 出雲はミサにありがとうと言うと、自分も寝る支度をし始める。疲れたと言いながら寝る時間になると、出雲は布団の中に入る。

「明日は確か魔法騎士団の本部に集合だったな……」

 明日のことを考えながら出雲は深い眠りについた。
 寝ている最中、夢を見ないで熟睡をしていた出雲はハッとした表情をして目を開けた。

「今何時!? もう朝になったの!?」

 窓から部屋に入る日の光で出雲は目が覚めた。
 夢を見ることなく熟睡をしていたようで、枕元に置いていたスマートフォンの画面に表示がされている時間をすぐに見た。

「朝6時か……熟睡してて一瞬だった……起きないと……」

 伸びをして欠伸をする出雲。
 ベットから起きるとリビングに移動をした。そこには既に楓と琴音が食卓の椅子に座っていた。

「おはようーお兄ちゃん!」
「おはよう琴音! 爆睡してたよー」

 出雲が琴音におはようと言うと、琴音が爆睡してたと言う。その言葉を聞いた出雲は、起こしてよと軽く怒った。 
 
 琴音に怒ると、楓が爆睡しているのを起こしたくなかったんでしょと出雲に言った。出雲はその言葉を聞くとごめんと琴音に謝る。

「大丈夫だよ。お兄ちゃんの寝ている姿を見れたからね!」
「なら良かったよ。あ、そろそろ食べないと遅刻しちゃう!」

 出雲は楓が作ってくれた朝食を食べ終えると、すぐに家を出ることにした。出雲は二人に行ってきますと言うと、気を付けてねと声を揃えて言ってくれた。

「行ってきます!」

 二人の言葉に元気よく返答をすると、出雲は魔法騎士団本部を目指す。景昌に指示された魔法騎士団の本部は、この国の中心部にある。
 最寄り駅は東都駅であり、そこには国の中枢機関やそれに関連する企業が立ち並んでいる。

 魔法騎士団の本部は中枢機関が立ち並ぶ中の一角に建設されており、周囲には各省庁の職員が頻繁に出入りしている姿が見える。

「ここに集合なの? 本当?」

 出雲は魔法騎士団の本部の建物を見て驚いていた。
 魔法騎士団の本部は長方形で縦長の建物であり、地上5階地下2階となっている。出雲は魔法騎士団の本部に入ると、1階ロビーには多数の人たちが動いている姿が見えた。

「集合時間より早く到着したけど、どこに行けばいいんだろう?」

 出雲は集合時間の1時間前に魔法騎士団の本部に到着をしていた。1階ロビーで周囲を見渡していると、愛理と竜司も魔法騎士団本部に入って来たのが見えた。

「二人もこんなに早く来たんだな!」

 出雲が入り口に立っている愛理と竜司に声をかけると、二人は魔法騎士団本部の職員たちを見て驚いているようであった。 出雲たちが魔法騎士団本部に到着をして数分。3人はどこに行けばいいのか途方に暮れていた。
 出雲が1階ロビーにある受付カウンターで聞こうと提案をすると、愛理が良いわねと同意をする。

「早く行ってくれ。俺はここで待っている」

 竜司が出雲に早く行けと言うと、愛理がそんな言い方ないじゃないのと竜司を怒っていた。出雲は愛理をなだめると言ってくると二人に言う。

「行ってくるから待っててよ!」
「分かったわ」

 愛理が出雲に返事をすると、出雲は受付カウンターに歩いて行く。
 受付カウンターには女性が二人椅子に座っており、出雲は自身から見て左側にいる女性に話しかけた。

「すみません。陸奥景昌さんの生徒の黒羽出雲と申します。今日はここに来るように言われたんですけど」

 出雲が受付カウンターの女性に話しかけると、その女性が生徒さんですかと聞き返してくる。

「そんなお話はお聞きしておりませんが……」
「本当ですか!? 昨日朝の9時に魔法騎士団本部に集合と言われたのですが……」

 出雲が集合してくれと言われたことを伝えると、受付カウンターの女性が聞いてみますと電話でどこかに通話を始めた。

「受付です。陸奥さんの生徒と言う人が来ていますが。いかがしましょう?」

 受付カウンターの女性が電話をしていると、早く来てくださいと突然受付カウンターの女性が怒鳴り声を上げて電話を終えた。
 出雲はその突然の怒鳴り声を聞いて驚いてしまった。

「な、何かあったんですか!? 何か起きたんですか!?」

 出雲が目を見開いて受付カウンターに両手を乗せる。すると、受付カウンターの女性が深いため息をついてしまう。

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